29.無限再生するUMA
俺は山方班に合流するため飛空船に乗って移動している間、山方班の無線のやり取りを聞いていた。
『こちら山方、敵は失った部位を再生する。再生が間に合わねーように細切れにすんぞ!』
どうやら敵は再生能力持ちらしい。
(そのせいで地下まで逃げられてしまったのだろうか)
『俺が捕縛する。十条はバックアップ!五十嵐、お前の一撃で奴の隙を作れ!その間に俺が捕縛、あとは十和田兄弟で微塵切りだ!』
山方小隊長の立てた作戦はうまくはまったようだ。
『よし、捕縛したぜ!今だ!』
山方小隊長が捕縛し、真一さんと真二くんがどうやらトドメを刺したようだ。
『よーし、粉々になったな。流石にここまでやりゃー再生しねーだろ。三神、討伐完了だ』
(どうやら俺たちの出番はなさそうだ)
『了解。帰還してくれ。桜木班も帰還してくれ』
『了解。進路変更、これより帰還する』
『俺たちに援護なんて、はなっから必要ねーんだよ』
山方小隊長は桜木班の合流が気に食わないような口ぶりだった。
俺たちは帰還命令を受けて進路をガイアへと変更して帰還することとなった。しかし——
『危ない!』
十条さんの普段の冷たい声とは違う、どこか焦りを含んだような声が響いた。
ザシュッ!
ブシャーッ!
ドチャッ!
何かジェル状のような物が落ちた、そんな音が聞こえてきた。
『何!?まさか、あの状態から再生したのか!?』
山方小隊長の作戦では、目標を細切れにすることで、再生が間に合わずに討伐できる見込みだった。しかし、実際には細切れになったところから再生してしまったようだ。
(細切れにしても再生して復活するなんて、いったいどうやって倒せば良いんだ!?)
『山方!そいつは別個体ではなく、本当に再生して活動を再開したのか!?』
今回三神隊長は、UMAが2箇所同時発生したため、二つの戦場の状況を把握して作戦を立てるためにガイアに残っている。戦場で起きていることを俺たち同様目にしていないのだ。
『あぁ、完全に同一個体が再生して復活しやがった!さっきまで散らばって細切れ肉がなくなってやがる。それに別の奴が焦ってきた気配はなかった!』
『なら、そいつが再生したで間違いなさそうだな。だとしたら再生するための核となる部分が必要なはずだ。それらしきものはないか?』
『見た目はスライムみたいで全部同じ見た目してやがる。形もこいつの思い通りに変えられる、変幻自在だ。そのせいで俺の鎖の捕縛もすぐに抜け出しやがるし、斬撃も変形してかわしやがる。その上からっても再生ときたもんだ』
『核らしきものはなし、か・・・』
打つ手なしのように思われた。
『五十嵐の大剣で押し潰して塵にできないか?』
『やってみるが、相手は俺たちより大きいんだぜ?完全に押し潰して跡形もなく塵にするのは不可能だ。切り落とした部位をやるんならできるぜ』
『了解。それで構わない。それで奴の切り落とした箇所が再生するかどうか確認してくれ』
(細切れに斬っても倒せないなんて、いったいどうすれば倒せるんだ!?)
『今度は俺と十条で奴を攻撃する。隙ができたら十和田兄弟で斬って斬って斬りまくれ。五十嵐、お前はその剣で叩きつけた後粉々にすり潰せ』
そして、再度連携で目標を追い詰める。
『今だ!』
山方小隊長の合図で仕掛ける。目標の腕を切り落とし細かく刻んだ後、五十嵐さんの大剣で叩き潰した。
『作戦完了。奴の様子を確認するぞ』
少しの沈黙の後、残念な報せが届く。
『三神、ダメだ。奴の腕が再生した。細かく刻んでもすりつぶしても、奴の体が再生する』
『何をやっても再生するか・・・、現状我々に倒す手段はない』
『は!?諦めんのか三神!?』
(三神隊長が諦める!?そんな、何も打つ手がないのか!?)
無限に再生し続ける敵。これに対抗できる手段はガイアにはなかった。
『そいつをガイアで回収し、弱点がないか調べる!そいつを細切れにしたとき、そいつを討伐したと報告したな。すぐに再生して復活しなかったのか?』
『あぁ、すぐにはこっちを攻撃してこなかった』
『もし再生中は行動が制限されるなら、そいつを細切れにして、再生する本体を飛空船で運び、復活し切る前に何度も細切れにし続ければ、安全に運ばないか?』
三神隊長が再生する敵の仕組みを調べるため、捕獲して回収する手に出た。再生したら復活する前に倒して、また再生したら復活する前に倒す。これをずっと繰り返してガイアまで運ぼうと言うのだ。
(そんなに上手くいくのか?もし調べて何も分からなかったら、どうすれば良いんだ)
本当に打つ手が見つからなかった場合が頭によぎる。しかし、今は三神隊長を信じるしかない。
『了解。生き返らないように殺し続けろってことか。面白い、やってやるぜ!』
山方小隊長は再度討伐した。そしてそいつを飛空船まで運ぶ。
『こちら山方、討伐完了。これより目標を回収する』
『了解。飛空船内で戦闘になればまずい。心してくれ』
『あぁ、わかってる。再生が追いつかねぇように殺ろし続ける』
山方小隊長は細かく小さくなった目標を飛空船に運び、再生して大きくなり始めたら全員でまた細かくする作業をし続けてガイアまで運んだ。
そして、三神隊長の指示通り、なんとかガイアまで目標を運ぶことができた。
ガイアに到着後、肉体研究のために治療室に運ばれ、そこで医療部隊員による研究が進められることとなった。
「ご苦労。こいつのが体がどうなっているのかこれから医療部隊に詳しく確認してもらうが、彼らは武装していないため我々が殺し続けながらの研究になる」
(対処法が見つかるまでずっと殺し続けて研究するのだろうか)
俺は無限に再生する敵を前に、治療室の外からガラス越しに、様子を眺めることしかできなかった。
治療室内では、医療部隊の御剣隊長と立花副隊長の姿が見えた。御剣隊長は長月さんの治療のために、ここ最近ずっと対応していたみたいだ。
(御剣さんまで出張ってきたと言うことは、それだけこの敵が脅威ということか。それとも長月さんの体が良くなってきているのかな)
何もできない俺は、そんなことを考えることしかできなかった。
「こいつの再生活動、どの細胞からも行われている。そして、元々の自分の体の情報を、体全てが記憶しているんだ。どう破壊しても同じ形に再生しようとしている」
御剣さんが再生の様子からわかったことを報告していく。
「簡単に言えば、体全てが核になっている。全て破壊しない限り、元の体に再生し続ける」
(人よりでかいこの化け物の体を、全て破壊しない限り再生し続ける?しかも再生スピードも早いのにどうやって)
少しの肉片でも残っていれば、そこから猛スピードで再生する。細切れにしても、討伐報告をしている間に再生を終える早さだ。
「何か、それを可能にするための手段はないか?」
三神隊長が打つ手がなく御剣さんに案を求めている。俺はこんな姿の三神隊長を初めて見る。
「一つだけある。だが、どのくらい効くかは分からん。反応からしてこいつは、UMA細胞の活性化による再生現象だ。敵の攻撃をくらって傷ついても、スーツを着てしばらくしたら、傷がある程度治っているだろう?あれだ」
「その再生が異常に高く活発な個体、か。具体的に、どうすればいい?」
「スーツのUMA細胞の侵食同化を抑えるときに使っている抑制剤を使う。UMA細胞の活動を抑制させるための薬だ。これはスーツに使われているUMA細胞程度だから効き目があったが、これだけ大きな生物に対してどれだけの効き目が出るか分からんぞ三神」
御剣さんの口調からして、スーツに転用されたわずかなUMA細胞だから効き目があるが、大きな化け物のUMA細胞を抑制できるほどの効き目が出るか分からないとのことだ。
「だが、それ以外にできることもない。試す価値はある」
どうやら三神隊長は賭けに出るようだ。
「UMA細胞の抑制剤をありったけ用意しろ!目標に注入後、引き続き殺し続けて再生の様子を確認する。効果が出ていると判断できれば、大量注入後全員でこれを討伐する!」
突破口が見つかったかもしれない。全員での討伐となり、俺も治療室内に移動して準備した。パイルバンカーでは目標の体が弾け飛び再生されてしまうため、拳で叩き潰すことにした。
「隊長、抑制剤用意できました!いつでも注入可能です」
立花さんが抑制剤の準備を終えた。
「よし、では肉体の中心に打ち込め。再生時の細胞の活動を確認する。立花、注射を頼む」
「了解。・・・抑制剤注入完了しました」
抑制剤を打たれた箇所の様子を御剣さんが確認する。
「確かに、活動は他の細胞と比べて緩やかなものになった。・・・・・再生速度も遅い。三神、どうする?効き目はあるが、抑制剤の効果でどうにかできるかはわからんぞ」
「やってみるしかないな。今の俺たちには分からないことばかりで、答えを持たない状態だ。答えを模索し試行錯誤するしかあるまい」
「ふっ、わかった。では、ここに用意した分のありったけの抑制剤、全て打ち込むぞ!各員、抑制剤の注入作業に取りかかれ!ここにある注射器全て空になるまでだ!」
医療部隊員の人が大勢注射器を手に持ち注射し始めた。大きな箱いっぱいに入った注射器があっという間に減っていく。そして二つ目の箱も空になる。
「よし、完了だ!あとは頼んだぞ三神」
「各員、目標を塵も残さずに消し炭にするぞ!いいか!一片の細胞も残すな!」
全員で目標を破壊し続けた。飛び散らないように丁寧に肉体を潰していった。体を細かく切り刻み、拳で叩き潰す。
全員で肉片を徹底的に破壊した。そして一時間、再生は起こらなかった。
「やったか?」
三神隊長が静かに、しかし鋭い眼差しでどこかに肉片が残っていないかあたりを見回していた。
俺もみんなも同様に、この再生と破壊の終わらない悪夢から解放されるため、辺りをくまなく凝視しながら探したが、見当たらなかった。
本当に残さず消し去れたのか確認するため、治療室に待機した。そして、答えが出た。
「各員、ご苦労だった。どうやら一向に再生する肉体がない、討伐は完了したようだ」
全員の緊張の糸が切れてそこに大勢がへたり込んだ。俺もそのうちの一人だった。長い時間破壊と観察をして気を張っていたため、疲れが俺の体をドッ!と襲った。
(やった、討伐できた。今までで一番厄介な敵だった。倒しても倒せない敵、こんな奴がいるのか)
俺は長い戦いを終えて、シャワーを浴びて着替えることにした。




