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33.特訓の成果



 長月さんとの模擬戦を思い返しながら、俺は狼UMAに攻撃を仕掛けた。狼型は動きが素早く、直線的な攻撃では到底当てることができないと悟った。


「奴の体はそこまで大きくない。俺と真二で隙を作る、坊主はパイルバンカーを撃ち込め!」


 五十嵐さんが先陣を切って、大剣を連続で振るう。


「タクマ、任せたぞ!」


 真二くんは大振りな攻撃はせず、突きを連続で素早く繰り出す。


 俺も敵の隙を作るためにただ後方で構えているだけではなく、自らフレームで殴りにいった。


 狼UMAは素早いとは言っても走るのが速く、反応速度自体は並外れて速いわけではなかった。


 五十嵐さんの連続水平斬りを何度もかわすが、真二くんの素早い突きまでは回避しきれず、槍をかすめている。


(これならやれる!)


 俺はパイルバンカーを狼UMAに放った。しかし、大きく踏み込んで振り抜く動作を見て、狼UMAは大きく後方に飛び退き攻撃をかわされてしまった。



ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!!



 凄まじい爆発が空で霧散した。反動を地面へ流すために踏ん張る必要があり、一瞬だがこの数秒間は身動きが取れない。


「真二、カバーだ!」


 五十嵐さんが真二くんに指示を出す。


「もち!」


 五十嵐さんの指示が出たと同時に、すでに真二くんは飛び退いた狼UMAへと斬撃を繰り出していた。


 しかし、狼UMAは身を翻してかわした。五十嵐さんも追撃をしに突っ込むが、狼UMAは真二くんに飛びかかり爪による攻撃をお見舞いした。


 さらに、真二くんの体を足場にして五十嵐さんにも飛びつき、再び爪による斬撃を繰り出した。


「グワッ」


「グヌゥッ」


 狼UMAの攻撃を受けながらも、二人は攻撃の手を止めなかった。


「奴は四つん這いで姿勢が低い。足を狙うように水平に攻撃をして奴にジャンプさせるぞ!真二、隙をつくれ!」


 五十嵐さんが次の作戦を立てて、足を狙ってジャンプさせることにした。真二くんはまたも素早い突きを繰り出して、敵の隙を作る。


「うおぉぉぉぉぉーーっっ!!当たりやがれー!」


 さっきの突きよりもさらにスピードを上げて突きを繰り出す。


 狼UMAは飛び退いて回避し始めた。


「いいぞ!あとは奴に大きくジャンプさせる!そしたら坊主!逃げ場のない空中で決めろ!」


「はい!」


 隙を作るため俺も五十嵐さんも真二くんと共に攻撃を仕掛ける。狼UMAが徐々に回避しきれなくなり飛び退く頻度が増えた。


 それをわかってか、真二くんは素早い突きから斬撃に繋げて大きく踏み込み、薙ぎ払うように斧で斬り払った。


 狼UMAは後方に飛び退いたが、五十嵐さんがすでに着地点に水平斬りを繰り出していた。


 狼UMAは飛び退いた勢いを利用し、そのまま前方へ飛び掛かるように大きく跳躍した。


(キタ!空中で逃げ場はない!ここだ!!)


「今だ坊主!!」


「決めろタクマ!!」


 俺は地面を大きく蹴り、狼UMAへと向かって飛んだ。そして、パイルバンカーを食らわせた。



ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!!



 直撃した。狼UMAは腹に突き刺さって大きな穴を作り、後方に大きく吹き飛んだ。


 しかし、俺も空中で放ったため踏ん張ることはできず、後方へと吹き飛んだ。


(今奴は大ダメージを受けて怯んでる、トドメを刺してくれ!)


 俺は爆発の反動で吹き飛んでいて、言葉にすることができなかったが、二人が吹っ飛んだ後の狼UMAへと向かっていくのが見えた。


「これで終わりだー!!」


「くらえーー!!」


 五十嵐さんと真二くんの叫ぶ声が聞こえてくる。トドメをさせたのだろうか。俺は受け身を取って転がりながら勢いを殺し、すぐに立ち上がり二人の元へと駆け寄った。


 すると二人は、振り下ろした武器をゆっくりと持ち上げた後納刀した。


(決着がついた!?)


 二人の元へと到着して、狼UMAが動かなくなっていることを確認した。


 俺たちは三人で狼UMAを討伐できたのだ。長月さんとの合同訓練の成果が出たのだろうか、俺は戦闘の興奮がまだ収まらなかった。


(長月さんの言葉通り、戦いながら連携を組み立てることができた)


 そんな俺を落ち着かせるかのように長月さんが声をかけた。


「見事だった。よくやったな三人とも、信じていたぞ」


 気配もなく、気づいたらすぐ後ろまで長月さんが来ていた。しかし、その表情は初めて長月さんを見た時と違い、ニッコリとはにかむ笑顔だった。


「五十嵐、お前は普段あまり自分で考えて戦うことをしないが、どう攻めるべきか考え指示を出していたな。良いことだ」


「長月さん」


 五十嵐さんは褒められたことが相当嬉しかったのか、目をうるうると輝かせていた。


「真二、一撃一撃しっかり腰を入れて繰り出していたな。一撃一撃をちゃんと意識できていて良かったぞ」


「やったぜー!」


 真二くんも素直に褒められたことを喜んでいた。


「一ノ瀬、自分からも隙作りをして隙ができたらパイルバンカーを狙いにいく判断をしていたな。一発目は決まらなかったが素早い判断で二発目に繋げられたな」


「やった」


 俺は小さく声を漏らした。ちゃんと成果が出て勝利に繋がったと実感できた。


「何より全員がその場その場で作戦を練り直し、一人一人がどうすれば良いか考えて連携を組み立てていたな」


 長月さんが俺たちの訓練の成果をベタ褒めしてくれて嬉しかった。しかし、甘い言葉では終わらなかった。


「だが、まだ粗が目立つ。敵の隙を作る前に、お前たち自身隙が多い。攻撃する時も敵の反撃を想定しながら繰り出せ。また明日から特訓だ、いいな!」


 今よりもさらに厳しい訓練が待ち受けていそうな長月さんの口ぶりに、俺たち三人は勝利の余韻を失い辛い現実を突きつけられる。


 しかし、長月さんが褒めてくれたのも事実だ。確実に成長できている。


(あとは練度を上げていくことに集中だ)


 見事三人だけで狼UMAの討伐を終えて、飛空船に乗りガイアへと帰還した。






 帰還後、真二くんが俺を呼び止めるようにして声をかけた。


「なぁタクマ!俺まだ三人で勝てた時の気持ちが収まらなくてさ、一緒に飯でも食いながら勝利に酔いしれようぜっ!なぁなぁ」


(真二くんは本当に素直だな。俺もその気持ちはわかる。三人だけで勝った時めちゃくちゃ気持ちよかった)


「もちろん!行こ行こっ!」


「五十嵐さんも行くよね!?」


「おっ!?飯か!よーし、俺たちの勝利を祝って盛大に祝勝会しようぜっ!」


 五十嵐さんもノリノリのようだ。俺もノリノリだった。もちろん真二くんも。


 俺たちは意気揚々と食堂へ向かった。


「いやーそれにしても、三人で勝てちまうとはな!俺たちちゃんと強くなってるんだな!」


 ガハハと笑いながら話す五十嵐さん。自分で考えて戦うのは苦手と言っていたが、今回は見事に五十嵐さんの指示で討伐できた。


「自分じゃなかなか気づきにくいのかもなー。でも、戦闘中に限界突破した気もするなー俺。めちゃくちゃ速く突きの連打をした時、腕がおかしくなるんじゃないかと思ったぜー」


 真二くんは勝利と成長にめちゃくちゃ酔いしれているようだ。


「うん。自分でも気づかないうちに強くなってたんだね。俺いつもみんなが作ってくれた隙を突いて攻撃してたから、あんまり強くなった実感わかなかったけど、今回はすごい実感できたよ」


「そうだぜタクマ。隙を作りながら隙を見て大きく攻め込む。これって戦いにおいてはかなり基本的なことかもしれないけど、それをちゃんとできるようにするのって難しいことだって、戦ってみてよくわかったぜ」


「特に格上の長月さんとかが相手じゃ、基本をしっかりやれてないと本当に当たる気もしないからな」


 こうして俺たちは成長を自慢しながらも、次の成長のためのモチベーションへと繋げた。


(もっと基本を徹底して、意識せずともできるようにするんだ、長月さんが言っていたように)


 明日からまた厳しい訓練を耐えるために、自室に戻った後早めに就寝した。



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