魔法習得②
朝、寝室からゆっくりと出て階段を降りてきたモアの目の前に…
「モア!」
「…メア? おはよう。」
「おはようございます!モア!これを見てください!」
「………?」
ドヤァ~!!!って感じの顔で、コップや大小様々なフラスコ類に水を入れて、モアの目の前に並べて、仁王立ちしている、メアがいた。
「この屋敷雨漏りしてたのね。気づかなかったわ。後で直さないと。メア、わざわざフラスコで受け止めなくても裏の薬草園にバケツあるわよ。…雨降ってたかしら?」
「違いますよ!誰も雨漏りの水滴なんて受け止めてないですよ!!」
「違かったのね。でもフラスコに水入れてなんでドヤ顔になっているの?誰でも出来ることよ?」
「違いますよ!これは下級魔法の【水流】です!溢れ出る魔力のせいでドバドバ出ちゃうのを制御して周りのフラスコに適量を注いだんです!」
「!頑張ったわね。」
メアの言葉を聞いてモアは驚いていた。最初の初実践魔法は一ヶ月ちょっと前程だというのに、この短期間で魔力操作をマスターしていたからである。
尽きない魔力のおかげで魔力の流れをすぐに掴めていたメアならば、半年程度で習得するだろうと思っていたのだが、予想を遥かに超える成長速度だ。
「もう魔力操作は完璧に出来る?上級魔法も全部覚えた?」
「まだ少し微調整がきかない時もありますが概ね大丈夫です!魔法の方も詠唱要らずなので覚えています!」
手馴れた感じで指先に火を灯すメア。
本来魔法は詠唱が必要なのだが、その主な理由は詠唱することによって魔力消費を抑えるためや威力の増大にあり、魔女は魔力を気にすることがないため詠唱が要らずであり、固有スキルによって威力も気にする必要がないのである。
ただし、使う魔法のイメージが浮かばない場合は詠唱しなければいけないが、そこはモアが実際に見せてくれるため問題ないようだ。
「問題なさそうね。それじゃあ次の魔法も覚えられそうね。……!!」
次に教える魔法を思い浮かべながら、ぼんやりと魔法で入れた水の入ったフラスコを眺めていたモアだが、ハッとしたようにメアを見てあることを尋ねた。
「メア!この量を一度にやったの?!」
「?そうですよ。」
「いつから水入れ始めた?」
「昨日から今日の朝にかけて、ですかね。」
モアの顔色が険しくなり、急に勢いよく問いかけられ、何事かと少し疑問をいだきながらその問に答えるとさらにモアの顔色が険しくなった。
どうしたのかと言おうとしたその時、
――ゴフッ ビチャビチャ
「………え?」
メアは口から大量の血を吐いた。
「メア!!」
「モ…ア? こ…れ…な…にがっ…ごほ」
なにが起きたのか分からずモアに尋ねようとしたが、再び出た吐血と共に心臓が握り潰されたと錯覚する程の激痛が走った。
次第に頭も痛くなっていき、意識が保てなくなっていき、私の名前を必死に呼び続けるモアの姿を最後に私は意識を手放した。
「メア!メア!!」
モアは胸の辺りを抑えて倒れ込んでしまったメアに身体の状態を調べる魔法をかけた。
メアはあちこちの内臓がボロボロになっていた。心臓などの重要な臓器が損傷していた場合、即死していたかもしれないが、特に傷がなかったのは不幸中の幸いだろう。
モアが即座に回復魔法を使ったおかげで傷もすぐに治った。
傷を治したあとモアはメアを寝室へ運んでいった。
――――――――――――――――――――――――
ーーパッ パチッ パチッ
「………寝室?」
いつの間に寝てしまったのだろうか?何をしていたんだっけ?記憶が曖昧な状態で目が覚めた私はすっかり見慣れた天井を見つめる。
カーテンの隙間から光が漏れているところを見るに、今は朝だろう。
昨日の夜はどうしていただろうか?…昨日?朝方まで魔法の練習をして、それから…その成果をモア様にみてもらって…それから…それから?
「…モアのところに行こう。」
ガバッと起き上がりベットから降りようとすると、ベットの脇にうつ伏せで寝ているモアの姿があった。
「うわぁっ!モ、モア!?」
モアはメアの手しっかりとを握っていた。眠ってもなお、手を離すことなく握っているところを見るに、余程のことがあったのだろう。
「ん… 」
驚いて大きな声を出してしまったせいで起きてしまったらしい。
とりあえず今の状況を把握するためにモアに呼びかける。
「おはようございます。」
「メ…ア…?」
「はい。メアです。あの、いったいなにがあっ」
「メア!!」
状況を聞こうとした瞬間モアがメアを名前を呼びながら勢いよく抱きしめた。
「ふぇ!?あ、あのモア?」
いきなり抱きしめられワタワタとしながらも、何があったのか尋ねるメア。
「あっ…取り乱してごめんなさい。」
「い、いえ!大丈夫です!それより私、昨日の記憶が曖昧で、どうしてここにいるのですか?」
「あなた大量の血を吐いて倒れたのよ。」
「え…?」
血を吐いて倒れた。突然そんなことを言われ、メアは愕然とした。昨日の記憶がほんの少し思い出せているのにベットで寝ていたのだから何かがあったのだろうとは思っていたが、まさか血を、それも大量に吐いていたとは思わなかったのだ。
「なんで急にそんな…」
「私が悪いの。本当にごめんなさい。」
「どうしてモアが謝るんですか!きっと私がなにかやらかしたんですよね?」
「いえ、あなたは昨日精密な魔力操作で魔法の鍛練をしてただけよ。」
「じゃあどうして私は倒れたんですか?」
「魔法を使い過ぎたのよ。本来、一般の魔道士は一定の魔力しか持っていないからなんともならない魔力を無制限に使ったせいで体に不可がかかりすぎて内臓がボロボロになってしまったのよ。魔女の体は決して丈夫ではないからその不可に耐えきれないの。もっと成長してから教えばいいとあなたの成長速度を見誤った私の落ち度よ。」
「それは…」
いつになく自分を責めるモアをみてなにを言えばいいのかわからず言葉を失う。
「!教えればいいってなにかを出来るようになればこの問題は解決するんですか?」
なんとなく耳に残った言葉を思い出し、モアに尋ねる。
「…身体強化の魔法よ。これは鍛錬になることも含め私が常にやっていることで出来ないとなると今後魔法は使えないと思った方がいいくらい重要なことなの。」
「それが出来るようになればいいんですよね?」
「ええ。」
「私に出来ますか?」
「既に精密な魔力操作まで出来ているから出来ると思うわ。」
「なにをしたらいいんですか?」
「これを覚えなくても魔法さえ沢山使わなければ死ぬ事は無いし普通に暮らすなら必要ないものだけれどそれでも修得するの?」
「はい。私は魔女です。メアに沢山のことを教わって一人前の魔女になりたいんです。」
血を吐いて倒れたメアを見た時、とても動揺したモアはメアをこれ以上危険な状態にしたくなかった。
魔女にしてしまったのは自分の責任でこの先モアが面倒を見続ければいいと思い問いかけた言葉だったが、メアは一人前を目指していた。
真っすぐ、逸らすことなくモアを見つめるメアをみてモアは決心した。
「わかったわ。でも教えるからには私は厳しくいくわよ!」
「はい!」
「でもまだ目覚めたばかりなのだから今日はゆっくり体を休めること!明日から忙しくなるから覚悟しなさい!」
「頑張ります!」
こうして明日より身体強化の魔法習得に取り組み始めるのだった。




