出資
焼肉屋 フレイム
今、王都で話題の店だ。この世界では基本的な調味料は揃っているが調理方法がまだ未熟だ。例えばカツはあってもカツ丼はなかったりお茶と米があってもお茶漬けはなかったりする。つまり金を稼ぐチャンスはゴロゴロしている。もちろんこのフレイムの出資者は俺である。
「焼く!肉屋!焼いた肉を出す店ですか?」
「いえ、お客側が焼くらしいわよ。」
「めんどくさいですね!すぐに食べられる方がいいです!」
サクラが乗り気じゃないのを良いことに通り過ぎようとしていたが…
「オーナー!お疲れ様です!」
元気よく挨拶してくれたのはここの店員のウルガスだ。若いがしっかりとした人柄でオーナーとしては嬉しい限りだ。オーナーとしては…
「お、おぉ、今日も繁盛してるな。」
「はい!ばっちりです!」
この会話が決定的だった。
「ジェイドさん!ここのオーナーなんですか!」
「アナタ…本当にいろいろやってるのね。」
「ジェイド!私は知らないぞ!なんで黙ってた!」
冒険者をやっていて、ここのオーナーでもあるなんて知られたらうるさくなるからだ。ツケにしろなんて言われたら叩き出してしまう。
「オーナー席は混雑時でも空けていますよ。」
「ということは!並ばず無料で食べられるということですね!ありがとうございます!」
サクラはもう奢ってもらう気でいる。
「ちょっと!サクラ!」
「いいじゃないか!私は唯一の肉親を失ったばかり!ジェイドの優しさが沁みますね!」
「あ、このスープ美味しそう。」
これはもう入るしかない。これ以上、店前で騒ぎたくないしな。
「四人で…」
「はい!店長!オーナーがお見えになりました!」
俺達はウルガスの案内でオーナー席へ案内された。半個室で周りとは仕切りがある。
「で、どういう食べ物なんですか!焼くんですよね!」
「こちらがメニューです。詳しい説明は…」
「あぁ大丈夫だ。俺がしとくよ。注文が決まったら呼ぶから…」
「はい。あとで店長も顔を出すと思いますので。」
さて、せっかくの焼肉だ。以前に来た時は…そうか…ディアッカと一緒だったな。とりあえずヴァルキリーの面々に説明するか…
「なるほど!自分で焼くのですね!ジェイドお願いします!」
「すぐに諦めるのはどうなのかしら…」
「でもジェイドさんがオーナーならば任せた方がいいのかもしれません。」
「んーじゃあ俺が適当に頼むよ。コメとスープは必須なんだろ?スープはちょっと辛いけど大丈夫か?」
「はい。平気です。」
「いらっしゃいませ。オーナー、そしてヴァルキリーの方々。」
店長のバッカムは元々、冒険者だった。俺に冒険者のイロハを教えてくれた。だが俺の冒険者講習が終わったくらいに怪我をして冒険者を引退することになってしまった。親しかった俺は、バッカムの実家が肉屋をやっていたことも知っていたので即スカウトした。焼肉屋フレイムの開店までは本当に早かった。器材はすぐに作れたし、タレなんかも前世の記憶で比較的すぐに作れた。もちろん常に改良はしているが。
「バッカムさん!え?」
「久しぶりだな。ヴァルキリーのみんな。」
「ジェイドと組んでいたのか!教えてくれればすぐに店に行ったのに!」
「落ち着いたら知らせようと思っていたのだが…連日、盛況でね。ありがたいことに。」
そうなのである。この焼肉屋というシステムは王都民に大ウケした。盛況というが大盛況である。出資した分は倍以上で返ってきたので今はバッカムと折半しているくらいだ。
「冒険者を引退してからの方が稼げてるってのも皮肉なもんだ。」
バッカムは店長になってから結婚して家も買っている。店では酒も提供しているが強面のバッカムがいれば暴れる客もほとんどいない。実に適材適所だった。
「ということはジェイドの奢りで大丈夫ですね!間違いなく!」
「最初からそのつもりだよな。なぁオーナー?」
「仕方ないな。でも俺がオーナーってのは内緒な。」
「わかりました!他言しません。たぶん。」
「そこは言い切ってくれよ。」
「お腹減りました…」
モミジが限界のようだったので俺は注文をした。カルビ、タン、ロースの定食と、ユッケジャンスープ。単品でそれぞれの肉を多めに注文した。




