23)目星
涙目の鬼壱さんやマキリさんが駆けてきて、抱きつく。
「道蓮君、お兄様、良かったね!」
「どーれん! トージロ! おかえりだぞ!」
飛び跳ねるマキリさんと、涙ぐむ鬼壱さんに囲まれ、私もまた泣きそうになった。
その瞬間、教官の雷鳴の如き声が轟いた。
「ヲ組! 任務御苦労!」
号令に全員がつい姿勢を正す。
教官はそれを見て、生真面目な表情で告げた。
「この現場は陰陽寮の管轄に置かれる! お前達は速やかに帰還せよ!」
その言葉に全員が返事をし、そのまま寮へ向かうため、夜道を早足で歩き出した。
夜の皇都の明かりを見ながら、私は思案する。
(佐助さん達を呼びよせたのは、間違いなく狂火様だ。でも、一体誰が私と道蓮様の手紙を届かないようにしていたのだろう?)
それだけがわからなかった。
道蓮様はしばらく黙っていたが、気づけば私の隣に並んでいた。
「燈次郎、ありがとう」
「えっ」
「お前が居てくれたから、俺は灯子と話す事が出来た。お前は俺の恩人だ」
「そんな……そんな事、ないよ」
私は道蓮様に嘘をついている。
正体を明かさず、『灯子』が死んだことにしてしまった。
その判断はもしかしたら、道蓮様を余計に苦しめるものだったのかもしれない。
責められる事はあっても、感謝される事は何もしていない。
そう考えていると、彼は凜とした声で告げた。
「俺はお前の事をほとんど知らない。でも、お前が真心をもって他者と接しているのは、見ていてわかる。信用できる人間だとも思っている」
「……」
「だから、お前がもし、誰かの助けが必要な程に困窮した時は、今度は俺がお前に恩を返す。そう決めた。灯子も、そうしろと言ってくれるはずだ」
「道蓮さん……」
見つめると、道蓮様は、ほんの一瞬だけ迷うような目で私を見つめた。
そして、ぼそぼそと呟く。
「燈次郎……、お前の中に、もう灯子は居ないのだな?」
「……いないよ」
「そう、か……」
道蓮様は切なげに答える。
「もう、いないんだな……」
しんみりとする道蓮様に今まで黙っていた御霊府君が私の口から暴言を吐いた。
『フン! 神妙なナリをしておるが、所詮、花街に通っていた男じゃぞ!』
それを聞いた道蓮様がカッとなって反論しだした。
道蓮様は、私が生きているとするならば、自分に連絡が取れない状況にあるのではと考えたらしい。
だとすれば、花街に売られている可能性もある、と懸命に探してくれていたのだとか。
(道蓮様……)
その深い愛と真心に胸の鼓動が速まる。
「それにしても……、道蓮さんと灯子――さんは、なんでお互いに途中で手紙が届かなくなったのかな?」
私は道蓮様から届いた手紙に、毎回欠かさず返事を出していた。
手紙が届かなくなった後も、諦めきれずに何通か送りつけてもいたのだ。
その事を聞くと、道蓮様が目を細めた。
「……目星はついている」
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