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45.成長するUMA



 訓練場で俺は、右腕で真一さんの大鎌を再現できないか試してみた。

 はじめは全然再現できなかった。そもそも、どうやって大鎌を作ればいいのかわからなかった。


 大鎌を意識してもダメ、右腕に意識を集中してもダメだった。


(サソリ型UMAと戦うとき、大鎌を手に持っていた。あの時俺はいったい何を考えていた?)


 いくらやってもうまくいかなかった俺は、大鎌を手にしていた時に何を考えていたのかを思い返した。


(あの時は真一さんに力を貸してくださいって思ってた。もしかしたら、鎌じゃなくて真一さんか)


 俺は真一さんのことを考えた。真一さんの想いを、教わったことを思い返した。


 しかし、俺の手に大鎌は現れなかった。


(真一さんを思い出せば使えると思ったけど、わからない。どうすればあの時みたいに再現できるのか)


 俺はあの時を再現できるように何度も、真一さんから最後に託された想いを、教わったことを反芻した。


 だが、何度試しても成果は出なかった。

 「想い」だけでは足りないのかもしれない。


 しかし、何が足りないのかは分からなかった。




 そして、気づいたら1日が終わっていた。


(もうこんな時間か、また明日にしよう)


 俺は数日これを繰り返した。しかし、成果は得られなかった。




 三神隊長が全討伐部隊員をブリーフィングルームに招集した。


「今後のUMA討伐について話す」


 サソリ型が人工的に作ったUMAたちは、眷属化が解かれたことで狂暴化し、本来の強さを取り戻した。そして、多くは洞窟内で討伐したが、それでもかなりの数のUMAが街に逃げ出した。


 それらの討伐をしていかなければならないと、三神隊長から話があった。


 みんな真一さんの死から立ち直って、そろそろメンタル的にも戦えるようになっただろうという判断で、この話をしたようだ。UMA細胞は感情によって同化が進んでしまう恐れがある。俺が悲しみに飲まれて暴走したように。


 だから一刻も早く討伐したいが、犠牲が出ないように三神隊長もしばらく時を待ったのだろう。


 三神隊長がUMAたちが暴れている様子をモニターに映す。

 すでにあちこちでUMAが暴れているようだ。


 俺たちは遅れを取り戻すようにUMA討伐を開始する。


「見ての通り、あちこちでUMAが暴れている。リスクは高いが早く事態を収拾するために複数班に分かれて討伐する。長月、真二、十条の長月班と山方、如月、一ノ瀬の山方班と桜木、清乃女、五十嵐の桜木班に分かれて行う」


 UMA討伐を3班に分かれ、三神隊長の指示で現場へと向かう。



 飛空船内で山方隊長が俺と如月さんに話す。


「基本的な戦術だが、俺が隙を作る。可能なら拘束すっから、そこをお前ら二人でトドメ刺せ」


 山方小隊長が指示を出した。


「了解」


(この人のことだから、戦場で柔軟に対応して戦うだろう。俺もパイルバンカーだけに頼らず、この右腕の拳でも戦う)


 俺はUMA化した自分の右腕を見つめた。



 そして飛空船でしばらく移動し、暴れているUMAを発見した。対象はカマキリUMA。


「こちら山方、カマキリUMAを発見。これより戦闘に入る」


『了解。鋭い鎌が武器だな、カマキリは素早いぞ、気をつけろ』


「おぅ、言われなくても」


 如月さんは少し離れたところに位置取りし、前方に山方小隊長が立ち、中間地点に俺は構えた。


「見るからに危険な鎌って感じだな。だが、俺の鎖を断ち切ることはできねーぜ、虫けら野郎」


 山方小隊長は鎖を回転させるようにして振る。


 そして素早くカマキリUMAに向けて放った。


 カマキリUMAはこれを素早く鎌で弾き落とす。


 そこを如月さんが狙撃した。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 しかし、素早く跳んで避けた。


 俺は着地点を狙うように走って間合いを詰める。


 カマキリUMAはこちらをしっかり目視しているようだった。


 山方小隊長は俺と対角線になって、カマキリUMAを間に挟むように位置取りをしていた。


(すごい。打合せしていたわけじゃないのに、カマキリUMAを挟み撃ちするポジションにいる)


 山方小隊長は鎖で中距離から素早くカマキリUMAを攻撃する。


 素早い身のこなしでこれを回避しているが、攻撃の手数を緩めない。


 カマキリUMAが山方小隊長のほうを対処している間に俺は懐まで距離を詰めた。


(これなら完璧に決まる。さっきの速さで跳んでも間に合わない。いける!)


 俺はカマキリUMAの懐に入り、下から腹を突き上げるようにアッパーをしてパイルバンカーを撃ち込んだ。


 ドッガアアァァァァーーーンッッ!!!


 パイルバンカーは完全に決まった。カマキリUMAの体が大きく揺れる。


 そしてその隙を如月さんは見逃さなかった。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! 


 アンチマテリアルライフルが全弾命中した。



 ドズウゥゥゥーーーンッ!


 カマキリUMAは崩れ落ちた。


(最初のころと違ってかなり連携が取れている実感がある。多分俺に合わせて動いてくれている山方さんがすごいんだろう。どう動くかあらかじめ話し合ったわけじゃないのに、本当にすごいな)


「動かなくなったな、三神に報告するか」


 山方小隊長はUMAが動かなくなったことを確認して、三神隊長に報告する。


『こちら山方、カマキリUMAを討伐した』


『了解。余裕ならそのまま他のUMAの討伐に移ってもらいたい、いけるか?』


『あぁ、問題ねぇ。全く苦戦しなかったからな』


 そう言うと山方小隊長は無線を切り、次の現場へと向かおうとした。


 しかしその時だった。


 パキ……パキパキ……


 何かがひび割れていくような音がした。


 全員がさっき倒したカマキリUMAの方を見た。


 カマキリUMAは自分の背中を破るようにして中から出てきた。


「脱皮か!?」


 山方小隊長が距離をとった。


 背中から出てきたカマキリUMAは一回り体が大きくなっていた。


「こいつ、成長している!?」


 筋肉も明らかに発達している。


『こちら山方。わりぃ三神、カマキリUMAが生きていた。しかも脱皮してさらに成長して強力になっている可能性が出た。苦戦するかもしれねぇ』


『了解。もし成長しているようなら手ごわいぞ、奴に成長する隙を与えるな』


『あぁ、だが安心しろ。必ず倒す』


『ああ、信じている』


 二人の通信が終わった。


 カマキリUMAはこちらを襲うことはせず、じっとこちらを見ている。


(観察でもしているのか?それとも警戒している?)


 脱皮してどんな能力を獲得したかもわからない。迂闊に攻めるわけにもいかず、膠着状態が続いた。


「野郎、脱皮したはいいが特に襲ってくる気配がねぇな。だったらもう一度こっちから攻めるぞ」


 山方小隊長が鎖を振り回す。


 先の戦闘と同じように、山方小隊長が隙を作るために鎖で攻撃を仕掛ける。


 カマキリUMAは素早く回避する。俺も間合いを詰めて攻撃を仕掛けに行く。


 しかし、鎌の間合いに入ると素早く鎌で攻撃を仕掛けてきた。


 俺は屈んでかわし、さらに間合いを詰める。


 だが、もう一方の鎌で追撃を仕掛けてくる。


 俺はジャンプしてかわし、カマキリUMAにパイルバンカーを撃ち込む構えをした。


 しかし、カマキリUMAは再度鎌で攻撃し、俺を拘束した。


「ぐっ、速い」


 俺を捉えて動きが止まったところを如月さんが狙撃する。


 すると、カマキリUMAの鎌から脱皮するように鎌が飛び出した。

 そして如月さんの弾丸をはじいた。


 カマキリUMAの前足の鎌が肘のような関節部分で2つに分かれていた。

 そしてそれが二本、鎌が全部で四本になっていた。


「やべぇ!」


 山方小隊長が鎖で片方の鎌を拘束して封じる。

 俺はそのおかげで鎌による拘束が緩み脱出できた。


(体の表面が滑らかで少し艶があって輝いていたが、今は体色が濃くなり、表面もごつごつとしている。まさか、硬化している!?)


 俺は間近で見て、鎌に直接触れたことで直感した。


「山方さん!こいつ脱皮した時より硬化しています!」


「何?だとしたら、脱皮で成長してしばらくしたら硬化して、どんどん強くなるってことじゃねーか。早めに片を付けねーとまずい!」


 山方小隊長の声には余裕が消えていた。



 一気に戦場に緊張が走った。



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