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16)再会

 狂火様に校舎裏に呼び出された。

 彼は飄々としながらも、他人の急所を嗤って抉る人だと思っている。

 だから警戒していると、狂火様が扇子を開く。


「晴人君は八咫鴉が丁重に保護してますので、ご心配なく」

「八咫鴉は呪術研究専門機関でしょう? 信頼できません」


 警戒のあまり突き放すように話すと、ぱん、と扇子が閉じた。


「……ご理解いただけてないようですが、小生と貴女では立場が違う。小生が上で、貴女は下だ。親族会議で全員から厄介者扱いされていた貴女と弟君に手を差し伸べたのは誰でしたっけ?」


 それはお父様の親友の将雪おじ様と狂火様だけだった。


 解けない呪いに侵された私と晴人が親族に邪魔者扱いされる中、彼らだけが私達を見捨てなかった。

 いや、見捨てなかったのは将雪おじ様だけで、狂火様は私と晴人の呪詛を調べたいだけだろう。


「……ッ、も、申し訳ありません……」


 後見人で晴人の保護者ということを忘れてはならない。

 私が謝罪すると、狂火様は私の肩をぽんと叩いて耳元で囁いた。


「……封印されていた鬼の呪いは、執着も同然に貴女に絡みついている。月のモノが来ないのも、その所為でしょう」


 月経が止まっていることを見抜かれ、動揺すると、狂火様はクスクス笑った。


「まあ、せいぜい頑張ってくださいよ。貴女に簡単に死なれると、小生の退屈は癒えませんから。なんなら、幾らでも禁忌の刀剣をお貸ししますし~?」


 ◆◆◆


 狂火様の『訓練のお手伝い』から数日後。


 今日は狂火様が『やりすぎてしまったお詫び』に、お食事を御馳走してくれるとの事で、私達ヲ組は皇都市街に出てきていた。

 改めて皇都の風景を珍しく眺める私を見て、先頭を進んでいた狂火様が扇子で口元を覆って言った。


「皇都を物珍しく見ている『美少年』の姿は愛らしいですねぇ」


 私の本来の性別を揶揄するような物言いの狂火様に警戒心が高まる。

 さらに揶揄おうとする狂火様の言葉を道蓮様が遮った。


「ここに貴様の行きつけの店が本当にあるんだろうな?」


 道蓮様の言葉通り、いつの間にか入りこんだ通りには、赤や紫を基調とした、何処か艶っぽい空気の店が軒を並べていた。

 まだ昼日中だというのに提灯が連なっている。昔に見た夏祭りにも少し似ている気がする。


 朱塗りの格子からは美麗な女性陣が紅を引いた口元を上げ、白い腕を蛇が鎌首をもたげるように揺らめかせていた。

 私とマキリさんはそれらを見て目をぱちくりさせる。


「賑やかな場所だね」

「だな~! ねーちゃん達、オリの中にいるけど出してやらないのか?」


 マキリさんが近寄ると、女性達から歓声が上がった。


「きゃあ! 可愛い!」

「この子は十年後に絶対に良い男になるよ!」


 女性達に話しかけるマキリさんをよそに、鬼壱さんの顔色は蝋のように白くなっている。


「ここ、もしかしなくても花街だよね? 父上と兄上がよく行ってたよ……」

(花街⁉)


 初めての花街に私がどぎまぎしていると、狂火様が振り返り、からかうように目を細めた。道蓮様が狂火様を睨む。

 鬼壱さんが言葉を詰まらせる中、マキリさんが狂火さんの腰を叩いた。


「女か? 知ってっぞ! かーちゃんだろ? タコだろ?」

「……」


 マキリさんの言葉を受けて、狂火様は笑顔のまま押し黙った。

 どうやら狂火様にとってマキリさんは鬼門らしい。


 そのままあらゆる質問を飛ばしてくるマキリさんを、狂火様は黙らせようと思ったのか、とある店先の竹製の椅子を示した。


「ほぉら、マキちゃん! あれはおじちゃんオススメの鰻屋ですよ。あそこに座って、鰻丼を黙って、一言も喋らずに、黙々と無言で食べようねぇ?」


 狂火様が示したお店からは香ばしくて濃厚な香りが漂っている。

 その芳香を嗅いでマキリさんが初めて無言になる。

 一目散に店先にかけよったマキリさんは、鰻を指さしながらお店の人に話しかけた。


「おっちゃん! ウナギくれー!」

「おっ? 元気が良いボウズだな! でもウチの鰻は少しばかり高ぇぞ」

「カネはキョーカが全部払うから大丈夫だ! 店中のウナギくれ!」

「全部⁉」


 鬼壱さんが仰天する。確かに狂火様が御馳走すると言ってくれているけれど、鰻は高額だ。

 店先で騒ぐ私達に、通行人の一人が声をかけた。


「……お前、道蓮……か?」


 名を呼ばれた道蓮様が振り向く。


 マキリさんに連れられて暖簾をくぐっていた私も、道蓮様の陰からその人を覗いて、驚いた。


(あの方は、佐助さん!)


 通りから道蓮様に声をかけたのは、土御門の本家の屋敷がある、山の麓に位置する村の青年だった。


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