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35.黒幕の捜索



 俺はさっそく左腕用の外骨格フレームを取り付けて、両腕にパイルバンカーを身に着けた。これで左右バランスの悪さは改善されて、バランスは以前よりも取りやすくなった。推進機構を使った時のバランスのとり方も今までと変わってくるため、今まで通りバランスをとる訓練を続けた。


 フレームを追加したことで重くなったため進む距離も変わり、どのくらい進むのか感覚を覚えながらバランスをとる訓練をした。左腕用のスピードローダーも取り付けることにした。


 合同訓練場で一人で訓練をしているといつも通り山方小隊長がやってきた。


「お前左腕にもつけたのか」


「はい、これで多少はバランスとりやすくなりました」


「あぁ、派手に吹っ飛んではすっ転んでたからなー。で?実戦で使えそうなのか?あの噴射機能は」


「まだ、バランスを取るのも難しくてダメそうです」


「そうか。だったら使うのは奥の手、最終手段にしておけ。それ以外に解決方法がないとき以外は使おうとするな。扱いきれない武器ってのは自分にも危険を及ぼす」


「了解です」


 今までずっと俺が練習している姿を見ていたからだろう。たまにしかうまくいかない様子を見てアドバイスをくれた。


 そのまましばらく練習をしていると、真一さんと真二くんがやってきた。


「おっ!タクマ、左腕にもパイルバンカーつけたのか」


 興味津々な様子で俺のもとへ駆け寄ってきた。


「うん、これで左腕でも攻撃できるし盾にもなる。それに、問題だった左右バランスの悪さも改善できたし、だいぶ戦いやすくなるんじゃないかな」


「両腕に着けてだいぶゴツイ見た目になったな一ノ瀬」


 ゆっくりと歩いて近づいてきた真一さんが声をかける。


「ちょっと不格好ですけど、重さは問題ないですし、左右バランスの悪さがなくなったことで、むしろ動きやすいですよ」


「そういえば、お前最近ずっとここで練習してるらしいな」


「はい」


 少し真一さんが黙ってこちらを見つめる。何度か同じような状況を体験したが、今までのような冷たい鋭さは感じられなかった。


「あんまり気負いすぎんなよ。お前が好きでやってるならいいが」


 真一さんから心配をされた。


「一ノ瀬、どれだけ成長したか少し見てやる」


 真一さんが構える。俺は真一さんと模擬戦をした。左右バランスが改善されて動きやすくなった。右腕でパイルバンカーを撃ち込んだ隙を、左腕のフレームでガードすることでカバーできた。オーバーヒートしないように連続撃ちはできなかったが、今は左腕で攻撃ができるため攻め手を緩めずに戦える。


(左腕にパイルバンカーを装着しただけでここまで戦いやすくなるとは思わなかった。これなら打ち込んだ後のクールタイムは気にしなくて済みそうだ)


 左右のバランスは格段によくなった。しかし、それでもパイルバンカーを自力で命中させる難しさは変わらない。連携で命中させることを念頭に置いたほうがいいと思った。


「だいぶ動きよくなったな。一ノ瀬、ずいぶん努力したな」


(真一さんが俺の努力を認めてくれた⁉)


「真二、お前のほうが一ノ瀬より前から訓練してるんだ。もっといい動きできるんだろうな」


 真一さんは真二くんを試すように、少し挑発的に言った。


「もちろん!見せてやるぜ、兄貴!」


 真一さんと真二くんの模擬戦が始まった。結果は真一さんの勝利だった。


「やっぱつえぇー。まだ一本とれないか」


「そんな簡単に負けてやるほど、俺は甘くねーぞ真二」


 しかし、真一さんはどこか嬉しそうな表情をしていた。


「せっかくだ。今日は二人まとめて鍛えてやる。模擬戦始めるぞ!」


 真一さんは自分の訓練ついでに、俺と真二くんの指導をしてくれることになった。俺と真二くんで模擬戦を始め、真一さんが指摘をする。


「きつくても動きとめるな!攻撃の手を緩めるな!攻めながらも敵の反撃を警戒しろ!敵の隙を見逃すな!」


 真一さんの厳しい指導が続く。しばらく模擬戦を行い休憩に入った。


「兄貴ー、厳しいぜー」


 真二くんが音を上げる。


「あめーぞ真二。強くなるには努力が必要だ。強くなりたきゃ、今まで以上に努力するしかねー」


「はぁはぁ、しんどいー」


 俺も音を上げた。


「同じくらいの実力の奴と高め合えるのはいいことだ。俺からしたらうらやましいぜ。実力が離れてると練習にならねーからな」


(真一さんほど強い人でも、そんな悩みがあるのか)


「真一さんにはいないんですか?実力の近い人が」


「あぁ、五十嵐のおっさんは守りはかてぇが攻めがいまいちでよ。清乃女にはまるで攻撃が当たらねー。九十九は後方支援寄りでタイマン向きじゃねーし。十条はそもそも言葉通り話にならねー。隊長たちは強くて歯が立たねー」


 もしかしたら十条さんが同じくらいの実力なのかもしれないけど、十条さんは性格的に難しいようだ。俺は真二くんと訓練できるから恵まれているのかもしれない。


「だったら俺が兄貴に追いついてやるぜ!」


 真一さんは少しぽかんとしたような表情で真二くんを見た。


「........ふっ、期待してるぜ真二」


 静かにそう言った。


「一ノ瀬、お前はタイマンにこだわるな。今のまま積み重ねていけば強くなれる」


 真一さんが俺にアドバイスしてくれた。そして俺たちはまた訓練を再開した。しばらく訓練を続けていると、昨日も聞いたあのサイレンが鳴りだした。




ウーーーッ!!! ウーーーッ!!!




『——緊急警報、緊急警報。戦場跡にUMA出現。繰り返します、戦場跡にUMA出現』




 スピーカーからアナウンスが流れた。




『全討伐部隊員は、速やかにブリーフィングルームに集まってください』



(また戦場跡、最近多くないか?)


「呼び出しか、今日はここまでだ。また今度続きをやるぞ」


 唐突に訓練の終わりを告げたアナウンスとサイレンが止み、俺たちはブリーフィングルームへと向かった。俺は昨日感じた以上の胸騒ぎを抑え込みながら、ブリーフィングルームへと急いだ。


「兄貴、昨日も戦場跡にUMAが出たよな。最近何かおかしくねー?」


「そうだな、何かが起こりそうな......いや、すでに起きているような気がするな」


 俺だけじゃなく真一さんも真二くんも最近のUMA発生を不審に思っているようだ。そうこうする間にブリーフィングルームへと到着し、全員が揃ったところで三神隊長がモニターに発見映像を映した。


「発見UMAは熊UMAだ。場所は戦場跡。UMAを討伐したら総員再度ブリーフィングルームへ集まってくれ。」


(もしかして、この不可解なUMA発生現象について何か話すのかな?)


「では、出撃メンバーを発表する。真一、真二、一ノ瀬、桜木、清乃女、五十嵐。以上だ」


 ひとまず考えることは後回しにして、昨日と同じようにまた戦場跡に向かった。熊UMAを発見して討伐にあたる。


「清乃女、かく乱。五十嵐、隙を作れ。十和田兄弟、両腕を封じろ。アタシが奴の腕を落とす。一ノ瀬、奴が逃げたら撃ち込みな」


 桜木さんが素早く作戦を立てる。そしてすぐさま清乃女さんが熊UMAに突っ込んでいく。清乃女さんに鋭い爪を立てながら腕を振るう。腕を振った隙をついて五十嵐さんが攻撃。熊UMAはこの攻撃をかわしたが、そこを左右から真一さんと真二くんが攻撃を仕掛ける。



ザクッ! ザクッ!



 両腕に大鎌と斧槍が突き刺さる。そこへ、桜木さんが正面から突っ込んで熊UMAの腕を一本切り落とす。さらに、切り上げるようにしてもう一本の腕を切り飛ばした。


 熊UMAはたまらず後方へと後ずさるが、指示通り後方付近に待ち構えていた俺がパイルバンカーを撃ち込む。




ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!




 熊UMAの体の表面は体毛が固く、致命傷には至らなかった。熊UMAは悲痛な叫び声をあげながら、一矢報いるように俺に襲い掛かってきた。両腕を失ったため、鋭い牙をむき出しにしてかみついてきた。


 しかし、俺はフレームで防ぎながら払った。そして、横に素早く回り込み、さっき撃ち込んだところへ今度は左腕でもう一発パイルバンカーを撃ち込む。


(これで終わりだ!くらえー!)




ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!




 もう一撃受けた熊UMAは、そのままパイルバンカーを撃ち込まれた衝撃で倒れこみ動かなくなった。


「討伐完了、これより帰還する」


 桜木さんが三神隊長に報告を終えて、俺たちはガイアへと帰還した。


(だいぶ動きやすくなったし、両腕で攻撃も守りもできるようになって戦いやすくなったな)


 俺は両腕パイルバンカーでの戦闘にしっくりくる感覚を覚えた。






 ガイアへと帰還して俺たちはブリーフィングルームへ再度集まった。その中には、普段は見ない影浦さんの姿があった。


「集まったな。では今後の作戦を説明する前に、まず影浦さんの結果報告を聞いてくれ」


 三神隊長が影浦さんを呼んだみたいだ。影浦さんが前に出て話す。


「実は昨日三神隊長から、ある調査を依頼されていました。調査内容は、戦場跡地に発生したUMAの細胞を調べてほしいというもので。結論から言うと、狼・トカゲ・ゴリラの三体のUMAから、共通するDNA配列を確認しました」


 昨日三神隊長がブリーフィングルームにいなかったのは、影浦さんに討伐したUMAのDNAを調べてほしいと依頼していたからのようだ。そして、影浦さんが話を続ける。


「しかし、まるで違う生物のため、普通なら一致することなんてまずありません。しかも、一致したDNAというのが、人間由来のDNAでした。つまり、討伐したこの三体に関しては、元々人間だったという可能性が極めて高いことがわかりました」


 影浦さんから恐ろしい内容を聞かされた。討伐したあの三体のUMAは元々人間だったようだ。今まで討伐していたUMAすべてが元々人間だったのではという考えがよぎった。すると、影浦さんからの報告が終わり、三神隊長が前に出る。


「影浦さんからの報告結果からみて、この三体のUMAは人間であった可能性が高い。そして出現場所についてなんだが、ホワイトボードを見てくれ」


 三神隊長があらかじめ準備していたであろう地図が張り付けられていた。そして、討伐してきたUMAの写真が発見場所に張り付けられており、その発見日時が地図に書き込まれていた。


「過去に討伐したUMAの発見場所と日時についてだ。まず戦場跡で討伐した三体を除くと、発見日時は一週間くらいは離れている。UMAがどう誕生しているかは知らないが、UMAが発生してから発見されるまで数日くらいのタイムラグがあると考えられる。それを考えると、戦場跡で発見されたUMAは連日発見されていて明らかに異常だ。しかも、この異常は戦場跡でのみ起きている」


 三神隊長はここまで説明して一息ついてから話す。


「自然発生で戦場跡にUMAが連日発生したとは考えにくい。戦場跡周辺で何者かが介入し、意図的にUMAを誕生させている」


 俺は驚いた。UMAを生み出している奴がいて、そいつが戦場跡近辺にいるようだ。確かに最近のUMA発生は明らかにおかしかった。発生頻度があがり戦場跡で何度も発見された。


(でもUMAを作るやつがいるなんて一体だれがどうやって)


「そしてこいつは十中八九UMAだ。UMAを作った者が人なら、作ったUMAに殺されているだろう。しかし、連日UMAが発見されているということは、こいつは生きている。作ったUMAよりも強いUMAだということだ。」


(戦場跡で戦ったUMAに知性を感じなかったのは、そいつが作ったUMAだったからなのかもしれない)


 戦場跡で戦った時の違和感の正体を掴んだような気がした。


「このUMAは今までのUMAと明らかに行動が違う。今までのUMAは破壊衝動に駆られて町を破壊し、人々を虐殺することが目的だった。だがこいつは自分で直接暴れることはせず、UMAを作って代わりに暴れさせようとしている。我々のUMA探知システムに引っかからないということも考えると、かなり慎重に行動している。おそらくシステムに引っかかるようなドジは踏まないだろう」


(このUMAは今までの人型のUMAと同じで知能があるタイプか。しかも手下のUMAを作っているということはかなり知能犯だ。最悪の場合かなりの手下を作って大きな組織になっているかもしれない)


 俺は悪い方へと考えてしまう。慎重に行動しているこのUMAが、手下が簡単に見つかるような指示を出さないだろう。連日の発見は意図していないものだと俺は思った。


「このUMAが動くときは勝利を確信した時だ。今動かないということは、勝利を確信できる要素が揃っていないということ。俺たちが動くなら今しかない。これから全員で戦場跡へ向かい、UMAのアジトがないか三班に分かれて捜索する」


 三神の指示で俺たちは三班に分かれた。長月さん率いる俺と真一さんと真二くんの長月班。三神隊長率いる山方小隊長と五十嵐さんと十条さんの三神班。桜木さん率いる清乃女さんと如月さんと九十九さんの桜木班。この三班に分かれて飛空船に乗り、戦場跡へ向かった。



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