終.世界一ふざけたプロポーズ
ふざけたプロポーズって言ってるけど……
そもそもこれ書いてる作者にまともなプロポーズシーンを期待する方がアレであるヾ(:3ノシヾ)ノシAIサンノブナンナプロポーズハゼンブキャッカシテルモンネェ
時を戻して、ナロコサーズ王国が革命を起こす前の研究所の食堂。
そこでは、アーロンがおやつタイムとして同僚と共にスターゲイジーパイをほおばってるミラノールに想いの胸を伝えようとしていた。
「俺が差し上げられるのはこの指輪と地味な研究データぐらいしかないが、それでよければ」
アーロンは研究データの資料と指輪……シンプル極まりない質素な指輪を差し出し、恥ずかしながらも真剣な表情でミラノールを見つめていた。皆がミラノールの反応を伺ってる中、彼女はとりあえずフォークに刺している食べかけのパイ……イワシの頭が突き出てるそれにかじりつく。
バリバリ、ゴリ……
食堂に頭や骨を噛み砕く音が響き、やがてごっくんと飲み込む。その後はミルクと蜂蜜たっぷりのコーヒーを飲み干して一息つかせた事でようやく状況の整理が付いたようだ。
「ふふ、世の淑女が聞けば『空気嫁このボケナス!!』なんでしょうけど……私にとっては、これ以上にないほどの素晴らしいプロポーズね」
“いや、ボケナス程度で済むわけないだろ!!っていうか、これのどこにプロポーズの要素あるんだ!!”
仮に『世の淑女』がここにいたら、そうツッコミを入れたかもしれない。しかし、この研究所は世間一般の常識が欠如した研究者ばかりで『世の淑女』など一人もいない。誰もがアーロンの言葉をプロポーズとして受け止めていたのだ。
ミラノールはアーロンの前に一歩進み出て、自らの左手を差し出した。アーロンが震える手で指輪を彼女の指にはめ込んだその瞬間──
パチパチパチパチ!!
成り行きを見守っていたクロード所長と同僚の研究者達が一斉に拍手した。
「おめでとう! ついにやったな、アーロン!」
「ミラノール博士も、幸せにな!」
「善は急げだ! 婚約期間なんて飛ばして、すぐに結婚式を挙げよう!」
研究所という特殊な環境では、思い立ったら吉日なのである。実験も、発見も、人生の節目すらも、すべては「今」から始まる。結婚式の準備は即座に勧められた。
二人の結婚式は出席者が研究所の同僚たちだけという質素だが温かなものだった。皆とは共に同じ苦労を……全員の心を一つにして特効薬の開発に携わった事もあって、大勢の家族に囲まれたかのような、アットホームな結婚式となった。
結婚式の後、同僚達は各国の外交官や新聞記者に二人の結婚を知らせた。当人たちは定期報告ついでの情報だったが、二人は世界的な有名人であったため、話を聞いた新聞記者はすぐに二人の電撃結婚を扱った号外を報じた。
これによって研究所には報道陣が大勢詰めかけ、二人の結婚祝いと称した贈り物も続々と届けられたせいで、二人はこれらの対処に大わらわとなったそうだ。
「全く、これでは肝心の研究が出来ないではないか」
「まぁまぁ、これは私達の門出を祝っての贈り物なのだし、それを邪険にするのは次期所長としてまずいでしょう」
「それもそうだな。外交的配慮として、甘んじて受け入れざるを得ないか」
憤慨するアーロンを宥めるミラノール。それはまさに夫婦のやり取りであり、同僚達もそんな二人を茶化しつつも贈り物の仕分けを手伝うのであった。もっとも……
「この王室からの銀食器、溶解して電極にしたら最高の純度だと思います」
「こちらの絹織物は、細胞培養のフィルターとして使えませんか?」
贈り物が実験素材や機材として使われるとは、送り主も想像はしてなかったであろう。
もちろんそれらの案は対外的な事もあって即座に却下。純粋な研究資材は実験室へ、そうでないものは研究所の共有スペースの装飾や、地域の慈善団体へと回される事となった。
こうして二人は世界中から祝福されたわけだが、一部の愚か者。ミラノールとの婚約を画策していた愚か者が結婚を認めないっと騒ぎ立てていた。
もっとも、そうした者達を野放しにすれば、ナロコサーズ王国の二の舞だ。それをしっかり理解してる各国の上層部は、愚か者を迅速に処分したらしい。
もちろん、これらの政治的駆け引きや判断、さらにいえば祖国で起きた革命に至った経緯はミラノールの知るところではなかった。かつてはナコロサーズ王国の王太子の婚約者として政務に関わっていた彼女の今の関心は、研究所での研究の日々に向けられているのである。
そんなある朝、アーロンが朝の食堂で提案してきた。
「次は神経再生の研究をしてみないか?報告によれば、そこでは……」
「それは面白い研究テーマね。でも今日は新人の出迎えと案内があるでしょう。それは明日の楽しみにとっておきましょう」
その言葉にアーロンは唖然としていた。どうやら、完全に忘れていたらしい。
(ふふ。アーロンは普段こそ周囲に気を配れるけど、研究にのめり込ませたら周りが見えなくなるタイプのようね。なら、彼が所長になった際の私の主な仕事は、秘書としてのスケジュール管理ってとこかしら……)
「……まさか、ここに来てナコロサーズ王国での政務に関わってきた経験が生きるとはね」
今は遠い過去のように感じるナコロサーズ王国での王城の日々と、新しい国のトップとして政務に励んでいる両親を思い出しながらミラノールはふと周囲を見渡す。
研究室内は、相変わらずどこかしらで各理論が衝突しあい、食事も睡眠も忘れて地味な研究に明け暮れる者に溢れていた。
他者からみれば、ここが世界の権威とは思えないだろう。
しかし、彼等の討論や地味なデータ採取が世界に様々な恩恵を与えているのは確定的に明らかなのだ。
こうして、研究所ではいつも通りの混沌とした日常を送りながらも、新たな登場人物を迎えた新たな物語を紡ぎ始めるのであった。
とりあえず終わり?
本編は終わりで次回からちょっとした裏話入りますw




