神の獣
「おい!人間!我だけでは悪魔は倒せん。協力しろ!」
「お前っ!喋れるのか!」
その白い狼は明らかに俺の方を向いていた。喋る獣…そんなのいるのか?
「うぜぇなぁ!どっちもぶっ殺してやんぜ!」
「来るぞ!立て!」
「うるせーな!わかってるよ!」
敵ではないならありがたい。狼がスピードで悪魔を翻弄する。これならいけそうだ。
「黒鎖」
「がっっ!これはっ!」
「さっきのお返しだよ!」
「こちらもお返しだ。鳴雷!」
轟音が鳴り響く。さすがの悪魔でもダメージが入るようだ。
「ぐがぁぁぁ!貴様っっ!」
「まだだ!グォォォォ!」
狼の上に大きな槍のような魔力が形成される。そして雷の魔力を帯びていく。
「雷神槍!」
その瞬間、悪魔に穴が空いていた。
「がっっ!」
「今だ!殺れ!」
俺は魔力で鎚を形成する。ヤツが再生する前に魔力を叩き込む。
「くらえ!闇破鎚!」
「ぐぁぁぁあ!させるかぁぁぁあ!」
悪魔は鎚を受け止める。
「ぐぅぅぅう!潰れろっ!」
「人間ごときがぁぁあ!」
「鳴雷!」
「ごっっ!」
再び轟音が鳴り響く。俺は雷と共に鎚を押し込んだ。魔力が霧散する。どうやら終わったようだ。
白い狼は悪魔の消滅を確認すると座り込んでいる俺の元へ来た。
「我はフェンリル。神獣である。」
自己紹介をしてくれた。礼儀正しいヤツなのかもしれない。
「はじめまして。俺はジェイドだ。」
「ふむ、理から外れし者か。」
「なに?もしかしてわかるのか!」
「当たり前だ。我は神獣だぞ。」
「そ、そうか。とりあえず助かったよ。俺一人ではヤバかったかもしれない。」
「それはお互い様だ。悪魔はこの世界の淀みから生まれ、殺戮本能のまま全てを殺してしまう。それは我にとっても望むことではないのだ。」
「悪魔は天災のようなモノという認識でいいのか?」
「あぁ故に基本的には生まれたばかりのモノが多い。」
「基本的にはって?」
「中には完全に自己を確立して長生きしているモノがいる。」
「なにか違うのか?」
「悪魔は淀みである。滅ぼさねばバランスが崩れ、世界が崩壊する。知らぬのか?」
「知らねーよ!襲って来るから倒したのが最初だったからな。」
「やはり人間は悪魔についての知識はないのか。」
「あぁ俺がこちらで生まれて、襲われるまで悪魔って言葉は聞かなかったな。」
「今の人間では悪魔に出会った時点で終わりだからな。」
まさに天災だ。ディアッカは死にかけながらそれでもギルドに戻ったのだ。知らせるために。
「ジェイドとか言ったな、貴様はこれからどうするのだ?」
「どうするもなにも…俺はのんびり暮らしたい。でも襲って来るなら戦うしかないんだろ?」
「そうだな。では我とも再び、出会うかもしれぬ。知らせておけ、敵ではないと。」
「あぁわかったよ。名前ってあるのか?」
「我が名はセスだ。」
「セスか、ありがとな。また会おう。」
「さらばだ。」
白い狼、フェンリルのセスは森へ帰って行った。




