23.臨機応変の戦い
合同訓練で自分の役割と戦い方を学び実践できるようになってきた。そして、今日はメンバー変更することになった。
次に組んだのは山方小隊長と十条さんだった。山方小隊長がどういう人かはある程度知っているけど、十条さんがどういう人なのかはまだ知らなかった。
「十条さん、よろしくお願いします。一ノ瀬タクマって言います」
すると十条さんは冷たくあしらうように一言だけ言った。
「・・・よろしく」
そして、スタスタと歩いて行ってしまった。
(俺、距離とられてる?)
「あいつは人付き合い最悪だぜ」
山方小隊長がやってきた。
「山方さん、よろしくお願いします」
「おぅ。戦場では何が起きるかわからねぇ。その場で臨機応変に動くしかねぇ。それを今回は学べ」
メンバーチェンジを終えて、三神隊長が口を開いた。
「10分後に模擬戦を行う。各自、この10分で必要なことを済ませておけ」
(たった10分の即席チームで模擬戦!?連携なんて取れるの!?)
「なるほどな、だから俺んとこに一ノ瀬か」
(どういう意味なんだろう?)
「時間10分しかありませんけど、どうすればいいですか?」
「一ノ瀬、難しいことは考えるな。自分のできることを全力でやれ。今自分は何をすべきなのか、それだけ考えてりゃ後は勝手に結果が付いてくる」
それだけ言って山方小隊長は十条さんの元へ行ってしまった。
(何も連携について話もせず、連携の練習もしないの?)
俺はポカンとその場に突っ立っていた。
そして、山方小隊長と十条さんがやってくる。
「俺が道を作る。十条は足止め、一ノ瀬はトドメ。以上だ」
(嘘だろ!?単純すぎる、いくらなんでもこれだけで連携なんて無茶だ)
そんなこんなで、あっという間に時間は過ぎて模擬戦の時間となった。
(本当に打ち合わせあれだけなのか)
正直不安でいっぱいだったが、言われた通り自分のできることを全力でやることに集中した。
10分が経過して、三神隊長が号令を出す。
「山方班と十和田班で模擬戦を開始する。他は下がって見学だ」
山方小隊長率いる十条さんと俺の3人チーム対真一さん率いる五十嵐さんと九十九さんの3人チーム。
九十九さんのワイヤーは目視では見れない、結構厄介な相手。五十嵐さんはタンクをこなせる大剣使い。真一さんはリーチの長い大鎌で制圧力がある。
対して、こっちは十条さんが大鋸で五十嵐さんポジション。山方小隊長は鎖で九十九さんポジション。そして、俺が真一さんポジション。
(俺の方がリーチ短い分不利かもしれない)
そして両チームが向かい合う。相手は五十嵐さんが壁役、後ろに真一さん、後方支援で九十九さんが構えている。
対してこっちは
(前衛2人!?)
十条さんと山方小隊長の2人が前衛を務める。
「では、始め!」
三神隊長の号令で模擬戦が始まる。
九十九さんがワイヤーを伸ばそうとするが山方小隊長が素早くこれを阻止。回り込む様にして前へ出て九十九さんへ攻撃を仕掛ける。九十九さんの支援を妨害している。
五十嵐さんが山方小隊長の前へと出ようとするが、十条さんが大鋸による猛攻で動きを封じる。五十嵐さんは大剣によるガードで防戦一方となっている。
山方小隊長は九十九さんへの妨害をしながらチラチラと真一さんと五十嵐さんの様子を伺っている。
俺も真一さんが簡単に山方小隊長に攻撃できない様に、重心を落としていつでも突っ込める構えを取る。
「十条!そのまま五十嵐を抑えとけ!」
「了解」
山方小隊長はそこから九十九さんへの妨害を継続しつつ、真一さんへも攻撃を仕掛けた。
真一さんは鎖に捕縛されまいと、ガードせずに回避する。山方小隊長の攻撃は全て回避されてしまうが、徐々に五十嵐さんの方へ真一さんが寄っていく。
そして、真一さんが五十嵐さんに衝突しそうになる。咄嗟に真一さんはぶつからないように身をよじるが、そこに隙ができた。
(今だ!)
俺は体勢を崩したその瞬間を狙って一気に間合いを詰める。
五十嵐さんがそれに気づき、強引に力任せにパリィして十条さんを吹き飛ばす。そして、すぐさま大剣を俺と真一さんの間に差し込もうとする。
(まずい!攻撃を防がれる。パイルバンカーを撃った隙を突かれて負ける)
そう思った時
吹っ飛んでいる十条さんが空中で大鋸を振る。すると、刀身がしなって蛇腹の様に鋸が伸びた。そして、五十嵐さんの腕に絡みつき動きを封じた。
(これなら間に合う!いけぇ!)
ドガアァァァァンッッッ!!!
ジェル付きパイルが真一さんに命中した。
(やった、上手くいった。でも、何も作戦なんて立ててない。みんなその場で判断して動いていた)
「そこまで!」
三神隊長の合図で試合は終わった。
山方小隊長が試合を終えて相手のチームにアドバイスする。
「十和田、まだまだ甘ぇぞ。九十九、後方支援は守ることばかりが仕事じゃねぇ。五十嵐、攻撃は最大の防御だ。攻めることも守る方法の一つ、覚えておけ」
模擬戦を終えてこの時やっと気づいた。山方小隊長は戦場をよく見て、自分で戦場をコントロールしていたんだ。
「山方さん、ありがとうございます。」
「よくやった、一ノ瀬。逃げ道がなくなったところをちゃんと見極められたようだな」
山方小隊長はそう言うと、模擬戦を終えて見学側へと下がって行った。
「十条さん、ありがとうございます。最後五十嵐さんの動きを止めてくれたおかげで、決めきれました」
「別に・・・君のためじゃない。作戦通りやっただけ」
無愛想にそれだけ言って、十条さんもまた見学側へと去って行った。
(つ、冷たい。いつもあんな感じなのかな、十条さんは)
山方小隊長の、人付き合いは最悪だという言葉を思い出す。
俺も見学側に行き、次の十和田班vs桜木班の模擬戦を見学することにした。そして、山方小隊長に先の模擬戦について気になることを質問した。
「山方さん、さっきの戦い、最初からああなるように考えてたんですか?」
すると山方は
「いや。途中で変えた」
「え?」
「戦場は生き物だ。思い通りになるなら誰も苦労しねぇ。三神は最善の作戦を立てる。だが、戦場はその通りにはならねぇことの方が多い。だから俺たちはその場で考えて動くしかねぇ」
その時俺は、わずかに山方小隊長の思想を感じた。
「おい、そろそろ桜木班と十和田班の模擬戦が始まるぞ。よく見とけ」
「はい」
俺も、戦場でその都度最適な行動を考える必要があると、山方小隊長の話を聞いて思った。
今ならわかる。桜木班と以前模擬戦をした時、開始前から桜木さんはこちらの様子を観察していた。相手がどう仕掛けてくるのか、どう連携しようと考えているのか予測して、それを崩すような戦い方をして来た。
相手に合わせて、味方にどう攻めさせるか最適化して指示を出していたんだ。
「真二!行け!」
今回は真二くんが一番槍を務めて前に出る。五十嵐さんがそれを止める。
「清乃女!今!」
五十嵐さんが真二くんを相手にしている隙に、清乃女さんが持ち前のスピードで五十嵐さんをすり抜け、九十九さんを急襲する。九十九さんは近接戦闘ができないため、清乃女さんを止められない。
そこにすかさず真一さんが清乃女さんへ攻撃を仕掛ける。
「清乃女!回避!」
桜木さんが清乃女さんに指示を出すと共に、五十嵐さんへ突っ込む。
真一さんと共に九十九さんも応戦するが、清乃女さんは完全に回避に徹しており二人の猛攻を全て回避する。
桜木さんはここまで読んでいたのか、この間に真二くんと二人で五十嵐さんを突破する。
「囲むぞ!」
桜木さんと真二くんが真一さんを囲む。真一さんは清乃女さんと交戦していて2人に対応できない。九十九さんも清乃女さんに間合いを詰められ、自衛と反撃で精一杯になっていた。
五十嵐さんの壁を2人で突破し、清乃女さんの機動力を生かした目眩しで、3人で真一さんを囲い討ち取った。
桜木さんは上手く2人の長所を活かして、その場にあった動きを適宜指示している。そして自分も戦闘に加わり効果を最大限発揮している。
(三神隊長は敵を分析して最適な策を練って戦う。山方小隊長は足りない場所を埋めるように自分が動いて戦う。桜木さんはその場で味方の動きを最適化して戦う。同じ討伐部隊でも、戦い方がまるで違う。)
「次は俺達と桜木だな」
山方小隊長はかなり気合入っているようだ。
次の模擬戦の出番だと意気込んで立ったその時だった。
ウーーーッ!!! ウーーーッ!!!
大音量のサイレンが鳴り響いた。
『——緊急警報、緊急警報。湖畔山麓にUMA出現。繰り返します、湖畔山麓にUMA出現』
スピーカーから流れる、機械的なアナウンス。
『全討伐部隊員は、速やかにブリーフィングルームに集まってください』
「聞いての通りだ、模擬戦は中止!ブリーフィングルームへ急ぐぞ!」
三神隊長の指示で、全員でブリーフィングルームへと急いだ。




