ヴァルキリー
目が覚めると午後だった。俺は常宿にしている「白猫亭」の一室で朝を迎えた。いや午後なんだけどな。
白猫亭は宿屋で長期滞在も受け付けている。一ヶ月ごとに精算しなきゃならんがそりゃそうだ。
「おはようございます。ナターシャさん。」
「あれ?アンタまだいたの?」
宿の女主人のナターシャは未亡人だ。旦那は病気で亡くなってシングルマザーとして二人の子供を育てている。
「まだいたのって…酷くない?」
「だって今朝はギルドで大騒ぎがあったみたいだからてっきりさ…」
「あぁ⋯そうなのか」
大騒ぎというのはアレだろう。俺も行かなくては。
「よし。俺も行ってくるよ。」
「はいよ!⋯アンタ、独り身だけど気をつけなさいよ。必ず誰かが悲しむんだから。」
ナターシャは詳細を知っているようだった。
「そうだな。俺が死んでも何も残らないしな。」
「そういうことじゃなく!気をつけて仕事しなさいってこと!」
「わかってるよ。ありがとう。」
俺はギルドへ向かった。途中でコーヒーでもと思ったがそんな雰囲気ではないだろうから止めておいた。
「ディアッカさんが⋯」
「ゴールドランクが殺られるって…」
「嘘だよなぁ…ディアッカ!」
次々とそんな声が聞こえてくる。俺はエイミーに挨拶をして人を探した。見回すと四人がけのテーブルに二人がいた。
「よぅカエデ、モミジ」
俺は二人に声をかけた。女だけのゴールドランクパーティであるヴァルキリーだ。確か全員が17歳のかなり若いパーティだが実力は本物である。
「おはよう」
「おはようございます。ジェイドさん。」
カエデは騎士風の装備をした金髪の女剣士で、モミジは黒髪の忍者っぽいヤツだ。
「おはよう。この度はなんつーか…」
「いいのよ。普段通りで」
そうは言うがやはり暗い。パーティメンバーの唯一の肉親が亡くなったのだから当然だ。そしてディアッカは二人にとっても兄のような存在だった。
「サクラはまだ…?」
「えぇ遺体と対面しているわ」
「あんなに動揺しているサクラさんは初めてでした…私達もですが…」
俺達は二年くらいの付き合いでヴァルキリー結成前からの知り合いだ。ディアッカと俺が友人でそこから紹介された。リーダーでディアッカの妹のサクラはなんつーか変わっている。前髪がパッツンで和服っぽい装備で刀を装備している。そしてこれは三人ともだが美人である。それぞれにタイプは違うが間違いなく美人の分類になる。特にサクラは残念美人という言葉が似合う女の子だ。
「ディアッカは良い友人だった。本当に。」
俺はテーブルに酒とコップを用意した。この国では16歳から成人である。酒も大丈夫だ。
「サクラがきたら献杯しよう。」
「そうで…」
ガチャッ!勢いよくドアが開いた。サクラの顔が見える。表情はよくわからない。
「お?ジェイド!やっと来ましたね。こういう時は誰よりも早く来て私を慰めるのがアナタの仕事でしょう!まったく!」
サクラはサクラだ。




