王様の深夜外出
俺はヴァルキリーの様子を気にしつつ、簡単な依頼をこなしていた。
「ジェイドさーん。食堂へは行ってます?」
「あぁたまには食堂で食べるかな。」
エイミーに言われ、食堂へ行きジーナに日替わりを注文する。小鉢はタマトのサラダだった。24時か。
深夜、俺はギルドの裏手に回りいつも通りに入る。
「お疲れ様です。ジェイドさん。」
「そっちこそ。かなり遅い時間だけど大丈夫なのか?」
「えぇ今夜は仕方ありません。」
「?」
ガチャッと扉が開くとギルマスのフレイヤではなく王様がいた。
「は?」
「久しぶりだな。ジェイドよ!こんな遅い時間にすまない。」
この国であるアーカム王国。そして王のアーカム・ゼノ・クレイドル。今は何代目なのかは忘れたが悪いタイプの王様ではない。お茶目でイケオジではある。ちょっと女好きではあるが俺にデメリットがあるわけではないのでヨシ。
「また抜けてきたんですか?王様が?」
「うむ、簡単に抜け出せた。この国は大丈夫なのかな。まったく…」
王は武闘派である。近衛騎士並みの実力はあるはずだ。つまりゴールドランクくらいのレベルだ。何度も抜け出してはいるが慣れているのだろう。多分、周囲には護衛があるはず。…いるよな?
「悪魔案件ですか?」
「というより今回の件についてだ。」
プラチナランクの死は王にとっても一大事なのだ。近衛騎士以上の戦力が悪魔に殺られるということは攻められたらすぐに王都が陥落する可能性があるということ。
「プラチナランクを公表しようと思っている。」
「悪魔の存在は?」
「これは公表しない。というかできない。意味もないしな。」
それはそうだ。悪魔という存在がいて、めちゃ強いから気をつけてくれと言われても何もできない。
「つまり、ゴールドの上は存在している。という事実を知らしめる必要がある。」
「ディアッカがプラチナランクだったことは?」
「それは公表しない。過去のメンバーについては一切、触れない。」
「過去ということは…」
「現プラチナランクは公表する。嘘だと思われても困るしな。」
「まぁ現ランカーがいいならそれで…」
「ブラックランクはどうする?」
「それは今まで通りで。その方がいざという時もいいでしょうしね。」
ギルドメンバーは実力が全てだ。荒っぽいヤツや法のギリギリを生きているヤツもいる。ブラックランクは悪魔対策であり、メンバー対策でもあるのだ。
「お前はいつまで安宿にいるつもりなのだ?家があるとこちらも連絡が取りやすいのだが…」
「いや〜それはそのうちに…」
「豪邸とまでは言わないがそろそろ…」
「俺のことはいいですよ。とりあえず公表の件はわかりました。浮き足立つ連中もいるでしょうが目指す目的ができて張り切るヤツらもいるでしょうから監視しときますよ。」
「あぁフレイヤとお前だから安心して頼めるのだ。
よろしく頼む。」
それから雑談を少しして王は去った。
「さてフレイヤ的にはどうなの?」
「良い方に転がることを願うしかないだろ?とりあえずプラチナランクの報酬や権限を王族と話してからだけどな。」
「権限かぁ難しいよなぁ…荒くれ者に貴族位をやるわけにもいかんし。」
俺は王都に来て最初に王にコンタクトをとった。評判から深夜に寝室に忍び込んでも大丈夫?なタイプだと思ったからだ。結果としてそれは正解だった。王は聡明で行動力があった。次の日にはフレイヤと王と三人で話し合いの場が設けられた。俺のブラックランクというのはある意味で王直属の機関でもあるのだ。




