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Ⅱ-5

「文化2ってのは、三年の時だよ。こっちはほとんどスナップが多いね」

「大学時代のだってあるよ」

 二人はすっかり写真を見るのに熱中していた。

「高校から大学にかけての学生時代の写真が多いわよね。それもあたしが持ってないようなのがかなりある。どこから手に入れたんだろう」

「写真の説明はないのかな」

 康子はまた元の画面に戻ってみた。

「この作品集ってなんだろう。やっぱり1、2とに別れてるけど」

 康子が1のボタンをクリックすると、やはり写真が並んで出てきた。

「なにこれ? あたしが手芸部で作った物だ! これは中学のからそろってるけどなんで?」

 その写真は佐香那が作った、小物入れの袋、クロスステッチのテーブルクロス、フランス刺繍のクッション…などで作品の下に「1-1 倉木佐香那」などと名前の書いた札がついている。

「これは外部に公開していないよね。部活のあった家庭科室で学期ごとにちょこっとやったのよね、たしか…」

「そうそう…。栗原先生が確か写真を撮ってアルバムみたいに作ってくれたね、そういえば」

「だけどどういう関係?」

「こっちも見てみるよ」

 と、康子は「作品集2」をクリックしてみた。これは原稿用紙や文集のページを写真で撮ったものだった。

「やだあ! こんなの…。あたし捨てたのに」

「これ、学年の最後にその学年全員の作文を載せたやつだ! 一学年で自分で一番いいと思うやつ、っていうのだったよね。サカナはいいじゃない、いつも作文もうまかったから。あたしなんか地獄だったよ」

「図書室で出していた『読書の手引き』に出したのもある。印刷物になったようなのはそろってるみたい」

「これ、学年研究もあるよ!」

 それは中学三年生の夏休み、クラスでいくつかの班に分かれてテーマを決めて発表したもので、佐香那のグループでは三つの駅を決めてその周辺の地図を作った。夏休みにグループ数人集まって街に繰り出し、自分たちの好きな店の写真を撮り、コメントをつけるというものだった。

「代官山、渋谷、自由が丘…」

「『私達、女の子のあこがれの街を探検しました』だって…。そう。佐香那、自由が丘が好きだったわね昔から…」

 佐香那と康子は顔を見合わせてしばらく言葉を失った。

 康子はまた違うアイコンを探し、『コバンザメ』というアイコンをクリックしてみた。

「これ怪しいよ、出てきたタイトルが『思い出』だもん」

 それは、文書ファイルがまとまったホルダーで、日記になっているようだった。ボタンのタイトルも年と日付になっている。

「一番古いの日付は一九八四年十月だよ」

 と、康子は指折り、数えてみた。

「やっぱり高二か…。その頃が多いってのは…」

 文書の画面が開き、字が詰まっていた。それを、康子が声に出して読んだ。

「『日記より』だって。『彼女の名前が判明。倉木佐香那だって!なんともかわいい名前じゃあありませんか。本人はもっとかわいいし。電車で見かけるだけ、それも総武線で四駅分だけ。口もきけないし、話すことなんか一生ないかもしれない。でも、あんな子とつきあえたらいいだろうな』」

 二人は絶句して、また見つめあった。

「…な、なんで?」

「パソコンって…、あたしは、大学で初めて使ったのよ。その前からあったけど…、今ならともかく、その時代に高校生が使うとは思えないよね。家庭にこんなに普及するなんて想像だってできなかったころよ!」

「日記よりっていうんだから、日記から入力し直したってことなのかしら…」

「それにしても…、かなりマメだし…。これって…」

 と、言ってから、康子はごくりと唾を飲み込んで、佐香那の肩に右手を置いた。

「ストーカー?」

 二人で同時に同じ単語に行き当たった。二人は声を潜めていたが、二人の声が重なって、コンクリートの壁だからか…妙な反響を残した。

「ね、サカナ、これ、あんた一人でゆっくり見てごらん。あたし、見ない方がいいかもしれないから」

「えー! やだよ!」

 佐香那は、また泣き顔になっていた。

「簡単な操作だけ教えるわよ。要するに、このマーク、アイコンっていうんだけど、これをクリックすればいいのよ。それくらいわかるよね。あんただって働いてたんだもん。それに、その先は全部メニューでボタンみたいになってるし、色もついてるし…、インターネットくらい少しはやったことあるでしょ? あの要領よ。美邦君、さすがオタクだけあってわかりやすくなってるから、あんたでも簡単に操作できるわね。あとでサカナのパソコンで使えるように、コピーしてあげるね」

 佐香那は顔を歪めて、康子に両手を合わせた。

「ね、今日、泊まって行ってね」

「ぐっとくるわね」

「お願い! あたし、やっぱり一人で見るのいやだもん」

「あーあ、カレシでもいれば断るのに。この華のゴールデンウィークに断るほどの理由もない。悲しいようなうれしいような」

「特上寿司取るから! たのむ! つきあって!」

 それから、二人は美邦の残したファイルと写真を次々と確かめていった。

「ねえ、サカナもあたしも持ってない写真もあるわけだから、だれか他の人からもらったってことよね。そういうこと、書いてないかなー」

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