30.戦士たちの休息
俺はシャワー室を出た。すると、シャワー室前に桜木班のメンバーがいた。
「おや、タクマくん!いいところに〜。今からご飯でもどうかなって話してたんだー。タクマくんもどう?」
如月さんが食事に誘ってくれた。せっかくだし一緒に行くことにした。
(早く強くなるために訓練ばっかりで、一緒に食事なんてしてこなかったもんな)
「はい、行きます」
「よろしいー、では如月先生に付いてきたまえ諸君」
食堂に着き、各々好きな料理を取ってきて席に着いた。
「いただきます」
(今まで討伐後に、ゆっくり食事なんてなかなかできなかったな)
今回桜木さんの作戦でみんなほとんど無傷で討伐できた。こんなことは初めてだった。
如月さんはものすごい量を取ってきた。勢いよく食べ進めていく。
「それにしても、流石八重ちゃんだね。めちゃくちゃ楽勝で討伐しちゃったね」
「如月、アンタは食うか喋るかどっちかにしな、まったく」
「えへへー、いいじゃんか〜」
「それにしても、本当に一方的な展開でしたね。ぼくなんて罠張っただけですが」
「アンタのワイヤーがなかったら、奴と近接戦で決着つけなきゃいけなかったから、アタシとしては大助かりだよ。自信持ちな」
「せやねぇ。九十九はんのおかげで、うちも無理して戦わんで済んどります」
俺はここで思っていた疑問をぶつけた。
「清乃女さん、ほとんど敵の攻撃を躱してましたけど、何かコツみたいなものってあるんですか?」
「コツ?うーん、うちが気ぃつけとるんは、相手の重心移動と目線。相手がどう動こうとしとるんか、どこを狙うとるんかを、そこから見極めとります」
「あの戦闘中ずっとそうやってかわしてたんですか!?」
「まぁ、相手がうちより遅かったさかい、かわせとったっちゅうんもあります」
「一ノ瀬くんも十分すごいよ。ゼロ距離まで間合い詰めて戦ってるし。ぼくなんて、怖くてできないからワイヤーで戦ってるだけなんだ」
「みんな戦場で戦ってるだけで十分偉いよー。ねー八重ちゃん!」
「そうだな。それよりアンタ、全部食べたのあの量!?凄まじいねその胃袋」
「えへへー、まだまだ食べるよ〜」
「えっ?お腹壊さないでくださいよ、如月さん」
「九十九はん、いつものことや」
如月さんはさらに料理を取りに行った。
「一ノ瀬、アンタも食べれる時にちゃんと食べな。如月ほどとは言わないが。九十九も少食だしな」
「あはは。ぼくはこれでも、ちゃんと食べてるんですよ?」
九十九さんは割と少食なようだ。そして、如月さんが大量の料理を手に戻ってきた。
食事が進み話が盛り上がっていると、山方班の面々が合流した。
「なんだ、先に来てやがったか桜木班」
「タクマ!そっちの敵はどんなだったんだ?話聞かせろよー」
「桜木班も食事か。なら一緒してもいいか?」
「もちろんだよー、大和くん。ささ、みんなで食べよー」
相変わらず如月さんは明るい。そして誰にでも下の名前で話すようだ。
そして山方班も同席して、食事をしながら俺と真二くんは互いの班の活躍を語り合った。
「桜木さんの作戦で、ほとんどみんな無傷でワニ型UMAを倒したんだ。俺は最後にトドメを刺すだけだったよ」
「どう戦ったんだ?」
「如月さんの狙撃で敵の注意を引いてから、清乃女さんが奇襲したんだ。如月さんの狙撃があるから、敵は行動範囲が制限されて一方的だったよ」
「さすが桜木さんだな!俺は自分で考えるのが苦手だから尊敬するぜ、がはははは」
五十嵐さんが豪快に笑いながら言う。
「まぁ、アタシにかかればこんなもんよ」
桜木さんもやたら自慢げに言う。しかし、作戦通りにハマり、楽勝してしまったのは事実。
「え?もしかして、それでもう倒しちまったのか?」
「ううん、その後はぼくの罠に追い込むために桜木さんも参戦して、清乃女さんとニ対一で攻めて罠まで誘導したんだ」
九十九さんが補足する。
「そんで動けなくなったところをタクマがドカンッ!か。マジスゲーな」
「スゲーのはアタシだよ真二!讃えるならアタシを讃えな」
一人席を立ってアピールする桜木さん。
「あはは、うん、まぁ、そんな感じ。真二の方はどうだったの?再生する敵だったけど、どうやってガイアまで運んだの?」
「俺たちもほぼ無傷で済んだけど、かなり手こずったなー」
「おい、こら、無視すんなガキども!アタシを讃えろー」
「へっ、一番ガキクセェ見た目してる奴が、よく言うぜ」
ニヤニヤしながら山方小隊長が桜木さんを小馬鹿する。
「なんだとテメー、一回でもアタシに勝ってから言いなっ!」
二人のやり取りを流しながら真二くんが話を続けた。
「でさー、山方さんの鎖に捕まっても千切れて脱出するし、どれだけ切り刻んでも倒せなかったから、無敵かこいつ!?って思ったよ」
桜木さんを無視して山方小隊長が話に入ってきた。
「俺が鎖で締め付けたら、その勢いのまま千切れやがった。そんで千切れたと思ったら、すぐに再生しやがった」
桜木さんも落ち着いたのか話に加わる。
「まぁ流石のアタシも、そんな奴相手じゃどうしようもないね。アンタらは運が悪かったよ」
「三神の奴、まさかUMAを持ち帰って研究しようとするなんてな。思いつきもしなかったぜ」
「それがアイツの良いところだよ。現場の人間はどうしたって、その場で解決する手段を模索するからね、良くも悪くも」
桜木さんの言い方は意味深な感じがした。
「どれだけ倒しても再生して復活するなんて、俺だったらテンパっちゃうな」
「安心しろタクマ、俺はテンパった。五十嵐さんもテンパってた」
「おい真二、その話はやめろってお前」
五十嵐さんは意外とお茶目なところがある。
「何回か攻撃を当てたんだけど再生されてさ。捕縛して粉々に切り刻むことにしたんだけど、捕縛しても逃げられちゃってさー。そっから追っかけっこが始まって、なんとか細切れにすることはできたんだけど、それでも再生しちゃって、ほんと大変だったよ」
「どうやって飛空船に乗せたの?再生してまた暴れると思うけど」
「もう一度細切れにした後、再生して体が元に戻っていく度に何度も切り裂いて、再生がずっと終わらないようにしたんだ。再生中は動かなかったから、その間に移送した」
「そっか、あの時三神隊長が言ってた作戦だね。じゃあ、飛空船でずっと監視してたんだ」
「まあねー、飛空船の中で暴れられたらやばいからな」
(あの再生するUMAをガイアまで運ぼうなんて、よく思いついたなー三神隊長)
「おかわりしてこよーっと」
如月さんが大量に食べたにも関わらず、おかわりをしに席を立った。
「如月さん爆食だな」
呆れた様子で眺める真二くんと五十嵐さん。
「アンタ、まだ食う気か!?」
「如月の奴は相変わらずだな。ところで桜木、そっちの敵はどうだったんだ?手強かったか?」
「ん?まぁ、そこそこだったね。硬いだけが取り柄のワニだったよ」
「その様子じゃ楽勝だったみてーだな」
「そっちも敵自体は大したことなかったんだろ?」
「あぁ、だが最後に討伐したと思って油断した。甘かったぜ」
山方小隊長と桜木さんで互いの反省会のようなものを開いていた。
そして、大量の料理を持って如月さんが戻ってきた。
「如月さん、いくらなんでも食いすぎじゃないか?」
「食べれる時に食べておくべし!だよー、大和くん」
「それに比べて、九十九や坊主はあんまり食べねーな。如月さんは食べ過ぎだが、もう少し食べた方がいいぞー!」
五十嵐さんは笑顔で、九十九さんの肩をバンバンと叩きながら言った。
今気付いたが、十条さんだけ一人離れた席で食事をしている。
「あの人は前からあないな人やよ。あんまり人と話したがらへんし、仲ようしようともせえへん。必要なことしか話さへんのや」
十条さんの方を見る俺に気付いて、清乃女さんが教えてくれた。
(あの人はなんで誰とも仲良くしようとしないんだろう)
そんな考えを引きずりながら食事を終えた。各々自室へと戻っていき、俺も自室へと戻った。
(俺がいくら考えてもしょうがないか)
十条さんのことは気になるが、今は俺にできることを集中することにした。
(明日からまた推進機構を使った特訓をしよう。あのスピードに慣れて体勢を崩さないように練習して、どのくらい間合いが詰まるのか距離感を掴まないと)
俺は気持ちを切り替えて明日に備えて寝ることにした。




