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世界を救った淑女と王国を滅ぼした王太子  作者: やみなべ


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7/12

7.愚者達のふさわしい最期

しつこい汚れは根こそぎ除去しなければねぇ……

 宰相が密書を届けさせてから幾日が過ぎ、王都の情勢が急速に変化した。


 まず動いたのは商人たちだった。なんだかんだ言いつつも続けていた王家とその中枢を牛耳る上位貴族との取引を次々と打ち切り、代わりに中枢から遠く離れた辺境伯や下位の弱小貴族との取引を重視し始めたのだ。

 商人たちに続いて、一般市民の移動も活発化した。最初は職を求める職人や商人の家族が王都を離れ始め、その動きは一般市民にも広がった。彼らは地方に移住し、新たな生活の基盤を築き始めたのだ。最初の内はそれらの動きを裏切りと憤慨するだけだった王や王宮貴族たちも、一ヵ月も経つと事態の深刻さに気づかざるを得なくなった。


 王都の活気は目に見えて失われたのだ。かつて賑わった表通りには人影がまばらになり、店舗の営業停止が相次いだ。市場では商品が不足し、価格は暴騰。空き家が増えていくにつれ、街には不気味な静けさが広がった。

 城の中でも人員が減少し、もともと滞りがちだった業務はさらに遅滞をきたした。


「なぜ誰もいないのだ!召使いは!兵士は!」


 王の怒声はもはや空虚に響くだけだった。側近たちは互いに顔を見合わせ、頷き合った。彼らはようやく、自分たちがどれだけ民衆から見放されているかを理解し始めたのだ。


 その夜、側近達も逃げ出し、王宮はいよいよ人が居なくなった。


 そして、消えた人材と入れ替わるようにして舞い込んできた情報が王を驚愕させた。



 三ヶ国同盟医療研究所との和解が一向に進まない王家に対し、地方の民衆と下級貴族たちが革命を起こしたというのだ。


「革命だと!?そんなものすぐに蹴散らせ!!」


 王は最後の威厳を振りかざして鎮圧を命じた。彼はまだ、自分が王国の正当な支配者であり、民衆は命令に従うものだと思い込んでいた。

 だが、革命軍は鎮圧されるどころか、鎮圧のために送り込んだ国軍を吸収してさらに拡大。その勢いのまま王都を包囲するに至ったのである。地方から集まった農民や職人、王家を見限った元兵士たち――彼らは結束し、一つの大きな力となって王都に迫ってきたのだ。


「迎撃だ!とにかく迎撃せよ!!」


 王は迎撃を命じるが、命令に従う兵士はほとんどいなかった。城に残っていた兵士たちの大半は、すでに王家を見限っており、籠城どころか自ら門を開けて革命軍を招き入れたのである。


 城内に攻め込まれてようやくこの事実を知った国王は一人で城からの脱出を図ったが、その動きは宰相の密告によって革命軍に筒抜け。出口で待ち構えていた包囲陣の前にしてあっさりと捕らえられたのである。


 捕らえられた王は、牢獄に入れられていた元王太子ルドヴィックとその婚約者セリーヌと共に、毒杯を授けられることとなった。


 毒杯を前にして青ざめる元王と元王太子だったが、セリーヌは冷静に毒杯を手に持ち、静かに告げた。


「お父様……先に地獄へ行ってまいります」


 遺言を残した後、ためらうことなく一気に飲み干した。

 苦悶の表情が一瞬だけ浮かぶも、すぐに穏やかな顔つきに戻った。彼女は静かに床に倒れ、そのまま眠るようにして息を引き取った。

 彼女はミラノールに冤罪をかけて婚約者の座と功績をかすめ取った盗人ではあったが、その最期は高貴貴族としての尊厳が感じられるものでもあった。




挿絵(By みてみん)


 処刑に立ち会った革命軍の者たちは、晒し者とされないよう白いシーツに包まれてから引き上げられていく彼女の遺体に、敬意を示しながら見送った。


 そんなセリーヌとは対照的に、元王と元王太子の二人は見苦しいものだった。


「お前だ!お前が全てを台無しにした!」


 元王は宰相を指さして罵った。全ての責任を他人に転嫁しようとするその態度は、これまでの統治姿勢そのものだった。


「セリーヌのせいだ!あの女がおかしくしたんだ!」


 ルドヴィックは狂ったように叫んだ。彼もまた、自分がミラノールの研究成果を横取りしたこと、無実の罪を着せた事には一切触れず、全てを亡くなった婚約者のせいにした。


 二人は最後の最後まで責任を転嫁し続け、毒杯を無理やり口に含ませても吐き出す始末。セリーヌとは真逆ともいえる醜態に、立ち会っていた者たちは呆れ顔だった。


「処刑は中止にする!!彼らに尊厳ある死を与える必要はない!!」


 宰相は淡々とした口調で毒杯での処刑の取りやめを宣言し、二人は牢獄に戻された。彼らは助かった命にひとまず安堵した……が、それは間違いだった。


 それ以降、二人の食事には毒杯の毒を少しずつ混ぜ込まれるようになった。日に日に衰弱していく身体。徐々に強まる苦しみ。ようやく毒を混ぜられている事実に気付くも、それで解毒剤が与えられるような事はない。


牢獄の暗い部屋で、二人は互いを呪いながら苦しみ続けた。


「お前のせいだ!お前が凡庸な息子だから、王国はこんなことになった!」


「違う!父上が無能だったからだ!もっと早く革命の芽を摘んでおくべきだった!」


 元王は息子を、ルドヴィックは父を罵り合い、最後まで自己反省の一片さえ見せなかった。彼らは自分たちの過ち――民衆を軽視し、有能な人材を冷遇し、私利私欲に走ったこと――には一切触れようとしなかった。


 二人が亡くなったのはそれから一週間後。死因は毒によるものか、それとも餓死によるものか……誰も正確には知らなかった。死体は解剖されることなく燃やされたので、真実は永遠に闇に葬られた。


 わかる事はただ一つ、あの時素直に毒杯を飲んだ方が、苦しみが一瞬だった分まだマシな死に方だったという事であろう。




 こうして国王と元王太子の死によって王家の血筋は途絶え、ナロコサーズ王国は歴史から消滅した。


 革命の成功と娘の死を見届けた宰相は、その翌日に自室で息絶えているのが発見された。傍らには遺書が残されており、そこには自身の行動と決断の遅さが事態の悪化を招いた事の詫びや、娘を革命の犠牲にしてしまった罪の清算。そして、国の今後を伯爵に託す旨が記されていた。


 ミラノールの両親もまた、私怨で王国を、何の罪もない国民を苦しめた罪を清算するため、爵位と全財産を新国家へ寄贈し、片田舎で静かに暮らそうと考えていた。しかし、革命に関わった主要な者たちは隠居を認めず、宰相の遺言通りに伯爵が新しい国のトップに就任するよう懇願した。悩んだ末、伯爵は「これも罪滅ぼしの形の一つ」と就任を承諾。


 滅びたナコロサーズ王国から新たに誕生したのは、議会制民主国家『ヴァイスハイト連邦』。その国名は、革命軍の旗頭であり、初代大統領に就任することになるミラノールの父、元ヴァイスハイト伯爵にちなむものだった。



 伯爵が大統領として就任した際の演説でこう語ったそうだ。


「ミラノールが……私の娘が、類まれなる才を持ちながらも冷遇され、地味な研究や検証の末に確立させた理論を何の苦労もせずに成果だけを横取りした王太子達を……それを、当然のように許す王国の在り方を、私は一切認めない。よって、私はここで誓おう!!

 この新たな国から、二度と娘のような者を生み出させない。才能と努力が報われる場所に変えると誓わせてもらおう!!」


 この演説は、王政時代の不正と不公正を明確に否定するものだった。同時に、新しい国家が目指すべき方向性を示す宣言でもあった。



 伯爵の就任演説により、三ヶ国同盟医療研究所は支援停止を解除した。研究所は新国家との協力関係を正式に宣言し、医療技術や教育制度の支援を再開。


 民衆たちも変化した。研究者たちの地味な努力を嘲笑う事なく、感謝の気持ちを込めながらその恩恵を預かるようになった。王政時代には「変わり者」や「役立たず」と見られがちだった学者や研究者たちが、新国家では尊敬される存在へと変わっていった。


 また、大統領になった元伯爵は演説通り、身分に関係なく優秀な人材が報われるシステムの構築に全力を注いだ。

 ただし、長年の悪しき伝統を覆すのは容易ではなかったらしく、システムの構築は伯爵の代では完成しなかった。しかし、初代の意思を受け継いだ二代目の手によって、ようやく形になったそうだ。

一回で除去できないなら、複数回に分けて除去すればいい。


って、フロなんとかの将軍が言ってた気がする?

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最初に始まったのが、「ドーナツ化現象」。みんな、居なくなっちゃいました。♪ 次に地方からの革命軍の進軍。「オラ、もう我慢できねえだ!」「オラも我慢できねえだ!」(大分古いゲームのCMです♪タイトル「…
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