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異世界来ちゃったけど帰り道何処? 作者:こいし

第十章 亡霊と不気味な屋敷

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遊び相手は

感想返しが滞ってすいません! 返したいのですが、時間が無く……。
いずれちゃんと返したいと思っているので、多少雑になっても許して下さい!
ではどうぞ。
 序列第6位『天使』と名乗ったメアリーという少女が、桔音の話を聞いたのはほんの4日前。とある少女が彼女の居たとある場所へ帰還した時のことだ。

 白い髪を腰まで伸ばした、露草色の瞳の少女の帰還。それを察知した彼女――メアリーは、白よりも純白な翼をはためかせながら、真っ白な少女に近づいた……否、近づいたという言い方は適切ではない。肉薄したと言うべきだろう。
 彼女は猛スピードで真っ白な少女に接近し、まるで風が肌を撫でるかの様に真っ白な少女の頭を蹴り抜いたのだ。その速度は、真っ白な少女が全く気付けない程の速度……一切の隙もなく、手加減も無く、唯一加えられた手心と言えば、彼女の『力』が使われなかったこと。

「ッ……序列第2位『使徒』、ただいま帰還致しました」
「うん、おかえり! どうだった? ちゃんと勇者を消滅させた?」
「……申し訳ありません、此度の異世界からの来訪者は……全力を持ってしても浄化出来ませんでした―――ッッ!?」

 蹴られた少女は、蹴った少女に対して膝を付きながら、そう言う。
 瞬間、メアリーは膝を付いた真っ白な少女の、自分の腹程までに下がった頭を再度蹴った。真っ白な少女は、直撃を喰らって地面を削る様に倒れる……が、メアリーは真っ白な少女の揺れる白髪を掴み、強引に引っ張り寄せた。
 痛みに若干顔を歪めた真っ白な少女だが、その口端から血が滲んでいる。抵抗する気はないのか、それとも出来ないのか、真っ白な少女は自分の武器である雷の槍を出さない。

 メアリーは、自分の顔の前まで引き寄せた真っ白な少女の、露草色の瞳を見つめた。恐ろしく無邪気な笑顔を浮かべながら、彼女は毒を吐く。純粋な子供の我儘の様な口ぶりで、悪意なく悪言を吐く。

「役立たず、貴方の存在理由(しごと)は異世界人を消滅させること。貴方の持っている神葬武装(ブリューナク)も、能力値も、全て使って『出来ませんでした』、なんて許されると思ってるの?」
「っ……申し訳ありません……しかし、『天霆(ケラウノス)』を直撃させても浄化出来ず……」
「嘘っ!? 幾ら貴方が役立たずでも、アレをぶつけて消滅しないなんて……その異世界人……面白い!」

 メアリーは、真っ白な少女の言葉に瞳を煌めかせた。純白の翼が震え、彼女の興奮を表現する。真っ白な少女の髪を手放し、代わりにその白く細い首を掴んだ。

「っぐ……!」
「ごめんね? 大丈夫? 痛かったよね、ちょっと余りの役立たずぶりに腹が立っちゃったのよ」

 そのまま首をぐいっと持ち上げて、真っ白な彼女を立ち上がらせる。真っ白な少女が自分の脚で立ったのを確認すると、その首から手を放した。
 軽くバックステップで1歩後ろに下がると、メアリーは立ち上がった真っ白な少女に聞く。

「それでそれで? もっと聞かせてよ、その異世界人のこと!」

 絵本の音読をせがむ子供の様な無邪気さで、メアリーは言う。真っ白な少女はその言葉に対して、けほっと軽く咳払いをした後、話しだす。自分が戦った、あの不気味な少年の事を。自分が彼について知っている全ての情報を、メアリーに語る。
 そして、真っ白な少女が不気味な少年のことを語る度に、メアリーは翼を揺らして瞳を煌めかせる。まるで理想の王子様の話を聞かされた、夢見る少女の様に、彼女は不気味な少年の話に夢中になった。

 見た目は全く強そうではないけれど、しかしその実真っ白な少女を打倒するだけの力を持っている。

 同年代の男に比べて華奢で、怯える様な要素も無いにも拘らず、人間とは思えない様な気配を持つ。

 不気味な薄ら笑いを浮かべ、会話にしても戦闘にしても、こちらの予想を超えてくる存在。

 異世界からの来訪者とはいうものの、此方の世界の力を此方の世界の人間以上に使いこなしてくる。

 そして、以前戦った時からさほど時間が経っていないにも関わらず、恐るべき成長速度。

 特殊な事例が多過ぎるのだ……その少年は。メアリーは、子供っぽい性格をしているが、その年齢は真っ白な少女よりも上……何百年も昔から生きているのだ。人間の可能性には多大な面白さがあると思ってはいるが、それも何百年も見ていれば子供っぽい彼女のことだ……直ぐに飽きる。
 まして、同じ様な事ばかり繰り返し、かつ目新しい事をする事は何十年に数回程と少ない人間という種族だ。彼女にとって人間の生み出す新しさは、最早歴史上で生み出されたモノの改良でしかないのだ。この数百年で、至極つまらなく、至極興味の湧かない種族になってしまった。

 そんな彼女にとって、異世界人とは唯一残された、人間のとても新しい存在なのだ。

 そこに、そんな異世界人の中でも更に異質な存在……それがかの不気味な少年、桔音。
 彼女が飛び付くには、打って付け過ぎる存在だ。異質、奇怪、不気味、大いに結構。ソレも含めて新しく、斬新で、面白い。遊ぶだけの玩具としては、他と違えば違うだけ良い。唯一無二(オンリーワン)、素晴らしい。

「そっかそっか! 面白いっ! 役立たずだったのは許してあげるっ! 貴方はしばらくお休みしてて良いよ」
「何処かへ行かれるのでしょうか?」
「決まってるじゃない! その『きつね』って子に会いに行くのよ! えーと、確かルークスハイド王国のゆーれい屋敷だっけ? あははっ! 楽しくなってきたわ! 興奮し過ぎて眠れなくなっちゃう!」

 真っ白な少女の話を聞いて、メアリーはぞくぞくと久々に感じる昂揚感に浸っていた。そして、彼女はその話の少年に会いに行く事にする。無論、目的はその少年を消滅させること。神を葬ることを至上の目的としている彼女達にとって、世界の揺らぎの可能性である『きつね』は放っては置けない。即座に消滅させるべきだ。
 故に、メアリーは消滅させがてら、その少年に会いに行こうと考えたのだ。

「役立たずの尻拭いは私がしてあげる! はい、言うことがあるわよね?」
「……ありがとう、ございます」
「うん! 偉いわ、役立たずもちゃんとお礼は言えないとね!」

 メアリーは無邪気な笑顔を浮かべながら、真っ白な少女の頭を撫でた。よしよしと、偉い子を褒める様に。真っ白な少女は、その行動に一切の悪意を感じなかった。本当に、純粋に、無邪気に、悪意なくやっている行動なのだ。少なくとも、メアリー自身はその行動が悪い事だなんて思っていない。

 『天使』メアリーは悪意を持たない。純粋に、無邪気に、外で走りまわって遊ぶ子供の様に、世界の敵を消滅させる。神を消滅させようとしている。

 それが―――とても良い事なのだと心の底から思っているのだ。



 ◇ ◇ ◇



 時は戻って、幽霊の居る屋敷……そこで桔音とメアリーは対峙していた。自称と他称、その差はあれど、この2人の対峙はさながら……そう、天使と死神の対峙とも言えた。

『天使……天使天使、ふーん……天使かぁ~……確かに可愛いし、翼もあるし、天使のわっかもあるし、天使っぽいかも! でも……ちょっと怖いかも?』

 幽霊の少女は、そんな2人の死神の方―――つまり桔音の後ろで、背後霊の様に浮かびながら天使と名乗るメアリーを見ながらそう感想を漏らした。
 正直、桔音もそう思う。天使というだけあって、その神々しさと輝き、純真な笑顔はまさしく天使そのもの……しかしその笑顔の裏側に、桔音達は凶悪な威圧感を感じた。

 しかし、メアリーには幽霊の言葉は聞こえないし、その姿も見えない。その言葉にメアリーは何も返すことが出来なかった。

「もう気が付いているだろうけど、きつねくんの事を教えてくれたのは『使徒』だよ」
「うん、気付いてるよ。まぁ、あの子の事だから包み隠さず教えたんだろうね……口止めしとけばよかったかな?」
「あははっ! 随分と仲良くなったんだね? 人形みたいだったでしょう?」
「少なくとも、僕の知る得る中では最も空気の読める子だったけどね」

 牽制というべきなのか、言葉の節々で相手へと棘をぶつけ合う。
 そしてそんな中で、桔音はメアリーの武器を探る。先程の初撃、躱す事が出来たのは偶然だったが、何を躱したのか未だに理解出来ていないのだ。
 しかし、彼女の両手には何の武器も握られていない。何で攻撃されたのか、全く分からない。警戒は一切緩められなかった。

 更に、もう1つの不安要素―――ここに昏睡状態のリーシェ達がいること。
 彼女達は見えなくなっているだけで、あそこに居ないわけではない。きちんとあそこに3人揃って存在しているのだ。つまり、彼女達の居る場所を攻撃すれば、その攻撃は無抵抗に直撃し、彼女達を傷付けるだろう。
 使徒であるステラとの戦いの規模からして、『天霆(ケラウノス)』並の大規模攻撃をされたら……桔音では護り切れない。

「私からしたら人形なんだけどなぁ……まぁいいわ、そろそろ始めよっか」
「面倒臭いなぁ……Sランクってのは皆こうなの?」
『ふひひっ♪ こりゃ勝負どころじゃないねー……くふふっ! ふひひひひっ!』

 メアリーが、小さな手を手刀の様にして振り上げるのを見た桔音は、溜め息を吐きながらも薄ら笑いを崩さない。
 一切の打開策もないし、相手の解析も出来ていない。一応ステータスを見てみたものの、今度は名前と称号以外の全て、能力値も含んだ全てが隠されている。ちなみに称号は当然『天使』だ。

 何も分からず、実力はSランク以上未知数―――だから代わりに、いつも通り『不気味体質』を発動させた。

「!」

 続いて、『威圧』を発動させる。

「これは……! 想像以上ねっ!」

 そして、『瘴気操作』で瘴気を生み出し、その姿を大きく見せた。赤い瞳も相まって、本格的にその威圧感が死神のモノへと変貌していく。
 メアリーは、そんな桔音の臨戦体勢に目を輝かせて笑顔を浮かべた。勝てないなんて微塵も思っておらず、桔音のことを玩具か何かとして思っていない瞳だ。

 天使の円環が白く輝き、白より純白な翼が不気味な屋敷を半分、その光で真っ白に染め上げた。

 だが、屋敷のもう半分を桔音の瘴気が漆黒に染め上げ、拮抗している。

「僕の目的は君じゃないんだ……さっさと終わらせようぜ」
「あははっ! さっさと、なんてもったいないじゃない―――遊ぶならとことんまで、よ!」

 桔音は薄ら笑いを浮かべ、メアリーは無邪気に笑った。

 そして、両者がぶつかろうとした地面を蹴った時―――いや、地面を蹴った衝突した瞬間だ。


『仕方ないなぁ―――手伝ってあげるよ……ふひひっ♪ 貴方の遊び相手は今、私なんだから』


 幽霊の少女が地面を蹴った桔音の背後にぴったりくっついて来て、耳元でそう言ったのが聞こえた。

 刹那。

 桔音の目の前に居た筈のメアリーを、巨大な青い焔が襲った。
幽霊の少女との、共同戦線―――!
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