28.二班同時出撃
全員がブリーフィングルームに到着した。そして、いつものように三神隊長が口を開く。
「UMAが2箇所に発生した。まずはこれを見てほしい」
モニターに映し出されたのはワニ型UMAだった。
「体は鱗で覆われている。強靭な顎がおそらく武器だろう。見てわかるが鋭い爪を有している。これを討伐するメンバーを発表する」
今回は2箇所に発生したUMAを2チームに分かれて討伐するようだ。
「桜木、如月、清乃女、九十九、一ノ瀬、以上だ」
「了解」
呼ばれたメンバーが出撃準備に移る。
俺はパイルバンカーを装着して広間に待機した。清乃女さんと九十九さんがすでに待機していた。そして、遅れて如月さんと桜木さんが合流する。
「よし、出撃する」
桜木さんが指揮を執り、俺たちは飛空船に乗り込んだ。桜木さんは双頭片刃斧を右手に持つ。そして、2ポイント式ガンスリングでショットガンを背中に固定していた。
(ショットガンまで使うのか)
かなり近接戦を意識した武器で、どんな戦い方をするのか気になった。合同訓練で銃火器を使う隊員は見たことがなかった。
UMA反応のあった地点に近づいてきた。その時、桜木さんが如月さんに指示を出した。
「如月、目標の地点までもう少しで到着する。お前は先に降下して狙撃地点に向かえ」
「りょうかーい」
徐々に飛空船の高度が落ちていき、如月さんが降下して行った。
「目標地点が近づいたらアタシらも降下する。市街地で隠れられる場所は多い。敵に気づかれないように接近して急襲するよ」
そして、目標地点がすぐそこまできたところで、俺たちは降下した。
「九十九、アンタはターゲットの進行方向約30メートル先に、ワイヤーで動きを封じる罠を張りな。バレないように気をつけなよ」
「了解です」
九十九さんは少し迂回するようにしてワニ型UMAに気づかれないように、指定の地点に罠を張るため移動を始めた。
「・・・・・コイツは知能が高いかもしれないね。如月、九十九、指定の地点に到着したら報告」
「了解」
しばらくワニ型UMAを観察する桜木さん。そして如月さんと九十九さんが指定の地点に到着した。
「よし。如月、そこからターゲットを狙撃しろ」
「はーい、そんじゃいきまーす」
——ダン!ダン!ダン!
如月さんはワニ型の頭、肩、足を狙撃した。
ガンッ! ガインッ! ガギィンッ!
「グアックゥ!」
確かにダメージは与えている。しかし、弾丸は貫通しなかった。体を守る鱗が弾丸の威力を殺したのだろう。
「狙撃だと!?」
ワニ型はダメージを受けたところから、どこから狙撃されているのか探っている様子だった。そして、また狙撃されないように建物の物陰に隠れるように移動した。
「狙撃の有効性を確認。知能も高いようだ。よし。九十九、もうコソコソ罠を張らなくていい。急いで罠を張れ」
「了解」
「如月、もし奴が物陰から出てきたら狙撃開始」
「りょうかーい」
「清乃女、奴の足首を攻撃して切り傷を可能な限り作れ」
「はいな」
清乃女さんは双剣を構えてワニ型を急襲する。ワニ型は回避できずに足を斬られた。
ギャリッギャリィンッ!
しかし、鱗が硬く表面に傷をつけるだけだった。
「いいぞ。奴の鱗を削ぎ、足首に切り傷をつけることを優先しろ」
清乃女さんは緩急のあるスピードで翻弄しながら攻撃を繰り出し、止まることなく流れるように攻撃と回避をする。
(模擬戦の時にも思ったけど、清乃女さんに全く攻撃が当たらない。なぜなんだろう)
ワニ型は鋭い爪と怪力で攻撃を仕掛けてくる清乃女さんを迎え撃つが、攻撃が一向に当たらず、足首を斬りつけられる的となっていた。
「よし、アタシも参戦する。各員引き続き頼む」
そう言うと、桜木さんは塀に登り高くジャンプしてワニ型に斧を振りかぶる。空中で何回も回転して遠心力を増した一撃をワニ型にお見舞いした。
ズドンッッ!!
ワニ型は両腕で防いだが、重い一撃を受けて地面が割れ、腕にも深く斧刃が食い込んだ。
ワニ型に大きな隙ができたため、清乃女さんはワニ型の足を通り過ぎると同時に、回転斬りで足首を斬りつけた後、追い打ちをかけるようにさらに複数回斬りつけた。
ワニ型が尻尾で清乃女さんを払うが、これもかわした。
「テメェらいきなり何だチクショウが!」
ワニ型が叫ぶが桜木さんの返答は言葉ではなく銃撃だった。
バアァンッ!
ガシャッ!
背中に固定していたショットガンの銃口をワニ型の顔へ向けて放った。撃った後ワニ型の腕に突き刺さった斧を引き抜くために両手で持ち、足でワニ型の腕を蹴って飛び退いた。
「グウゥゥ、クソがっ!」
桜木さんは回転しながら飛びかかり、双頭の斧がワニ型を襲う。ワニ型は回避するために後方へ飛び退いた。
桜木さんは着地後右手で斧を振り払い、すぐさまガンスリングを引き左手でショットガンを握り、ワニ型の顔へ向けて発射する。
バアァンッ!
ガシャッ!
咄嗟にワニ型は腕でガードする。それを見て、続けざまに今度は胴体にショットガンを放つ。
バアァンッ!
ガシャッ!
鱗で覆われており表面は硬いが、ショットガンのおかげで関節部分などのどうしても他より柔らかい部位に弾丸が命中する。
「グヌヌヌゥゥッッ!」
散弾を腹に受けてワニ型が一瞬怯んだ隙に、清乃女さんが足首を斬りつける。そして桜木さんが斧を振り回して顔面や腕、胴体などを斬りつける。
ワニ型はたまらず距離をとった。
『罠設置完了しました』
九十九さんから報告が入る。
『了解。清乃女、そっちはどう?』
『済んどります』
『よし。ターゲットを罠まで追い込むわよ』
桜木さんと清乃女さんがワニ型の前に立ちはだかる。二人でワニ型へ攻撃を仕掛けた。
桜木さんの一撃目の重い攻撃を回避するも、二つ目の斧頭による連続攻撃を回避しきれずに受ける。さらに清乃女さんの追撃を受ける。
「チッ、厄介な奴らだ」
ワニ型は後方へ飛び退き、さらに距離をとった。しかし、桜木さんが狙い通りに誘導した先は、九十九さんが罠を張った地点だった。その瞬間——
——『九十九、今だ!』
桜木さんが待ってましたと言わんばかりに合図を出した。
ピィンッ!
罠として張っていたワイヤーが、合図と共にワニ型の体をがんじがらめに縛りつけた。
「ガッ!ググググゥゥ……」
ワイヤーがワニ型の切り傷に食い込む。ワニ型は脱出しようと全身に力を入れる。
『一ノ瀬、パイルバンカーを奴の装甲が薄い首の根元に打ち込め』
「了解」
身を潜めていたが、ワニ型にパイルバンカーを撃つため、間合いを詰める。
ワニ型はさらに俺が登場したことで、全力を振り絞って罠から脱出しようとした。
その時——
ブチブチ!
ワニ型の足首から下が、ワイヤーで切り落とされた。
ドサッ!
ワニ型は、力で無理矢理ワイヤーの罠から脱出したが、力で強引に抜け出したことで、切り傷に食い込んでいたワイヤーにより足首が切断された。
足を失ったワニ型はその場に倒れ、身動きが取れずにいた。
(すごい。ここまで考えて、足首を執拗に攻撃するように指示を出していたのだろうか)
俺は言われた通り首の付け根めがけて、上からパイルバンカーを撃ち込んだ。
ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!!
首を曲げるために他より装甲が薄い首の付け根めがけてパイルが突き刺さった。
「よし。討伐完了だな。三神に報告するか。・・・『こちら桜木、ワニ型討伐完了』」
『了解。山方班、そっちの状況はどうだ?』
ワニ型を討伐したことで、無線の周波数を山方班に合わせた。
『こちら山方、目標が下水に逃げ込んだ。追跡する』
『了解。桜木班の討伐が完了した、援護に向かわせる』
『チッ、了解』
山方班と三神隊長の無線のやり取りが終わった。
「今舌打ちしやがったなアイツ!」
桜木さんが山方小隊長に怒る。清乃女さんがなだめてる間に飛空船が俺たちを回収しにきた。
飛空船は高度を落としてラダーを垂らす。俺たちは飛空船に戻り山方班の援護に向かった。
(山方小隊長が苦戦している相手、一体どんな相手なのだろうか)
俺は胸騒ぎを抑えながら、援護へと向かう。




