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22.合同訓練始動



 扉を開けるとそこには三神隊長が立っていた。


「やぁ、一ノ瀬。覚えているか?今日から合同訓練だ」


「あっ!そう言えば・・・忘れてました」


「昨日出撃したばかりだからな、無理もない。それに、立花さんから話は聞いている。しばらくは安静にするように言われているようだな。一ノ瀬はまだ合同訓練の様子をちゃんと見たことがないだろ?今日は見学で参加してくれ」


「はい、わかりました」






 そして俺と三神隊長は地下深くの合同訓練場へと足を運んだ。


 どっしりと重い扉を隊長が開ける。


 真一さんと真二くんの姿はない。二人も俺と同じく、立花さんに安静を言い渡されているため、今日は不参加らしい。


「一ノ瀬、お前には前衛のポジションを担当してもらう。前衛は一番危険な役割だが、パイルバンカーは自分から当てに行くのは難しい武器だ。先陣は味方に任せて、味方との連携で相手の隙をついて攻撃することを意識するといい」


「了解」


 大型武器でガードしやすい五十嵐さんが最前衛で、その後ろから山方小隊長と九十九さんが攻撃を仕掛けるチーム。


 清乃女さんが最前衛で機動力を活かして攻撃をいなし、後ろから十条さんと桜木さんが攻撃を仕掛けるチーム。


(本当に十条さんは、あの大きな鋸みたいな武器を使うんだな。桜木さん変わった形の斧を使っていた。二人とも見たことのない武器だ……)


 桜木さんの斧は双頭斧だった。柄の両端には斧頭が備えられ、それぞれの刃は片刃で互い違いを向いている。


 俺はその時初めて桜木さんの姿を目にして驚いた。見た目は幼く小柄な体型。


(子供!?もしかして俺より年下なんじゃないか!?)


 俺は驚いて桜木さんを食い入るように見て気づいた。もしかして、桜木さんが指示を出しているのか。


 桜木さんのチームはそれぞれで突っ込んで攻撃するんじゃなく、チーム単位での自分の役割を持って攻撃している。桜木さんの指示に迷うことなく、即座に二人とも対応している。


(これが連携か、俺もここでみんなと連携訓練をやっていくのか!)


 早く連携訓練に参加したくてウズウズしていた。


「しばらくは安静だからな、立花さんから許可が出たら合同訓練開始だ」


「了解!」


「それと、影浦さんからの言伝だ。頼まれていた物ができたそうだから、受け取りに来て欲しいとさ」




 俺はすぐに影浦さんの元へと訪れた。どうやら予備弾薬携行機構と推進機構が完成したようだ。


「こちらが予備弾薬携行の為のベルトです。そして金具付き予備弾薬。こちらの金具をベルトにはめ込めば、ガッチリと固定できますよ」


(これで3発打ったらお終いというプレッシャーから解放されるぞ)


「そして、推進機構です。ただし!こちらはまだ使わない方がいい。今のパイルバンカーに慣れて、連携でも使いこなせるようになったと感じたら、まずは訓練で使い始めてください。推進力を制御するのは難しい上に、一度発火させて推進力を得たら、しばらく止まることができません。実戦ではまだ使わない方が良いです。」


 影浦さんは、推進機構の使用はパイルバンカーの扱いに慣れてから推進機構を使うように、と助言してくれた。


「ありがとうございます。まずは今のまま訓練していきます」


(改良したはいいけど、まだ俺には使いこなせないから、まず慣れろって事だよなー。よし!慣れたら推進機構使って練習するぞー!)


 新たな機能を手に入れたが、まずはこのパイルバンカーでの基本の戦い方をしっかり身につけることにした。







 そして、数日が経過して






「うん、もう体は大丈夫そうだね!これならもう訓練してよし!」


「はい!」


 無事立花さんからの許可を得ることができて、俺と真一さんと真二くんは今日から合同訓練に復帰することになった。


「一ノ瀬、お前の武器は一人で当てるのは難しい武器だ。だから、無理に一人で当てようとするな。味方と連携しろ」


 合同訓練場へ向かう途中、真一さんが俺にアドバイスしてくれた。そして、気づけば俺のことを『ガキ』と呼ばなくなっていた。


(あの時は戦場だったからそんなこと気にする余裕もなかったけど、真一さんが俺を認めてくれたのかな)


 俺はウキウキで合同訓練場の扉を開けた。討伐メンバーが揃ったところで、三神隊長から訓練開始の合図が出る。


 前回の編成でしばらく訓練をするみたいで、山方小隊長と九十九さんと五十嵐さんチーム、桜木さんと十条さんと清乃女さんチーム、そして真一さんと真二くんと俺のチームに分かれた。


 アリ型討伐で真一さんと真二くんとの連携は少しだけやったから、割とスムーズに連携が取れた。


「いいか一ノ瀬、お前のパイルバンカーは反動がデケェ。その分隙もデケェ。リーチが短いから間合いを詰めなきゃならねぇ。そこで外したら隙だらけで敵とゼロ距離だ。連携で確実に当てることを意識しろ」


 訓練で真一さんが俺のパイルバンカーで気をつけるべきところを教えてくれる。


「実際に経験した方が早いな」


 そう言って真一さんは三神隊長の元へと行った。


「では、実践形式で訓練を開始する。桜木班と十和田班で模擬戦開始、他の者は下がって見学だ」


(前衛は機動力の高い清乃女さんだ。後ろに十条さんと桜木さんが左右に控えている)


 訓練でパイルバンカーを直接打ち込むわけにもいかないので、超粘度の高いジェル物質をパイルの先端に取り付けて、直撃しても衝撃を吸収できる状態で模擬戦が始まった。


「いいか、俺と真二で隙を作る。一ノ瀬はその隙をついて攻撃だ」


「了解!」


 桜木さんが2人に何か指示を出している。


(向こうの指揮官は、どうやら桜木さんのようだ)


「では、始め!」


 合図と共に清乃女さんが突っ込んでくる。真一さんが応戦するが、清乃女さんは流れるようにこれを回避。


「十条!右!」


 桜木さんが鋭く十条さんに指示を出す。待ってましたと言わんばかりに、隙が生まれた真一さんに十条さんが攻撃を仕掛けるが、なんとかガードが間に合う。


 清乃女さんを真二くんがさらに迎え撃つが、清乃女さんはこれも回避。


(清乃女さんに攻撃が全く当たらない!?)


 ガードしている真一さんに追撃を仕掛けにいく桜木さん。


 俺はフレームを盾にして攻撃を防いだ。その時、桜木さんが隣に目配せするのが見えた。


(まずい、十条さんに何か指示を出したのか!?)


 応戦するべく俺は、そのまま真一さんに攻撃している十条さんへパイルバンカーを打ち込む。


 しかし、それを完全に見切られてしまう。

 フレームごと鋸で叩き落とされ、間合いを取られてしまった。


 俺は右腕が地面に叩きつけられた状態でパイルバンカーが起動し、ものすごい衝撃を寝転んだ状態で受けることになった。


 地に伏せたまま吹っ飛んで状況は2v3となってしまう。



 そして




「そこまで!」


 三神隊長が試合を止める。


「一ノ瀬、最後の攻撃はなかなか良かったぞ。だが、それは相手がすでに警戒していた一撃だったから通用しなかった。次はもっと連携によって相手の牙城を崩してから攻めるといい」


 こうして、俺の初めての模擬戦は黒星で幕を閉じた。





「一ノ瀬、お前の武器は一撃の威力がデカい。全員が一番に警戒する武器だ。いいか、強い一撃を持ってる奴ほど、撃つ瞬間まで耐える覚悟が必要だ。敵の目の前で焦って振り回せば、それはただの隙になる」


「ありがとうございます!」


(警戒されて完全に行動を読まれてた。俺の一撃で戦況が変わる可能性がある。だからこそ、ここぞって時まで仕掛けちゃいけないんだ)


「タクマの武器が当てにくいのは確かだけど、やっぱ一撃の威力がデカいから怖いよ。なるべく相手にしたくないし、警戒しちゃうよなー」


「そっか、パイルバンカーだとわかっていれば警戒されるから、簡単には当てられないよな」


「アリ型みたいにUMAが複数相手だったら難しいけど、一体なら俺たちの連携で隙を作れば良いわけだし、模擬戦とは状況も変わってくるから教訓として受け取れば良いと思うぞ」


 真二くんが俺を気遣ってくれる。


(ありがとう、次に活かしてみせるよ!)


 俺はこの合同訓練で、ただ技術を磨くだけじゃない、心構えを学んだ。


 個人訓練もしつつ、合同訓練で連携の精度を上げながら、俺はパイルバンカーの使い方や戦い方を学んでいった。







 それから数日間、俺は合同訓練を続けた。



 最初の頃は、パイルバンカーを当てたいという焦りが先に出ていた。

 けれど、真一さんの言葉を意識するようになってから、少しずつ変わっていった。


 真二くんが作った隙。しかし、俺はすぐには飛び込まない。


 相手の動きを見て、確実に当てられる瞬間まで待つ。


 そして——


 パイルバンカーを撃ち込む。それを見事に命中させられた。


「そこまで!」


 模擬戦を終えて、ついに俺達十和田班は白星を上げた。


「よし!」


 前なら目の前の隙に飛びついていた。でも今は、仲間が作ってくれた一瞬を無駄にしないことを考えられる。


「様になってきたじゃねーか、一ノ瀬」


 真一さんがわずかに口角を上げてそう言った。


(真一さんに認められた。その一言が、何より嬉しかった)


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