26.新たな技術
真一さんと真二くんはしばらく安静、五十嵐さんは治療を受けてしばらく入院するようだ。
推進機構があれば、遠くからでもパイルバンカーを当てに行ける。俺は推進機構をフレームに取り付けて練習を開始した。
どのくらいの勢いが出るのか、どのくらい進めるのか、これを把握しなければならない。
(五十嵐さんに大剣で投げ飛ばされた時くらい飛んで行ったら、個人訓練場じゃ狭いから合同訓練場を使わせてもらおうかな)
合同訓練以外で初めて合同訓練場に訪れたが、そこには十条さんと山方小隊長がいた。
十条さんは大鋸を蛇腹にして鞭のように振っていた。山方小隊長は鎖を身に纏いながら、二つの先端を鞭のように操っていた。
(ああやって振り回すとなると、個人訓練場じゃ広さが足りないのかな?)
かく言う俺も個人訓練場じゃ広さが足りないからここへ来たのだ。
(十条さんの武器大鋸で珍しいなと思ったけど、蛇腹にもなるんだな)
前に模擬戦で五十嵐さんの腕に巻き付いて動きを止めていたが、全体像は見えていなかった。俺は二人の邪魔にならないように、離れたところで練習する。
(よし。予備の噴射ガスを大量に積んだ箱も持ってきたし、たくさん練習するぞ!)
早速液体燃料ボンベを前腕フレームに装填した。
影浦さんに聞いたところ、ガス噴射を使うかどうかもUMA細胞で制御しているらしく、俺がガス噴射して間合いを詰めようと思えば起動するようだ。
(よし準備できた、広さも十分)
俺は姿勢を低くして構えた。そしてガス噴射システムが作動して、ガスが前腕フレームの右肘辺りから後方へと抜けていった。
バシュゥゥゥッ!!
俺の体は勢いよく前へと飛び出した。
ゴォォォォォーーーッッ!!
腕が一直線となり前腕と上腕のフレームが繋がる。上腕フレームの肩から後ろへ抜けていくようにガスが噴射されるようになった。
一瞬でガス噴射は終わったが、すでに10メートルは進んだだろう。俺は前のめりになり、右腕はまっすぐ伸び、足が置いて行かれて宙に浮き、地面と水平になって飛んでいた。
そして勢いそのままに地に落ちた。
ズザザザザザザザァァァァァァッッッッ!!
うつ伏せの状態で着地し、俺は地面と体との摩擦で止まった。その様子を見ていた山方小隊長が——
「ブッ、フハハハハハハッ!!」
吹き出すように爆笑した。
「ちょっと、笑わないでくださいよ!もう!」
俺はすぐに体を起こして言った。
「ハー、一ノ瀬。もっと体幹しっかり鍛えろ!地面と水平になって吹っ飛んでんじゃねーかっ、ブフッ!」
山方小隊長はよほど俺が水平に吹っ飛ぶ姿が面白かったのか、堪えきれずに思い出し笑いをする。
(最初の推進力で、腕が引っ張られるように真っ直ぐになって、勢いで前に押し出された。その勢いに負けて体勢を崩した。ここでなんとか体幹を崩さず持ち堪えれば、正面を向いたまま撃ち込めるはずだ)
もう一度俺は構え直す。
(よし、もう一回だ。今度は耐えてみせるぞ!)
ガス噴射システムが作動して、ガスが肘から後方へ向けて噴射された。
バシュゥゥゥッ!!
腕が真っ直ぐに伸びて俺の体は勢いよく前へと飛び出す。今回は状態を起こして勢いに耐える。
ゴォォォォォーーーッッ!!
しかし、足が置いて行かれて空中でブラブラと振られる。
慣性で前へと進むが、足が地に着きバタバタと慌ただしく交互に前へ出る。
しかし、前へ進む速さに追いつかず足がもつれて転んでしまった。
ズザザザザァァァァッッ!!
また同じ体勢で地面に着地してしまった。
「惜しいじゃねぇか。」
山方小隊長が俺に近づいてきた。
「だがよ、それ使って間合い詰めたらパイルバンカー使うんだろ?だったらそれ単体で練習してもしょうがねぇぜ。パイルバンカーを撃ち込む時の反動も込みで練習しねぇとな」
「そうか。確かに実戦での運用に合わせて練習しなきゃ意味ないですよね」
「まぁ、体幹がもたねぇんじゃ使いようもなかったから、無駄じゃあねぇがな」
(実戦で使うための機能なんだから、そうだよ。実戦での使い方に合わせてやる必要があった。全然気づかなかったな)
「ありがとうございます、やってみます」
「おぅ。」
それだけ言うと山方小隊長は元いたところへ戻っていった。
俺は敵にパイルバンカーを撃ち込みに行く時の体勢をとる。
(今までは地面を蹴って飛び出した後、右腕を突き出していた。地面を蹴って飛び出したタイミングでガス噴射を使ってみるか)
俺は強く踏ん張り思いっきり地面を蹴って前へ飛び出した。そしてここでガス噴射システムを起動。
バシュゥゥゥッ!!
俺は自分から腕を突き出すことなく、ガス噴射の勢いで腕が前へと突き出される。そして腕が一直線に伸びる。
(これは!いつも敵にパイルバンカーを撃ち込む時の姿勢だ)
そしてそのまま少しの間ガス噴射が続く。
ゴォォォォォーーーッッ!!
噴射が収まり慣性で前へ飛んでいる。前腕フレームと上腕フレームが一直線になりロックがかかり接続された。接続した後、俺は着地した後踏ん張る体勢をとり点火した。
ドッガアァァァァァーーーーンッッッ!!
慣性で前へ進む力が働いているため、パイルバンカーの反動に耐えるように踏ん張りすぎると、前のめりに転けてしまう。
俺は前に転けないように踏ん張ってしまったため、反動に耐えられずに体勢を崩した。体が反動で後ろへ吹っ飛ぶ。
ズザザザザァァァァッッ!!
今度は仰向けに倒れてしまった。遠くから山方小隊長の笑い声が聞こえてくるが、コツは掴めた。
(今の感じ、かなり良い感じだった。後は踏ん張って反動に耐えるタイミングさえわかれば!)
俺は山方小隊長に笑われながら、ひたすら練習した。
肘の辺りからガスが噴射するため、肘から先の向き次第であらぬ方向へと飛んでいってしまう。
そのため、肘から先は地面に水平に構えて、拳をターゲットに向ける。一日中練習してわかったことだ。
しかし、まだパイルバンカーを起動するタイミングは掴めなかった。
(まだ実戦投入は厳しいな。もっともっと練習しないと)
俺はそれから毎日、合同訓練場へ通い続けた。




