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12)実力

「ただし、実践は成績順だ。ヲ組は最後なので黙って見ているように」


 こうして私達は校庭の隅に座り、同じ級の生徒が様々な技で木偶を攻撃する姿を見学することになった。


 術で攻撃する者、霊力を刀や弓に込める者……様々な戦い方があり、私は見様見真似で手を動かし、彼等の行動から見て学ぼうとする。

 それを見ていた道蓮様が尋ねる。


「……基礎を知らないのか?」

「そういうわけではないのですが……」


 戦闘ではいつも御霊府君が私の体を使う。私はそれを感覚で学んでいるが、御霊府君がいない時も戦えなくては意味がない。


 話している間に、ヲ組の順番が回ってきた。


 誰から始めるかを道蓮様と鬼壱さんと話していると、マキリさんが待ちくたびれたらしく、元気に飛び出して行った。


「とーう!」


 助走をつけて蹴りかかろうとするマキリさんを周囲の生徒達が嗤う。


「武器でもないのに。物理攻撃は効かねぇって言ってんじゃん」


 そう言った生徒の前で、マキリさんの蹴った木偶が真っ二つに折れた。


「……は?」

「……何で?」


 場からは嘲笑が消え去り、ざわめきが広がってゆく。そんな中で、マキリさんは猫のように着地を決めた。

 私も驚く。


「た、体術に霊力を宿らせる特殊体質? そんなの可能なんだ……!」

 その呟きを聞いた道蓮様が振り返る。


「……ほう。少しは分かっているようだな」


 褒められた……のかな。


 すると両腕に割った木偶を抱えてニコニコ顔のマキリさんがこちらに戻ってくる。

 その横を道蓮さんが通り過ぎると、構えていた木刀を振りかぶる。


「……はあっ!」


 道蓮様が得物を振るうと――一列に並んでいた木偶の首が切断され、宙を舞った。

 そうして道蓮様が刀を地面に突き刺した途端、飛んだ首が細切れになって転がった。

 それを見下ろした道蓮様が溜息をつく。


「……他愛無いな。おい、これでいいのか」


 圧倒的な殲滅力に誰もが言葉を失う中、空を切るような乾いた音がした。

 音の方向を探ると、遥か後方、校庭の繁みから鬼壱さんが顔を出している。


「あ、あの、あのお人形、壊したら良いんですよね……?」


 その手に握られていたのは、長銃だった。

 それで木偶を狙撃したようで、木偶の心臓部に、音の数だけ弾痕が空いている。

 通学中に彼が拾い集めていたのは銃の部品だったのだと合点がいった。


 いよいよ私の番がきた。

 手が震えて緊張する。

 そんな中、御霊府君の声が聞こえた。


『よし! 灯子! 儂とおぬしの力で、小僧どもを軽く越える成績を出してやろう!』


 気合いが入っている御霊府君を前に、教官が言う。


「安倍、式神の使用は禁止だ。お前の力だけでやれ」

『何じゃと!』


 御霊府君が不満気だったけど、私は元からそのつもりだった。


(御霊府君が居てくださらなければ何も出来ないようでは、陰陽頭など夢のまた夢……)


 鬼壱さんが練習用の木刀を手渡してくれたので受け取る。

 御霊府君の憑依中に体で覚えた呼吸を思い出しながら木偶に近づいた。


(集中して……相手をよく見て……)


 そうして静かな湖面のように落ち着いた心で木刀を振り下ろす。


(……あれ?)


 下ろした瞬間、姿を消した木刀にぽかんとする。


「……貴様……、何をどうすれば木刀が折れて、俺の真横に突き刺さるんだ……?」


 木刀は道蓮様がもたれかかっていた壁の横にあった木偶の首に刺さっていた。

 道蓮様は木偶に刺さった木刀を掴むと、一気に引き抜こうとする。

 その際、道蓮様が何かに気づいたように目を見開き、木刀を手放した。


 しかし私はそれ所ではなく、ひたすら謝るしかなかった。


「も、申し訳ありません!」


 ちゃんと木偶を狙ったはずなのに、何でこうなったのだろう?

 涙目になっている私の横で御霊府君は、お腹を抱えて笑っていた。


『惜しかったのう! あと少しで仕留めれたものを』


 教官は木偶と木刀を見て、授業が終わってから指導室に来るようにと言った。


 ◆◆◆


 授業が終わってから、私は重い足取りで指導室に向かっていた。


(本番で全く力が出せないなんて……)


 この学園に入学するまでに様々な特訓をしたのに……。


(結局、私は御霊府君が居ないとお荷物でしかないのかな……)


 そう思うと、流石に落ち込んでしまう。

 御霊府君は『あんな人形遊びで儂の灯子の実力がはかれるものか』と慰めてくれたけど……。


「失礼します」


 校舎の隅にある指導室の扉を開ける。


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