27.新たな技術の弱点
数日の安静期間を終えて、真一さんと真二くんが今日から合同訓練に復帰する。
久々に真二くんに会う気がする。最近個人訓練を一人でやっていたせいか、たった数日会っていないだけで久々な感じがした。
俺は二人に会いに治療室へ向かった。しばらく扉の前で待っていると、二人が治療室から出てきた。
「おっ!タクマ、久しぶりー!」
もうすっかり元気なようで安心した。あの時は二人とも倒れたまま、返事もなく起き上がらなかったから心配だった。
「もうすっかり元気みたいで良かったよ」
「治療中はガッツリ飯食えなかったら腹減ってるんだー。なぁ、今から飯いこうぜ!」
「うん、俺もずっと一人で特訓してたから腹減った。いこう」
「よっしゃ決まり!兄貴もそれで良いよな?」
「ん?あぁ、そうだな」
俺たちはそのまま食堂へと向かった。
「よーし、いただきまーす!」
真二くんはこれでもかと飯を食う。
「よく食べるね真二」
俺はその光景を前に驚いていた。
「一ノ瀬、お前も沢山食え。まだ成長期なんだからな」
戦闘以外で真一さんに気にかけてもらうことなんてなかったから、正直びっくりした。
「そうだぞタクマ、今がラストチャンスなんだから食べれる時に食べとけ!」
「流石に真二ほど食べられないよ」
しばらく食事を進め、真一さんが俺の近況を聞いてきた。
「一ノ瀬、最近どうだ訓練は?」
「連携もなんとか形になってきました」
「そうか」
「少し前に始めたばかりなんですけど、推進機構を使って間合いを詰め、パイルバンカーを撃ち込む特訓をしています」
「使いこなせてるか?」
「それが結構難しくて、まだまだ実戦で使えるレベルではないです」
「そうか、でも焦る必要はない」
真一さんは静かにそう言った。そして、それ以上は語らなかった。
「俺は先に戻る。しばらく動いてなかったせいで体が鈍ってるからな、準備運動でもしてくる」
真一さんは一足先に自室へと戻っていった。
「俺はまだ食い足りねーぜ!」
真二くんはまだ食べるようだ。だが、俺の腹はそろそろ限界だった。
「俺はもうお腹いっぱいだから、ちょっと部屋で休んでから訓練に行くよ」
そう言い残して自室へと戻った。
しばらく休んでから合同訓練場に移動した。
すでにみんな集まっていて、各々連携の訓練をしていた。俺も真一さんと真二くんとの連携訓練を開始した。
「だいぶ連携もスムーズにできるようになったな」
真一さんが連携の評価をしてくれた。
「一ノ瀬、お前、推進機構はもう模擬戦で試してみたか?」
「いえ、まだです」
「そうか。推進機構を使った戦いで何が大事なのか、実戦を通した方がわかりやすいだろう。」
真一さんは模擬戦で推進機構を使ってみろと俺に伝えた。正直まだ使いこなせていない俺には早いと思ったが、実戦によってわかることがあると言われ、模擬戦をすることになった。
そして模擬戦を開始することになった。相手は桜木さん、十条さん、九十九さんのチーム。
真一さんと真二くんの二人前衛で、俺は推進機構で距離を詰めるため、少し後方に下がった位置取りをした。
「それでは、始め!」
三神隊長の合図で模擬戦が始まった。真一さんと真二くんが前に出て攻撃を仕掛ける。
ギンッ! ガキンッ! ガンッ!
真一さんと十条さんが互角の戦いを繰り広げている。
真二くんは桜木さんの隙を作ろうと、槍による突きを繰り出す。しかし、桜木さんはこれを全て回避する。
だが、俺の攻撃を警戒してか、無闇に反撃をしてこない。
ブンッ!
真二くんが斧に切り替え、振りかぶった瞬間——
——ガチッ!
真二くんの体は固定されたように動きが止まった。武器がワイヤーに引っかかり動きが止まってしまったのだ。
「ナイスだ、九十九」
すかさず桜木さんが踏み込んで、真二くんに攻撃を仕掛ける。
「真二!」
真一さんがカバーに入ろうとするが、二人の間にはすでにワイヤーの壁が作られていた。
真二くんが後方に飛び退くが、回避は間に合わず桜木さんの攻撃を受ける。
ズンッ!
「グハッ」
薙ぎ払われて真二くんが横へ吹き飛ばされた。しかし、桜木さんが攻撃するために踏み込んだところを狙って、俺は推進機構を使い一気に間合いを詰めて突っ込んだ。
バシュゥゥゥッ!!
桜木さんとの間合いが一瞬で埋まった。桜木さんが驚いた表情でこちらを見る。
ゴォォォォォーーーッッ!!
桜木さんは薙ぎ払ったことで次の攻撃に移行できない。俺はパイルバンカーを撃ち込む間合いを見極める。
これで桜木さんに命中させられる。決まった!そう思っていた、しかし——
——ガンッ!
桜木さんは後方へ飛び退きながら、振り抜いた勢いを利用して空中で回転し、俺の前腕フレームを横から弾いた。
桜木さんの武器である双頭片刃斧には、片刃の裏側に打撃用の平らな金属面が設けられており、それで弾いたのだ。
そして、振るった斧の回転の勢いを止めることなく、もう片方の斧頭を振り回した。そして、その斧頭が俺の脇腹を襲う。
ズンッ!
「グハッ」
空中で片方の斧頭でフレームを逸らし、もう片方の斧頭で攻撃する。一度の振り抜きで二度の攻撃が繰り出され、俺はなす術なく吹き飛ばされたのだ。
「そこまで!」
模擬戦の決着がついた。
試合後、桜木さんが俺の元へやってくる。
「アンタ、その加速が隠し球?」
「はい、まだ使いこなせてはいないんですが」
「狙いは良かったわよ。すごい速かったし、アタシレベルじゃなきゃ対応できなかったかも」
なんだろう、ちょっと上から目線な人だ。しかし、これまで対峙してきて分かった。この人は強い。
「でも、スピードに頼ってコレ単体で攻めるのは危険よ。攻撃が直線だから、いくら速くても一度見られたらカウンターされるわ」
この推進機構の弱点を桜木さんが教えてくれた。
「それに、もし間合いを見誤ったら終わりよ」
確かにそうだ。届かなければ大きな隙を晒すだけ。近過ぎれば敵を通過してしまう。もし、パイルバンカーの発動タイミングが合わなければ、空振りで姿勢を崩すことになる。
(実戦投入するには、間合いを完璧に測れるようにならないとダメだ)
「ありがとうございます」
そしてまた毎日、俺は推進機構の訓練を一人黙々と続けた。
転ぶ回数は減った。推進後に姿勢も維持できるようになった。しかし、まだ間合いを見極められないでいた。
そして、推進機構を使いこなせないまま、出撃の時が来た。
ウーーーッ!!! ウーーーッ!!!
大音量のサイレンが鳴り響いた。
『——緊急警報、緊急警報。市街地にUMA出現。繰り返します。市街地にUMA出現』
『全討伐部隊員は、速やかにブリーフィングルームに集まってください』




