第5話
出張から帰って数日。
会社では、いつものように穏やかな日常が続いていたが、ある日の午後、嫌なことが起きた。
取引先からのクレーム。
内容は、俺の確認不足ではなく、明らかに会社上層部のミスだった。
なのに、電話口で相手は俺の名前を呼び、
「お前のせいで、プロジェクトが台無しだ!」
と一方的にまくし立てられた。
部長の高橋さんがフォローに入ってくれたが、俺の胸には重いものが残った。
家に帰ると、早乙女さんがいつものように待っていた。
「おかえりなさい」
柔らかい笑顔で、温かいお茶を差し出してくれる。
俺はソファに座り込み、ため息をついた。
「今日は・・・・ちょっと疲れた」
早乙女さんは静かに隣に座り、俺の肩に手を置いた。
「無理しないでくださいね」
そのまま、そっと俺を抱き寄せる。
温かい胸に顔を埋めると、甘い匂いがした。
彼女の指が、背中を優しく撫でる。
「大丈夫、私が全部、受け止めますから」
その言葉に、胸のつかえが少しずつ溶けていく。
「早乙女さん・・・・ありがとう」
俺は自然と、彼女の胸に顔を押しつけた。
まるで、子供の頃に戻ったような安心感がする。
そしてお互いに顔を近づけていった。
(暗転)
夜中、ふと俺は目を覚ました。
早乙女さんは隣で寝ている。良い寝顔だ。
——ご主人様。
エクレアの声が、優しく響く。
——今夜は、満ちる日でございます。
視界の端が、ゆっくりと歪む。
すると、そこにはこの世のものとは思えない絶世の美女が立っていたのだ。
エクレアである。
銀髪が月の光のように輝いていた。
黒を基調としたメイド服が、柔らかく揺れる。
紅の瞳が、俺だけを見つめている。
「ご主人様・・・・お疲れのようですね」
エクレアは静かに近づき、俺の正面に膝をついた。
エクレアの手が、俺の頰に触れる。
温かい。
実体がある今、彼女のぬくもりは本物だ。
「わたくしも・・・・癒して差し上げます」
エクレアの腕が、俺の背中に回る。
早乙女さんとはまた違う、エクレアの極上のぬくもりに包まれ、俺は思わず呟いた。
「・・・・ママ」
自分でも驚いた言葉。
だが、エクレアは慈しむように目を細め、優しく微笑んだ。
「ふふ・・・・癒しを受けてくださいませ。ママは、どこにも行きません」
彼女の腕が、強く俺を抱きしめる。
とてつもない多幸感で、胸がいっぱいに広がった。
涙が、こぼれそうになる。
孤独だった日々が、嘘のように遠い。
俺は、エクレアの腕の中で、ただ静かに目を閉じた。
——すべては、ご主人様の意思のままに。




