通り名
「プラチナランクが失敗ね⋯つまり、もう失敗はできないと⋯」
「あぁ⋯そうなるな」
プラチナランクは超一流の冒険者である。しかし、現状としてプラチナランクパーティは存在していない。つまりプラチナ以上のランクは規格外の力を持ったソロ冒険者のためにあるランクなのだ。⋯性格的にもパーティは難しいだろうしな。
「で、詳細は?」
「こちらです。ジェイドさん。」
普段以上の真剣な顔で書類を渡してくれるエイミー。
「エイミーちゃん、時間外手当はちゃんと貰ってる?」
「ご心配なく、多めに貰っていますよ。」
エイミーが少しだけ笑ってくれた。ふむ⋯なかなか深刻な事態になっているらしい。どれどれ⋯
「なるほど…これは悪魔絡みか…」
「そうだ。ヤツらの仕業だ。」
「で、失敗したプラチナランクのヤツは?」
「帰還はしたが、もう助からないだろう…」
この世界には人間の他に亜人、魔物、更に悪魔がいる。悪魔の存在は公にはなっていないがプラチナランク以上の冒険者、各ギルドマスターとその関係者、王族はその存在を認知している。悪魔は忌むべき存在、天災であるというのはどの国でも一致している。ヤツらは純粋に楽しむためだけに生きているような存在だ。人間の理屈も法もまるで関係ない。
もちろん男も女も年齢も関係なく玩具のように扱う。プラチナランク以上の依頼のほとんどは悪魔関係なのだ。
「貴重なプラチナランクがまた一人いなくなったのか…保障は手厚くしてやってくれよ。帰還したのはそのためだろう。」
プラチナランク以上には保障がある。だがそれも最後が確認できたらという条件付きなのだ。冷たいようだが、それだけこの世界は悪意に満ちているということなのかもしれない。
「あぁ残された家族にはちゃんと保障がある。そこは心配しなくていい。そっちの詳細も話そうか?」
「いや、知り合いだと顔に出るかもしれないから止めておく。」
普段は軽口を叩くギルドの連中だが、突然いなくなるのはやはり気持ちが沈む。いっそ詳細は知らない方がいい。
「そうか。では依頼の方は頼むぞ。」
「あぁ⋯仇討ちとまではいかないが俺がやり遂げるよ。」
「ご武運を。」
エイミーが心配そうな顔で声をかけてくれた。
「大丈夫だよ。俺の通り名を知ってるだろ。」
「はい。よろしくお願いします。「ザ・ワン」」
ギルドを出ると俺は依頼の場所へ向かった。ブラックランクの依頼は常に即実行なのである。




