そうだ バーに行こう
時は夕刻、俺はフィリスと待ち合わせをしている。フィリスの姉が経営しているバーに連れて行ってもらうためだ。フィリスとはほとんど話したことはないが…大丈夫!なんとかなるだろう。
「お待たせしました。ジェイドさん。」
「お、今夜はよろしくな。」
フィリスはラフな格好をしているが、美人でスタイルがいいので凄くお洒落に見える。
「フィリスはうちの店のお菓子に惚れ込んだんだろ?そんなに美味かった?」
「はい。味もですが…なんと言えばいいか…洗練された技術を感じました。」
「ほう!嬉しいこと言ってくれるじゃん。」
「まさか冒険者の方がオーナーだとは思いませんでした。片手間にやってあの味を作り出せるなんて…」
「おいおい…片手間でもないんだぜ。シャナとは何度、喧嘩したか…」
「失礼しました。店長が言っていました。私は器用だから上手にお菓子を作れるけど、アイディアを出すことは私にはできないと。」
「俺は逆に上手くお菓子を作ることができない。良いコンビだろ?」
なんて話をしていると店前に着いた。「ウインド」という店名らしい。フィリスが先に立ってドアを開ける。チリンと鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ。あら?フィリス。」
「お邪魔します。姉さん。こちらはお世話になっている店のオーナー。」
「ジェイドと申します。よろしくお願いします。」
俺達は挨拶を交わすとカウンター席に着いた。うむ、いわゆるオーセンティックバーだ。渋くて良い。
「ご注文は?」
こっちのバーってどういう名前のカクテルがあるんだろうか?というかカクテルあるよな…?
「お任せでもいいですか?喉が渇いているのでさっぱりしたのがいいんですが。」
「かしこまりました。モヒートなどいかがでしょうか?」
「え!モヒートあるんですか!お願いします!」
「私も同じで。」
モヒートはミントを使ったカクテルだ。夏といえばモヒートと前世で友人が言っていた。
俺はフィリスの姉の手元を見ていた。熟練のバーテンダーの動きは美しい。つい目で追ってしまう。ん…?
「お待たせしました。モヒートです。」
「ありがとうございます。」
俺は一口飲んだ。ミントの爽快感と炭酸の刺激がたまらない。つい飲み過ぎてしまう。
「私の自己紹介がまだでしたね。店長のレイナです。」
レイナはフィリスの姉らしいが似ていない。いや、雰囲気は似ているのか?レイナには華がある、そんな感じだ。もちろんフィリスも美人だが対極的というか…
「私達、似てないでしょう?」
「大丈夫。よく言われますから。」
「似てはいないがどちらも美人なのは間違いないな。そしてバーテンダーとしての腕も良いみたいだ。」
「あら、ありがとうございます。」
俺はレイナのトークとカクテルにすっかり酔ってしまった。この店は危険だ。連れてくる人間は選ぼう。
「次は一人で来ても大丈夫かな?」
「えぇもちろん。フィリスのことよろしくお願いします。無愛想ですが良い子なんです。」
「姉さん止めて。」
「ははは。じゃあまた来ますね。」
「ありがとうございました。」
俺達は扉を閉めると帰路についた。家まで送ろうとしたが丁重にお断りされてしまった。
「心配しなくても大丈夫ですよ。」
「そっか!今日はありがとな!じゃあまた。」
俺はレイナの手元を思い出していた。彼女は魔法を使ってカクテルを作っていた。繊細な魔力操作だった。聞かなかったがレイナはおそらく、一流の魔法使いだ。




