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異世界ポイント生活 ~幼女になって世界を守ります~  作者: グリゴリグリグリ
『これはこれは……ちょっと申し訳ないねぇ……』
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第25話

 双眼鏡を覗くと、特に名前のついていない小さな村の風景が見えます。

 時刻は日が昇ったばかり。それだというのにいくつかの家からは大人達が現れ、それぞれに道具をもって農作業へと向かって行きます。

 住人が全員で百人にも満たない小さなこの村に、百五十ポイント赤ちゃんターゲットが居ます。とてもそうは思えません。

 マイクを殺し、二十ポイントを得てから一週間ほど経ったのでしょうか。

 いくつかポイントで交換して一日休んだ後はずっと村の観察をしていました。

 山間にある村らしく、バレないような場所はいくらでもあります。ワタクシの隣では、コンロに似た魔道具の上でスープが煮込まれています。

 この双眼鏡もキャンプ用品のような魔道具もすべてポイントで交換したものです。

 ふとキャンプをしたくなって交換し、一度使ったっきりしまい込んでいたままでしたが、思わぬところで役に立つものです。

 出来上がったスープをすすりつつ、この数日で得た情報を思い返します。

 あそこの村人達は農業と狩りで日々の糧を稼ぎ、月に一度訪れる行商人が現金獲得の唯一の手段だそうです。

 太陽と共に起き、太陽と共に眠るような生活を送っている長閑な方々です。

 こんな所に神様から世界の脅威と認められる赤ちゃんが産まれたとはとても思えません。

 最近、赤ちゃんが産まれたのは一家庭のみ。両親も優しそうで、そんな二人に育てられた赤ちゃんがどうやったら世界を危ぶませるのでしょうか。

 しかしそんなことを一々気にしていてはこの仕事はできません。

 これまでもどうしてこの人が、なんて人がターゲットになったこともありました。

 それを考えると赤ちゃんがターゲットになるのもそう驚くことはないのかもしれません。それでも、百五十ポイントもの懸賞金――懸けられているのはお金ではないですが――を懸けられているのがこれまでと違うこと。

 百五十ポイントも懸けられているのであれば例え老若男女誰がターゲットだったとしても不安に思うのは間違いないです。

 これ以上観察していても無駄でしょう。

 赤ちゃんが暮らしている家もわかります。まだ産まれたばかりですから自由に出歩くこともないでしょう。

 スープの入っていたカップ。調理していた魔道具。それらを何もない空間にしまい、代わりにいつもの大剣と魔剣ムスニアを引っ張り出します。

 四次元ポケットという、別空間に自由に荷物を出し入れできる便利機能です。

 どこかで聞いたことのある名前ですがこれ以上に便利な物もありません。咄嗟には物を取り出せないものの、物の置き場所に悩まずに済むのはとても助かります。

 ガントレットもはめて準備完了です。

 赤ちゃんを手にかけるのは胸が痛みますが、できる限りは考えないようにしましょう。




 村に降り立ちます。

 ほとんどの村人は畑作業に出たのでしょうか。いくつかの家からは中で作業しているような生活音が聞こえます。

 外では何人かの子供達が遊んでいて、ワタクシの横を走り去って行きます。

 しかしワタクシに気づく様子はありません。


「上々、ですわね」


 これはマイクを倒した時のポイントで交換した隠密です。

 気配を限りなく消せ、こちらから何かアクションをしたり余程のことがないと気づかれることはないという便利な能力です。

 この前、マイクに気づかれてしまった時の反省として交換しました。七ポイントは少しお買い得でしたね。

 ターゲットの居る家に着きました。他の家々と変わらない小ぢんまりとした普通の家です。


「さて、どうしましょうか……」


 いくら隠密があるとは言え、閉まっている扉を開けて中に入るわけにはいきません。

 とりあえず窓から中を窺います。

 小さなベッドに寝かされている赤ちゃん。そしてその傍のテーブルで裁縫をしている母親。赤ちゃんが少しでも妙な仕草をすれば、すぐに作業の手を止めて構ってあげています。

 ほんの僅かな時間見ていただけですが、それでも愛されているのがわかります。

 あの調子であれば赤ちゃんから離れるようなことはないでしょう。無理矢理押し入っても、母親を殺さない限りは赤ちゃんに手を出すこともできなさそうです。

 チャンスがあるとすれば夜でしょうか。

 他に何か策はないものかと考えますが、赤ちゃんの顔を見ていると何だか気が削がれます。


「あ……」


 その時、赤ちゃんと目が合ったような気がしました。

 隠密の効果で誰にも気づかれていないはずなのに、赤ちゃんはこちらをジィっと見つめてきます。不審に思った母親もこちらを見ますが、何もないの確認してまた裁縫へ。

 手を振ってみると、確かにニヘラ、と笑いました。


「……帰りますか」


 このまま待っていてもチャンスは来ないように思います。

 一度山に戻って作戦を練るとしましょうか。


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