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異世界来ちゃったけど帰り道何処? 作者:こいし

第十章 亡霊と不気味な屋敷

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動き始めた使い

「メアリーちゃんは、幽霊って知ってる?」
「ゆーれい? 何それ? 言葉の響きからしてアイテムの名前か何か?」
「いや、知らないなら良いんだ。僕の妄想みたいなものだから」

 現在、メアリーちゃんとの会話を終えた僕達は宿を出て、あの幽霊屋敷へと向かっていた。
 途中、未だ不明なメアリーちゃんの目的を探るべく、僕はさりげない会話を続けている。フィニアちゃんもルルちゃんも、僕とメアリーちゃんの会話に耳を傾けていた。
 フィニアちゃんにこっそりメアリーちゃんの目的を探ろうとしていることを教え、それをフィニアちゃんからルルちゃんに伝達させたんだ。故に、フィニアちゃんは今ルルちゃんの肩の上に座っている。

 そこでまず聞いてみたのは、彼女が『幽霊』の概念を知っているのかどうか。結果は知らないだった。僕の感覚じゃ彼女は嘘を吐いていないと出ているから、本当に知らないんだろう。
 となると、彼女にはあの幽霊娘の姿は見えない。レイラちゃん達の姿は当然見えるだろうけど、僕の敵となっている彼女の存在が気取られないだけ、良しとしよう。

 メアリーちゃんは僕の右斜め前を上機嫌に歩いている。白金色の髪の毛が、太陽の光を反射してうっすらと金色を見せて、無邪気な笑顔を更に彩っていた。
 身長は僕の肩程までで、振袖コートの裾と袖が舞の様にひらひらと揺れていた。実力者故に姿勢と体幹がしっかりしているから、袖と裾も一定かつ綺麗に動くんだろう。

「ふーん……まぁ良いけど! ところで、貴方……んー、コレはちょっと距離感あるわね……うん! きつねくんと呼ぶことにするよ!」
「お好きにどうぞ」

 『きつねくん』ね。ちょっと舌っ足らずというか、滑舌が悪いのか、言いにくいのか、なんとなく全部平仮名に聞こえる呼び方だけれど、まぁいいか。レイラちゃんも『きつね君』だしね。

「きつねくんはあの屋敷に何をしに行くの?」

 彼女からの質問は、そんなものだった。そういえば、僕は彼女に何をしに行くのかを聞いたけれど、僕の目的は言って無かったもんね。でも、彼女は嘘とはいえ仮初めの目的をちゃんと述べた。ならば、僕もちゃんと目的を話す義務があるだろう。

 まぁ、嘘には嘘で返すけどね。アリシアちゃんのこともあったし、利用させて貰おう。

「僕はこの国の王女に交流があってね、あの屋敷も国の一部だからちょっとした調査を頼まれたんだよ。依頼じゃなくて、友人としてのお願いって奴だね」
「へぇ~! 流石は『きつね』だね、王女に伝手があるなんて凄いわ!」
「まぁそういう訳だよ。君に近づいたのだって、調査の妨げになるか確かめる為だったし」

 成程ねー。なんて相槌を打ちながら、僕の答えに満足したらしいメアリーちゃんは、また上機嫌に鼻歌でも歌い出しそうにスキップをして進む。
 屋敷に近づいてきたせいか、周囲に人の気配が少なくなってきた。もう2回程行ったことがあるから、この辺の人通りが少ない事は承知済みだ。

 ぶっちゃけると、僕達とメアリーちゃんの4人しか人影がない。屋敷の腐敗した臭いが此処まで漂ってくるから、仕方ないんだろうけどさ。

 そのまましばらく無言のまま、途中でメアリーちゃんが歌いだした鼻歌だけが聞こえていた。

「きつねさん……あの子、どうするの?」
「そうだねぇ……幽霊ちゃんと要相談かなぁ……勝負するにもメアリーちゃんの存在は邪魔だしね」
「でも、レイラ達のことはバレるよ? いいの?」
「それなんだよなぁ」

 すると、ルルちゃんの肩から飛んで移動してきたフィニアちゃんが、僕の頭のお面の中に入ると、こそこそと話掛けてきた。
 話の内容は、メアリーちゃんのことについて。幽霊の概念を知らない以上、彼女は幽霊ちゃんを見る事は出来ない。つまり、幽霊ちゃんと僕が彼女に隠れて話をすることは出来るのだ。1ヵ月という制限時間がある以上、慌てる必要はない……幽霊ちゃんと話して、メアリーちゃんをやり過ごせばいいのだ。

 パーティは今日屋敷に行く時だけのものだしね。たった1回やり過ごせれば、それでいい。

「あ! アレが例の屋敷ね?」
「うん……そうだよ」

 そして、僕達はあの幽霊屋敷へとやってきた。僕の場合は、戻ってきた……なのかな?



 ◇ ◇ ◇



 屋敷の門は、以前同様に来る者を拒まないとばかりに開かれていた。不気味な霧に包まれた屋敷、腐臭立ち込める地面の上に聳え立つ幽霊の屋敷、初代女王が住んでいた屋敷。
 僕達はその不気味さに臆することなく、その錆びれた門を通り抜けた。がしゃん、と音を立てて門が閉まる。メアリーちゃんが勝手に閉まった門に振り返り、周囲を警戒した。誰かがいるのか、魔獣がいるのか、はたまたアンデッドと呼ばれる魔族紛いがいるのか、そんなことを考えているんだろう。

 でも、その正体は彼女がけして知覚する事の出来ない幽霊と呼ばれる、見えない敵。

 ああ、考えてみれば彼女も人間に危害を加え、且つ知能を持った相手なんだし、分類上は魔族に属するのかな? それとも獣人みたいに、亜人族という分類になるのかな? 霊人族、みたいな?
 どちらにせよ、幽霊の魔族なんて言われてもおかしくはない相手だ。しかも、同じ魔族でSランクの瘴気(ウイルス)の魔族を手玉に取る……魔族としてなら確実に、トップクラスだ。

 しばらく周囲を見渡したメアリーちゃんは、誰もいないことを確認して、首を傾げた。まぁ、彼女が如何にSランクで優れた実力を持っていたとしても、知覚出来ない相手じゃ仕方が無いだろう。第六感で言えば、何か不気味な気配を感じ取っているかもしれないけれど、それでも知覚出来ない、触れられない相手じゃどう足掻こうが見つけられはしない。

「行くよ、メアリーちゃん」
「んー、なーんか居ると思ったんだけどなぁ」

 先導する僕の呼び掛けに、未だに釈然としないような表情で付いてくるメアリーちゃん。ルルちゃんとフィニアちゃんは僕が事前に幽霊ちゃんの話をしていたからかそれほど驚いてはいなかったけれど、やっぱり実際体験してみると驚愕はあるらしい。何の気配も無く、ただ門が独りでに閉まったのだから、驚かずにはいられないのは分かるけどね。

 結果的に、幽霊ちゃんのことを1番知っている僕が先頭を歩き、最後尾をメアリーちゃんが歩くことになった。誰が言い出した訳でもないけれど、自然とそうなったんだよね。
 そして、屋敷の目の前まで辿り着いた僕は……鈍く嫌な音を立てながら、重い扉を開く。ほんの少し生温く、埃臭い風が僕達の肌を滑る様に通り抜けて行った。
 中に広がる玄関ホールに1歩踏み込むと、1週間と少し前と同じ様に、リーシェちゃん達が階段の踊り場で眠っていた。痩せた様には見えないから、多分あの幽霊ちゃんが気を利かせて生命活動に支障ない位には栄養を与えてくれたんだろう。どうやって与えたのかは知らないけど。

 そして―――

『ばぁ♪』
「……」

 踏み込んだ僕の目の前に、逆さまの状態で舌を出した幽霊ちゃんが現れた。手を隠す程に長い袖をヒラヒラと目の前で揺らされると、ちょっとイラッとくる。相変わらずの死んだ瞳が、愉快そうに笑っている。
 でも、反応したい気持ちをぐっと堪えて後ろを一瞥した。ルルちゃんとフィニアちゃんが屋敷の中を見渡すようにきょろきょろと視線を彷徨わせ、メアリーちゃんも玄関の扉を調べている。あの扉も勝手に閉まるかどうか調べているんだろう。

 幽霊ちゃんが、僕の視線を追って僕の後ろを見た。すると、唇を尖らせてジト眼になる。死んだ眼でジト眼とか超怖いんだけど。凄く、責められている気分になってくる。

『ふーん、新しい女の子を連れて来たんだ? ふひひひっ、しかも全員幼女! もしかしてそういう趣味?』

 ちげぇよ馬鹿。言葉には出さず、僕は視線で彼女にそう訴えた。

『うんうん……まぁ事情は大体察したよ♪ で、どういう状況?』

 こいつ全然察し良くねぇ。

「きつねくん? どうしたの?」
「んー、なんでもないよ」
「そう? にしても、何も無いねーこの屋敷」

 んん? おかしいな、メアリーちゃんの位置ならリーシェちゃん達が見えている筈だけど……反応がない?
 怪訝に思いながら、僕は幽霊ちゃんを見た。リーシェちゃん達をメアリーちゃんに見えない様に指差しながら、理由を問い質す様な視線を送る。
 すると幽霊ちゃんは、ああ! と袖に隠れた手をぽんと叩いてケラケラ笑いながら説明してくれた。

『ふひひひっ……別に何もしてないよ。ただ貴方みたいな幽霊の概念を知ってないと見えない様にしただけ』

 なるほど、都合良いな。でもそれってレイラちゃん達が幽霊になったってことじゃないの? 死んでないソレ? ちょっと不安なんですけど。まぁ手を出さない約束だからまだ生きてはいるだろうけれど、どういう理屈で見えないようになってるんだろうか?
 とはいえ、メアリーちゃんに見えないのなら今の僕には都合が良い。このままなんとなく屋敷を見て、目的がなんであれさっさとやることを終わらせて、そのまま去ってくれればいいな。

 しかし、事はそう上手く進まないようだ。

「誰もいないねぇ」
「うん、そうだね。まぁ誰も近寄りたくない場所だし、周辺に人の気配がなかったのもその証拠だと思うよ」
『いるけどねー、私が! ふひひひっ! アハハハハハ!』

 喧しい、甲高い笑い声をあげるんじゃない。


 ―――なら、もうそろそろ良いかな?


 その時……そんな声が、聞こえた。

「っ――!?」
「あれ? 外しちゃった?」

 瞬間、僕はその場から飛び退いて、先程まで僕の居た場所を通りぬけた何かを躱した。
 そして、ソレをやった存在が軽くそう漏らす。その存在は、その容姿を大きく変化させていた。人間の筈だった姿は、人間とは大きく異なる姿へと変貌していた。その身から、太陽の様な光を放ち……そしてその頭上には、光源も無いのに浮かび上がる光の円環があった。
 何より、その背中大きく広がる白より純白な翼が目立つ。その姿は―――……!

 正直、怪しいとは思ってたし……何の目的があるのかと思ってたけれど……そうか、そういうことか。

 彼女の言葉を考えてみれば、居てもおかしくはない。彼女以外にも『居る』事は、彼女自身が明言していた。
 にしても、このタイミングで現れるだって? 空気を読め、彼女は敵ではあったけれど……ちゃんと空気の読める子だったぞ。

「……君の目的は――僕だったのか」

 彼女の目的は、僕だった。
 真っ白な少女が既に言っていた……僕を『浄化』すると、ソレが目的だと。
 すると、白い輝きと共に純白の羽を羽ばたかせ、幽霊ちゃんの様に空中に浮かんだ彼女は、僕を見下ろすように無邪気な笑みを向けてくる。凶悪な程、無邪気な笑顔だ。白金(プラチナ)色の髪は、頭上に浮かんだ光の円環に照らされ、キラキラと輝く。

 僕の言葉を聞いて、彼女―――メアリーちゃんは勿体ぶる様に告げる。


「―――初めまして、私は序列第6位『天使』……名前はメアリー、よろしくね!」


 『使徒』と名乗った彼女(ステラちゃん)の、バックにいた存在の1人。『天使』メアリー……神を葬ることを目的に掲げていた組織の1人が、またもや僕の目の前に現れたのだ。
 その姿はまさしく、天使そのもの。ステラちゃんとは違う、その圧倒的無邪気さが、凶悪な威圧感となって牙を剥いてきた。

 そして、彼女は次に……こう続けた。

「世界の為に、貴方を消滅させるね!」
メアリーの正体は、序列第6位『天使』。神を葬らんとする組織が、少しずつ顔を見せ始めてきました。詳しくは次回....!!
さて……どうなる?
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