51.真二の想い
ガイアへ帰還した後、俺は自分の右腕を見つめる。
(さっきの戦いで再現した長月さんの刀。武器も同じ、動きも真似した。それなのに、長月さんのようには戦えなかった)
長月さんは言っていた。
技や技術というのは、想いが形となったもの。それを継承するということは、想いを継承すること。
だったら――。
俺は、真二のことをもっと知る必要がある。
「真二」
「ん?」
武器を仕舞いに行こうと、斧槍を背負い直していた真二が振り向く。
「俺、真二の斧槍を使えるようになりたい」
「俺の斧槍を?」
「ああ」
俺は真二を見る。
「真二、どうして斧槍を使うのか。なんで強くなろうと思ったのか。教えてほしい」
「……」
「真二ならこの辺ちゃんとしてそうだし」
「なんだよ、それ」
真二が苦笑する。
俺も少し笑った。
「何より、真二なら俺に全部話してくれると思ってる」
「……」
真二は一瞬だけ目を丸くした。
それから、いつものように俺の目を見て頷いた。
「もちろんだよ、タクマ」
真二は背負っていた斧槍へ手を伸ばす。
「斧槍を使う理由は、前に一緒に武器を決めるときに話したから、ある程度知ってると思うけどな」
「ああ。でも、改めて聞きたい」
「そうだな……」
真二は斧槍を手に取った。
「俺は刺突武器のほうが隙が少ないからいいと思ってるんだ」
「隙が少ない?」
「ああ。自分の身は自分で守れるようにならないとな。兄貴がよくいってただろ?」
「なるほど……」
「それに斧槍なら斬撃もできる。鉤爪もついてるから、相手に突き刺して動きを止めたりもできる」
真二が斧槍を軽く回す。
「いろんな状況に対応できるんだ。使いこなせれば、斧槍はかなり便利だと思うぞ」
俺は斧槍を見る。
(そういうことだったのか。ただ強そうだから選んだわけじゃない。ただ扱いやすいから選んだわけでもない。自分がどう戦うのか、仲間とどう戦うのか。そのために必要なものとして、真二は斧槍を選んだんだ)
「じゃあ……強くなろうと思った理由は?」
「それも、タクマなら分かってるんじゃないか?」
「……真一さん?」
「ああ」
真二は笑った。
けれど、その笑顔の奥に、ほんの少しだけ寂しさが見えた。
「俺、昔は兄貴に守られてばっかりだったんだ」
俺は黙って聞いた。
「だから、兄貴と肩を並べて、一緒に戦えるくらい強くなりたかった」
「……」
「兄貴はいつも俺より前にいたからな。俺が追いついて、一緒に戦えるようになりたかったんだ」
真二は少しだけ空を見上げた。
「その兄貴は、もういないけど……」
声がほんの少しだけ沈む。
それでも真二は、すぐに俺の目を見ていった。
「兄貴から、俺より強くなれって言われちまったからな!」
真二は笑う。
「兄貴より強くなってみせるぜ、俺は!」
「……真二」
「だからさ」
真二は斧槍を肩に担いだ。
「俺はまだ強くならなきゃいけないんだ」
俺はその言葉を聞きながら、真一さんのことを思い出していた。
(真二は真一さんを忘れたわけじゃない。悲しみが消えたわけでもない。兄を失った痛みを抱えたまま、それでも兄から託された言葉を胸に、前を向いている。それが、真二なんだ)
「……ありがとう、真二」
「ん?」
「話してくれて」
俺は自分の右腕を見る。
「俺も真二に負けないくらい強くなるよ」
「……ああ!」
真二が笑った。
「一緒に強くなるぞ、タクマ!」
「うん!」
俺も笑い返した。
真二が斧槍に込めた想いを、真二が強くなろうとした理由を、俺はこの日、初めてちゃんと知った。
俺は斧槍を使いこなすために、真二に頼んだ。
「真二、斧槍の使い方を俺に教えてくれよ」
「おっ?久々に訓練するか、タクマ」
「うん、最初のころのように俺に稽古つけてくれ」
俺は真二の指導で斧槍の使い方を教わった。
数日真二と特訓したおかげで、斧槍の扱いは、以前使った鎖や斧とは比べものにならないくらい上達した。
ただ真二の形を真似するのではなく、真二がこの武器に何を求めたのかを考えながら振った。
(真二が斧槍に求めていたのは、隙の少なさと状況への対応力だ。なら、真二と同じ動きをする必要はない。俺自身が、その二つを意識して使えばいい)
そして、俺なりに斧槍の使い方を考えてみた。
(状況に合わせて使い方を変える、俺の戦い方に合わせて斧槍の使い方を変える。俺の武器はパイルバンカーだ、撃ち込むためには間合いを詰める必要がある)
隙の少ない斧槍で中距離戦をして、隙を作ったら間合いを詰める。
俺は斧槍を使って、パイルバンカーの攻撃へと繋げる戦い方を意識した。




