祟り神の乱行 4
狭い境内を探しまわる裕貴にも気が回らないほど、推理に没頭していた晴彦は、張りつめた空気に微かに響く弦の音を聞いた。
「これって、持衰さんの…」
早川家と繋がった電話から流れてきた音と同質のもの。あのときは警鐘のような甲高さを感じたが、いまは心地良い調べとなって耳をくすぐる。
裕貴が走って戻ってきた。
「なんか聞こえなかった?」
若干、顔が青ざめている。
「東海林たちもいないし、妙に寒いし。ここ、気味悪いよな…」
怯えた目で辺りを見まわす彼に、少年は笑顔で、
「気にしなくていいですよ。なにも悪いことなんかしてないし」
と一蹴した。祟られる覚えはない。だったら怖がる必要もない。
ビー…ン。ビー………ン。
断続的に続く音色に、耳を澄ませる。メロディのない、単調な音域は聞きおぼえがあった。けれど、思いだせない。思い出す必要があるほど重要なシーンではなかった気がする。
視線を巡らせると、奇抜に感じるほど鮮やかな朱を纏っていた鳥居の群れが、その彩度を落としてきた。予想した年月をさらに遡る落ちついた色合いに塗りかえられる。
蒼い空気に陽の赤が差し、凍えた大気に熱が灯る。
空間から染みだすように、2体の人影が現れた。すぐ目の前に。
崇志の体に身を乗りあげ、狐のように口角を吊りあげた若い女性が、耳を塞ぎながら喚いた。
「何してんのよ、あんたっ! この音、止めなさいよっ!」
その視線が、まっすぐ自分を射ているのを見て、少年は戸惑い、
「オレ? 何かした?」
と、とっさに言い訳にした。




