第3話【涙の正体】涙は、どの状態で生まれるのか
同じ人間でも、いつも同じ理由で泣いているわけではない。
あるときは登場人物に強く共感して泣く。
あるときは構造に気づいた瞬間に泣く。
またあるときは、理由もわからないまま涙が出る。
この違いは性格の違いだろうか。
もちろん、多少の傾向はあるかもしれない。
感情移入しやすい人もいれば、構造を捉えるのが得意な人もいる。
けれど、それだけでは説明しきれない感覚が残る。
なぜなら、同じ人でもそのときによってまったく違う泣き方をするから。
ここで、ひとつの仮説が浮かぶ。
涙の種類を決めているのは「その人のタイプ」だけではなく、そのときの「状態」なのではないか。
これまでのシリーズで定義した「読書モード」を使って言い換えると――
モードが「3」に近い状態(物語を軽やかに楽しみたい状態)
共感や解放の涙が出やすい。
モードが「5〜7」に近い状態(構造を読み解いたり、内面に深く入り込む状態)では、気づきや余韻の涙が出やすい。
ただし、ここで注意が必要。
同じ「3」の状態でも、ある人は『コンビニ人間』で泣けても、『重力ピエロ』では泣けないかもしれない。
それは状態だけの問題ではない。
その人が持つ「性質」——どのようなトリガーに弱いか——が関係しているのではないか。




