57.分裂と再生
五人一班となったこともあり、以前より格段に戦いやすくなった。
とはいえ、UMAも日に日に強くなっている。
早く討伐をしていかなければ、五人でも討伐は難しくなってくるだろう。
俺たちは、次のUMA討伐へ向けてブリーフィングルームに集まった。
三神隊長がモニターに映像を映して話す。
「次のUMAだが、今までにないタイプだ。木のような形をした植物のUMAだ。攻撃手段が予測できない、こいつは長月、山方、五十嵐、一ノ瀬、俺の五人で討伐する」
今回のUMAは、これまでのように攻撃手段を予測することができなかった。
(もしかしたら、今回のUMAは今までと何か違うかもしれない。気を付けよう)
俺は少し警戒して現場へと向かった。
市街地に着くと、植物UMAが街を破壊している姿を発見した。
「どんな能力があるかわからん、慎重に行くぞ」
三神隊長がそう言うと、山方小隊長が対抗するように言った。
「そんな甘いこと言ってたら、敵のペースでやられちまうぞ三神!」
言うや否や、山方小隊長は植物UMAに突っ込んでいった。
(山方さん、三神隊長の指示を待たずに突っ込むなんて)
山方小隊長は、多少の犠牲はあっても早くUMAを討伐しようと考えていることは知っている。
対して三神隊長は、最小限の犠牲で討伐するために敵の情報を集めてから討伐に移る。
どちらが犠牲を最小限に抑えて戦えたかは結果が出るまでは分からない。
どちらが正しいかなんて断言できない。
しかし、最近のUMAは強くなっている。
(いくら何でも一人で突っ込むのは無茶だ)
「まったく、相変わらず無茶する奴だ」
長月さんが山方小隊長に続いてUMAへと向かっていった。
「五十嵐、お前は敵の攻撃を防ぐんだ。一ノ瀬は敵に攻撃をして隙を作れ」
「了解」
『山方、隙ができたら捕縛だ。長月、敵の攻撃を受け流して捕縛が完了したら両断しろ』
『おぅ!』
『了解』
三神隊長は俺たちに指示を出した後、UMAへと突っ込んでいった二人にも無線で指示を出した。
三神隊長は後ろで戦闘の様子をうかがっている。
俺は斧槍を再現してUMAへと突っ込んだ。
長月さんが攻撃をいなしている。山方小隊長も鎖で敵の攻撃を弾きながら攻撃を繰り出している。
「てめぇにゃ負けねぇぜ、長月!」
「勝ち負けなんてないだろ、山方」
「うるせぇ」
激しい攻撃が続く。
植物UMAは太い枝のような腕を振るいながら、小さく生えている枝を槍のように伸ばして鋭く突くように攻撃をしてくる。
「……意外と厄介だな」
「あぁ、振ってきた腕からさらに枝を伸ばしてくる二段構えの攻撃をしてきやがる。それに、腕が二本だけじゃねぇのがきちぃ」
UMAのところまで追いつき、俺は斧槍で突きを繰り出した。
(敵の隙を作るなら素早く連続で繰り出せる突き主体で攻めるか)
斧槍で連続突きをするが、UMAは複数の腕のような太い枝で攻撃の軌道をずらす。
さらに、こちらの突きを受け流しながら、細い枝を伸ばして反撃してくる。
(受けながら攻撃してくる!?)
その攻撃を長月さんがすべて弾く。
「守りは私に任せて、一ノ瀬は攻撃に専念しろ」
「はい!」
五十嵐さんが叩きつけるように大剣を振る。
複数の腕のような枝で大剣の軌道をずらした。そしてそのまま細い枝が鋭く伸びて五十嵐さんを襲う。
「ぐうぉっ!」
しかし、植物UMAが攻撃に腕の枝を割いた分、その隙に俺は斧槍で突きを叩き込む。
長月さんが植物UMAの攻撃を防いでくれているおかげで、俺は安全に攻撃することができた。
そして、植物UMAに隙ができた。
ガシイィッ!
「捕らえたぜ!」
山方小隊長の鎖が植物UMAを捕縛した。
そして長月さんがそのタイミングを逃すことなく、植物UMAを一刀両断した。
ズバッ!
ドサッ
植物UMAの胴体が真っ二つとなり地面に倒れた。
「あっけなかったな」
山方小隊長が鎖の捕縛を解いたその時だった。
細い枝を鋭く伸ばして山方小隊長の腹部を貫いた。
「がはっ」
予想外の事態に全員の反応が遅れた。
長月さんが刀を振るが、植物UMAの枝が伸びて攻撃を止める。
植物UMAの地面に落ちた上半身から、下半身が生えていく。
「どうなってやがる!?」
さらに、捕縛を解かれた下半身からは上半身が再生していた。
「再生……している!?」
俺は目の前で起きたことを理解できずにいた。
「下がれ山方!五十嵐、手を貸せ!」
長月さんが声を荒げて言った。
「は、はい!」
五十嵐さんは突然の出来事に呆然としていた。
俺は腹を刺された山方さんを連れて距離をとった。
「すまねぇ、油断しちまった」
「いえ、あんなの仕方ないですよ。まさか再生するなんて」
「いや、再生だけじゃねぇ。こちら山方、三神、野郎を真っ二つにしたら、二つになった体が再生して二体に増えやがった。どうする?」
『再生能力は確実にあるな。抑制弾を使うしかない。これで目標の再生能力を打ち消す。問題は二体に分裂したことの方だ。斬れば斬るほど増えてさらに再生するとなれば、攻撃は逆効果だ』
いつもなら落ち着いている三神隊長の声に、俺はわずかな焦りを感じた。
(攻撃をして斬られればその分だけ増える!?一体どう攻略すればいいんだ)
『だが、再生しなければ分裂したところで体は元には戻らん。抑制弾で再生能力を失わせてから討伐する。それまでは不用意に攻撃するな』
長月さんが一体、五十嵐さんがもう一体の攻撃を防いでいる。
(とても一人では抑えきれない相手だ、加勢しなくちゃ。でも……)
山方小隊長をこのまま放っておくことに躊躇っていた。
「一ノ瀬、俺らも加勢するぞ」
「でも山方さん、その体で――」
山方小隊長は俺の言葉を遮って続けた。
「お前もわかってるはずだ、一人で抑えられる相手じゃねぇことは!俺のことは気にするな。尻拭いは……自分でやる」
そう言って山方小隊長は俺を軽く突き飛ばして、UMAへと向かっていった。
(相当ダメージがあるはずなのに……山方さんが無茶せず済むように、ここは俺が頑張らないと!)
俺は山方小隊長の後を追ってUMAへと向かった。
『俺が抑制弾を撃ち込む、まずは一体の動きを止めて打ち込む。効き目が出るまでは数分かかる。その間にもう一体にも抑制弾を撃ち込むぞ』
三神隊長が後ろからUMAへ向かって距離を詰めながら指示を出す。
三神隊長の手には、以前、全員に配られたリボルバーが握られていた。
「長月!片方は俺らに任せろ、どけ!」
そう言うと、山方小隊長は鎖を放った。
「任せるぞ!」
長月さんはすぐに五十嵐さんへ攻撃を続けるもう一体の植物UMAに攻撃を仕掛ける。
長月さんは、分裂されないように刀の峰で攻撃していた。
俺は斧槍で牽制するように横に薙ぎ払った。
「バカ野郎!下手に斬りつけて分裂したらどうする!」
山方小隊長が声を荒げて言った。
「す、すいません!」
俺は斧槍を消して、代わりに山方小隊長と同じように鎖を再現した。
「お前、鎖も使えるのか」
「そんなにまだ扱えないですが、一応」
「よし、てきとうでいい。攻撃の手を緩めるな、ひたすら攻撃しろ。俺が捕縛する」
「了解」
三神隊長が合流する距離まで来た。
右手にはリボルバーを、左手にはダガーを逆手で握っていた。
普段使っている片手剣は、今は不要だから納刀しているようだ。
「いいところに来たぜ三神、今からこいつを捕縛する。捕縛したらそいつを撃ち込め」
「了解だ」
俺は使い慣れない鎖でひたすら攻撃した。
植物UMAは攻撃をすべて弾いている。
しかし、山方小隊長も攻撃を仕掛ける。
徐々に対応しきれなくなっていく植物UMAへ、三神隊長が斬るのではなくダガーで刺しに行く。
(斬ったら分裂してしまうけど刺す場合は分裂できないか)
俺はハッとしたが、今やるべきことは捕縛だ。
三神隊長の攻撃で植物UMAに大きな隙ができた。
「捕らえたっ」
山方小隊長が植物UMAの体を鎖で捕縛した。
体の自由を失った植物UMAへ三神隊長がリボルバーを構える。
「抑えておけ」
そう言って三神隊長は素早く引き金を引いた。
ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!
弾丸を五発連射した。
弾丸はそれぞれ右肩、左肩、右膝、左膝、頭部のあたりへと命中した。
(すごい!連射ですべてバラバラに分散する位置に撃った。だけどなんでばらけさせたんだ?)
「これで一番効率よく、効き目が体全体に出るはずだ」
三神隊長はリボルバーを右太もものホルスターへと仕舞い、背負っている鞘から片手剣を抜刀した。
(そうか、体全体に効果が早く届くようにばらけた位置を狙ったのか)
捕縛して身動きが取れないものの、植物UMAの枝が伸びて山方小隊長を貫こうと狙ってくる。
その枝を、三神隊長がダガーと片手剣で弾くようにして受ける。
「一ノ瀬、お前も鎖でこいつの体を縛れ。俺一人じゃもう持たねぇ」
俺はすぐに鎖を体に巻き付けて捕縛した。
植物UMAの体を縛り付けて抑え込むが、凄まじい力で鎖を振り払おうとしてくる。
「ぐっ、ダメだ、抑えきれない」
植物UMAは太い腕のような枝を徐々に広げていき伸ばしてくる。
鎖の縛りが次第に弱まっていく、そして。
ドゴッ!
「ぐわっ」
俺は植物UMAの腕によるパンチのような攻撃を直撃して後方へ吹っ飛んだ。
そして、俺の鎖の捕縛がなくなりさらに自由を得た植物UMAは、そのまま山方小隊長にも攻撃した。
「うぐぅっ」
ズドンッ!
山方小隊長も吹き飛ばされてしまった。
三神隊長が一人で植物UMAの攻撃を防ぐ。
(まずい、一人じゃ対応できない。腕の数に枝の数、手数多すぎる)
しかし、鎖で捕縛し続けて俺の手には力が入らなかった。
さらに重い一撃を直撃して体にも力が入らない。
(くそっ、援護に行けない……三神隊長)
俺はアスファルトの上で、ただ三神隊長を見ることしかできなかった。




