6.武器を求めて
「はーい、おっはー! 昨日はよく眠れたかなー?」
扉を開けると、そこにはいつも通りの軽いノリの如月さんが立っていた。
「色々とありすぎて、まだ頭の整理が追いついてなかったりしてー?」
「まぁ、正直何が何だかってところはありますけど……。でも、戦うって決めたことに関しては、もう迷いはないです」
俺の言葉を聞いて、如月さんは「おー!」と嬉しそうにパチパチと手を叩いた。
「それは心強い! たくましいねえ、タクマくん。そんじゃ、せっかくだし早速タクマくんに合った武器でも探しに行きますか!」
「俺に合った、武器……?」
(ちょうどさっき考えていたところだった。一人で悩んでも限界があったし、これは本当に助かるな)
「特に『これが使いたい!』っていうお目当てがないなら、実際にいろんな武器を触って使ってみるのが一番だと思うんだよねー。そしたら、なんとなく感覚で分かるじゃん? これ扱いやすいなーとか、これはちょっと使いにくいなーとか」
(なるほど、確かにその通りだ。使ってみないことには、自分に何が向いているかなんて分かりっこないもんな。よし、とにかく色々と試してみよう!)
「はい、よろしくお願いします!」
「よろしい! では如月先生についてきたまえー!」
胸を張る如月さんの後ろを、俺は期待を胸に小走りでついていく。
「はーい、到着~」
案内された場所に辿り着いた俺は、思わず周囲を見回して首を傾げた。そこは、昨日教えてもらったガイアの3つの部隊のうち、討伐部隊ではなく——『死体処理部隊』の管轄区画だったからだ。
「あの……武器を探すのに、どうして死体処理部隊のエリアに来たんですか?」
死体処理部隊といえば、UMAの死骸の回収や、被害者・戦死者の遺体回収を行う、いわば戦場の後片付けをする部隊だと聞いていた。武器の開発や保管は別の場所にあると思っていたのだ。
「あー、そっかそっか。実はね、昔は『研究部隊』っていうのが独立して存在して、そこで装備やUMAの研究を進めてたんだけどさ」
如月さんは歩きながら、施設の奥にある怪しげな研究所のような扉を指さした。
「『UMA細胞』を装備に転用する技術が開発されてから、死体処理のやり方(素材の回収方法)次第で、装備に転用できなくなっちゃったりする問題が発生したんだよねー。だから、だったら最初から死体処理部隊と研究部隊を合併しちゃえ!ってことで、今の形になったの。三神隊長がこの前折られた剣の修理や調整を依頼しに行ったのも、ここの開発班だよ」
如月さんの口から出た「UMA細胞を装備に転用する」という言葉に、俺の背筋に冷たいものが走った。
俺たちが身に纏うスーツも武器も、すべてはあの化け物の細胞が使われている、いわば『半生物』なのだという。だからこそ、装備はすべて使用者の意志(脳波や生体エネルギー)によって形状や色を変化させる特性を持っているのだ。
(なるほど、昨日の合同訓練でみんなスーツの色がバラバラだったのはそういうことなのか)
武器に関しては、使用者の要望を可能な限り技術班が再現してくれるらしく、適合すれば自分に合わせた世界に一つだけの特殊仕様の武器を作ってもらえるのだという。
「……ってことは、もしかして、これから俺のために色んな武器をその都度作ってもらって、お試しで使わせてもらう感じですか?」
ちょっと贅沢な想像をして尋ねると、如月さんは人差し指をチッチッと横に振った。
「一つ訂正! さすがにまだどんな武器を使うかも決まってない段階だからねー。まずは、ここにある既存の『汎用武器』を色々使わせてもらうの。ほら、ガイアのリソースも無限じゃないからさ。素材を無駄にしないようにしないとね」
「あ、そりゃそうですよね……」
恥ずかしくなって頭を掻く。
「よーし、それじゃあ頼み込んで、タクマくんに使えそうな汎用武器をいくつか出してもらいましょ!」
如月さんはそう言って、死体処理部隊のさらに奥、数々の特殊な装備が厳重に保管されている装備開発の心臓部へと足を踏み入れた。
数々の怪しげな研究機材や特殊な装備が並ぶ、死体処理部隊の心臓部。
薄暗い通路の先にある、装備開発の受付のような場所に辿り着くと、如月さんが声を張り上げた。
「すみませーん! 影浦さん、いらっしゃいますかー?」
すると、奥の部屋から穏やかな返事が返ってきた。
「はい、今行きますよ。少々お待ちください」
しばらくして、白衣を纏った一人の中年男性が姿を現した。
「お待たせしました。カレンくん、今日はどうしましたか?」
「実は、新しく仲間に加わったこの一ノ瀬タクマくんに武器を作ってあげたくて。でも、まだ本人の使いたい武器が決まっていない状態なんです。もし良ければ、今ここにある汎用武器を色々と試用させてもらえませんか?」
影浦というその男の人は、とても柔らかい物腰で、落ち着いた温かみのある声をしていた。
しかし、俺が驚いたのは、如月さんだ。
普段のあの緊張感のない話し方はどこへやら、まるで上等なホテルの一流スタッフのように、とても丁寧で失礼のない完璧な態度で接している。
「ええ、もちろん構いませんよ。どうぞこちらへ。ここにあるものなら、どれでも好きなだけ使ってみてください」
影浦さんは優しく微笑みながら、俺たちをさらに奥の研究室へと招き入れてくれた。
丁寧な言葉遣い、無駄のない落ち着いた佇まい、耳に心地よい貫禄のある声。そして、すべてを包み込むような優しい笑顔。まさに「出来た大人」の風格というか、底知れないオーラを全身から放っている。
(なんだろう、この人の前だと、自然と失礼のないように背筋が伸びてしまう……。如月さんが普段と違ってめちゃくちゃ丁寧になるのも、なんだかすごく頷けるな)
ただそこに立っているだけで、周囲の人間の態度を正させてしまう。影浦という男には、そんな不思議な魅力と説得力が備わっていた。
「それでは、お言葉に甘えて使わせていただきますね。タクマくん、おいで」
「あ、はい……っ」
如月さんに手招きされ、俺は影浦さんに一礼して奥の部屋へと続く自動扉をくぐった。
影浦さんが武器の準備のために少し離れた隙を見計らって、俺は小声で如月さんに尋ねてみる。
「如月さん……あの、さっきの男の人は一体誰なんですか?」
「あ、気になっちゃった? 彼は影浦桐人さん。この死体処理部隊のトップ——隊長さんだよ。うちの部隊でいう、三神隊長と同じポジションにいる凄い人なんだから」
「えっ……あの人が、隊長さんなんですか」
てっきり物静かな研究職のチーフかと思っていたから、部隊長という肩書きに驚きを隠せなかった。
如月さんの話によると、影浦さんはガイア創設期から組織を支える、かなりの古参メンバーなのだという。長く最前線に身を置いている分、これまであまりにも多くの仲間の『死』をその目で見届けてきた。
失われた仲間の命を、決して無駄にはしない。そして、人間を遥かに超越するUMAの強靭な力を、人類の反撃の牙に変える。
その執念から、影浦さんは死体処理部隊の隊長でありながら自力で研究を進め、ついに『UMA細胞を装備に転用する技術』を世界で初めて開発したのだ。
この技術のおかげでガイアの戦力は飛躍的に向上し、脆弱な人間にすぎない俺たちでも、UMAと対等に殺り合えるだけの力を手に入れることができた。まさに、今のガイアの戦い方の土台を作った伝説的な人物であり、研究部隊と死体処理部隊が合併するキッカケを作った張本人でもあった。
「影浦さんの長年の研究のおかげでね、謎だらけだったUMAについて、それから奴らの身体を作る『UMA細胞』について、色んなことが分かってきたんだよ」
影浦さんがテスト用の汎用武器を一通り台車で運んでくるまでの間、如月さんは声を潜めて、その研究成果の秘密を俺に教えてくれた。
「実はね、UMA細胞って地球上に存在するどの生物とも一致しない、完全に未知の細胞だったらしいんだよねー。そいつらが何者で、どこからどうやって生まれてくるのかは、今でも全然分かってないの」
影浦さんが待つ部屋の手前で、如月さんは声をさらに潜めた。
「でもね、そのUMA細胞を装備に転用することで、本来なら人間じゃ絶対に敵わないUMAとも互角に殺り合えるだけの、爆発的な肉体強化を得られるようになったんだ。——ただ、それにはとんでもないリスクがあってね」
如月さんのトレードマークである笑顔が、一瞬だけ消える。
「このUMA細胞、装備をつけると肉体の神経や血管にじわじわと侵食してくるの。長く使用すればするほど癒着が酷くなって、装備者の肉体とUMA細胞が同化し始めちゃうんだよね……。そして完全に同化しきっちゃうと、装備者自身が、本物のUMAへと変貌を遂げてしまう危険性があることが分かったの」
その言葉の意味を理解した瞬間、俺の全身の血の気がサッと引いた。
つまり、化け物と戦うためにその細胞の鎧を身に纏えば、内側から肉体を蝕まれ、最悪の場合は自分自身が化け物になってしまうということだ。
「……ま、それを防ぐ方法もちゃんと分かってるから、普通に使ってる分にはUMAにならずに済むから一安心なんだけどねー!」
如月さんはすぐにいつもの軽い調子に戻って、指を一本立てた。
詳しい仕組みはまだ解明されていないらしいが、UMA細胞は装備者の『感情(精神状態)』に強く反応してその働きを変えるのだという。
心が勇気や希望で満ちていれば、純粋な肉体強化の恩恵だけを得られ、細胞の侵食を完璧に抑え込むことができる。
逆に、心が恐怖や絶望で不安定になったり、弱気になったりすると、UMA細胞に一気に主導権を握られ、肉体の同化が爆発的に進行してしまう。
ポジティブであれば無害な最強の牙だが、ネガティブになれば自分を化け物に変える最悪の呪いになる——。
それを聞いた瞬間、俺の頭のなかに、あの血の海だった戦場で初めて会ったときの如月さんの姿がフラッシュバックした。
なぜ、目の前で人が無惨に殺されている凄惨な現場で、彼女はあんなに明るく、ふざけたようなハイテンションを維持できていたのか。
(……だから、あんな風に常に明るく振る舞っていたのか……っ)
気づかされた。自分が想像していた以上に、ガイアの人間たちは、あまりにも残酷で、あまりにも命懸けな戦いを強いられている。
(UMAとの戦闘が命懸けだっていうのは、自分の目でも見ていたから分かっていた。あんな化け物と戦うんだから、いつ死んでもおかしくない。……でも、それだけじゃなかったんだ。あいつらと戦うために、化け物の細胞を自分の体内に直接繋げて、自分が化け物になるリスクを背負いながら戦ってたんだ。心が折れたら、その時点で一発で終わり。いつ、どのタイミングで自分が化け物になるか分からない恐怖のなかで、みんな笑って戦ってたんだ……)
あまりの真実に絶句し、思考に沈みそうになっていた俺の顔を、如月さんは覗き込んできた。そして、いつもの悪戯っぽい明るい声で、俺の肩をポンと叩いた。
「みんな、それだけの覚悟を決めてここにいるの。だから——他人の心配より、まずは自分の心配だよ、タクマくん!」
その言葉が、俺の胸に深く、重く突き刺さる。
(……そうか。そうだよな。ここにいるのは、みんな自分の命をチップにして戦っている人たちだけなんだ。その人たちなりに、ちゃんとかけがえのない理由があって、ここに残ることを選んでる。いつも明るくてお調子者な人だと思っていたけれど、それは表面的なところだけ。本当は如月さんだって、色んな重い想いを背負って、必死にここに立ってるんだ……)
真二くんも、真一さんも、三神隊長も、そして目の前の如月さんも。
みんな、新人の俺なんかよりも遥かにしっかりとした、強固な『覚悟』の盾を持って、この地獄のなかに身を置いているのだと、俺は強く思い知らされた。
「なんかごめんねー! ちょっとお話がしんみりしちゃったよね。よーし、気を取り直して……ほい、これ!」
如月さんが台車から無造作に引き抜き、俺に手渡してきたのは一振りのロングソードだった。ズシリとした鉄の重みが両手に伝わってくる。
「安心してね、ここにあるお試し用の武器はぜんぶ普通の鉄で作られてるから、UMA細胞は使われてないの。だから細胞の侵食とか同化の心配は一切ナシ!」
UMA細胞は化け物を討伐して手に入った分しか存在しない貴重品なため、流石に試作段階の汎用武器には使われていないらしい。少しだけホッとする。
「初心者が一番使いやすい王道の武器、それがロングソード! 片手でも扱えるし、両手で構えればそこそこの破壊力も出るから、戦況に合わせて臨機応変に対応しやすいのが強みだね。ちなみに三神隊長が使ってるのは『片手剣』。あっちのほうがスピードを極限まで活かせる代わりに、刃が短くて軽量なぶん火力が低いの。だからUMAのサイズや硬さ次第ではほとんどダメージが通らないから、実はかなり戦う相手を選ぶ玄人向けの武器なんだよねー」
「なるほど、ひと口に剣と言っても色々と種類や特徴があるんですね……」
俺が感心してロングソードの刃を見つめていると、如月さんは台車に並ぶ他の大型武器を指さした。
「ま、本物の装備になればUMA細胞が力をググッと引き出してくれるから、大和くんみたいにバカでっかい大剣でも人間離れした怪力で楽々扱えるようになるんだけどね。……でも、そのぶん装備にかかる『負担』も大きくなっちゃうの。もし戦闘中にUMAの攻撃を喰らって、その大ダメージの負荷で装備の力が一時的にでも落ちちゃったりしたら、その瞬間に重すぎて自分の武器が扱えなくなっちゃうリスクがあるんだー」
「え? それって、戦闘中に起きたら結構致命的というか、マジでやばいじゃないですか……!? もしそうなっちゃったら、一体どうするんですか?」
想像しただけで冷や汗が出るような欠陥に、俺は思わず声を裏返した。しかし如月さんは「んー?」と首を傾げ、至ってあっけらかんと言い放つ。
「マジでやばいから、他のメンバーが必死に援護して、その間に死に物狂いで戦線離脱してもらうしかないかな!」
「しれっと言ってますけど、それ完全に絶体絶命のピンチじゃないですか!?」
「そうならないようにするには、普段の生身の自分でもある程度扱えるサイズにするか、あるいは『敵の攻撃を1発も喰らわないこと』だね!」
無理を言うな、と内心で叫びつつ、俺は手元のロングソードを構え直した。
「と、とりあえず、色んな剣を実際に振ってみて、しっくり来るものがあるか試してみます……」
「うんうん、こればっかりは本人の感覚だからね。自分に合うものが見つかるまで、思う存分ここで振り回してみるといいよ!」
そう言われても、これまでの高校生活で剣なんて握ったことも、振ったこともない。しっくり来るという感覚が、そもそもどんなものなのか素人の俺には全く分からなかった。
(というか、どれを握ったって『しっくりこない』のが普通だよな……。なんかこう、武器を道具として使うっていうよりも、自分の身体の一部みたいに直感的に扱える武器って、何かないのかな? それなら、素人の俺にでも戦えそうだけど……)
藁にもすがる思いで、俺は目の前の先輩に尋ねてみた。
「あの、如月さん。なんかこう……自分の身体の一部みたいに、直感的に扱える武器って、このなかに無いですかね?」
「んー、そうだねえ。例えばだけど……『メリケンサック』とか?」
「あ、確かにそれなら、自分の拳で殴る感覚そのままだから、俺でもやれそうですね!」
「でもさ、あの化け物相手に超至近距離で殴り合いの殴打戦をするって、冷静に考えてかなり……いや、絶望的に危険な気がするけど、大丈夫?」
化け物のあの巨大な爪や、肉を引き裂く牙が頭を過る。
「そうっすね、だいじょばないっすね。全然、無理です」
(危ねえ、何を考えてるんだ俺は……! 扱いやすいかどうかも大事だけど、それで実際に生き残れるかどうかが一番重要なんだ。化け物相手にステゴロで挑んで死んだら元も子もねえよ!)
自分の浅はかさに頭を抱えていると、如月さんが優しく微笑んだ。
「武器は自分を守るための道具でもあるからね。そんなに焦ってすぐに決める必要はないよ。それに――なにも、戦う道具は近接武器(剣)だけじゃないんだよ?」
如月さんが台車の奥から、カチャリ、と硬質な金属音を立てて持ち上げたのは、鈍い黒光りを放つ無骨なライフル——銃だった。
「私の専用武器はこのライフルでね。遠距離からの精密射撃で、前線で戦うみんなの援護をしたりするのが主な役割なんだー」
如月さんは愛銃のレシーバーを愛おしそうに撫でた。
「おぉ……! それなら、化け物の爪が届かない安全な間合いから戦えますね!」
思わず声を弾ませた俺に、如月さんは少しだけ真面目な顔をして首を横に振った。
「だけどね、遠くから撃つってことは、前線で敵と激しくもみ合ってる味方に被弾する可能性もあるってこと。一歩間違えれば、背中から仲間を殺しかねない、めちゃくちゃ責任の重い武器でもあるんだ。だからガイアでは、銃の携帯は基本的には推奨されてないの。それに、銃の弾丸じゃまともに討伐できない頑丈なUMAだってたくさんいるしね」
「あ……そっか。前に現れたあの虎型みたいに動きが素早い奴だと、命中させるどころか狙いを定めることすら困難だ。それに、もし前衛の人が敵の動きを止めてくれたとしても、そこに撃ち込めば誤射する危険が跳ね上がる……」
「そゆこと! だから、誰の目から見ても文句なしの射撃の腕前がないと、基本的には使っちゃダメっていうルールになってるんだー。まあ、私は特別に許可されてるけどね!」
「如月さんって、そんなに射撃の腕が良いんですか?」
「まあねー。これでも元々は軍人だし、普通の女の子が恋バナしてる年齢のときから、毎日死ぬほど射撃訓練してたからね!」
(そうだ……この人、普段はこんなに抜けた感じだけど、隊長と同じで生死の境をくぐり抜けてきた元軍人だったんだ。如月さんって、俺が思っている以上に凄い人なのかもしれない……)
「じゃあさ、タクマくんが銃に向いてるかどうか、試しに簡単な射撃テストでもしてみよっか!」
「はい、よろしくお願いします!」
——結果は、見るも無惨なボロボロだった。
数メートル先の固定標的にすらまともに当たらず、ライフルの凄まじい反動で肩を痛めただけ。俺には驚くほど射撃のセンスがなかった。
「うーん……まあ、人にはそれぞれ向き不向きがあるからね! 仕方ないよ、そんなに落ち込まないで!」
「はい……うぅ……」
(正直、遠くから引き金を引くだけなら、自分が傷つくリスクが格段に減るって期待してただけに、ショックがデカすぎる。っていうか、普通の高校生が射撃なんて経験したことあるわけないんだから、最初はみんな下手くそだろ、ちくしょう……!)
自分の不甲斐なさと、安全な戦い方なんて存在しないという現実に打ちひしがれていた、まさにその時だった。
ウーーーッ!!! ウーーーッ!!!
突如として、死体処理部隊の静かな区画に、鼓膜を激しく引き裂くような大音量のサイレンが鳴り響いた。
天井の警告灯が、禍々しい赤色に点滅を始める。
『——緊急警報、緊急警報。市街地にUMA出現。繰り返します、市街地にUMA出現』
スピーカーから流れる、機械的なアナウンス。
『全討伐部隊員は、速やかに第一ブリーフィングルームに集まってください』
けたたましい警報音が、研究室の壁をビリビリと震わせる。
さっきまでの、どこか緩やかだった空気が一瞬で吹き飛んだ。
ついに、現実の戦いが、俺の目の前にやってきたのだ。




