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17.パイルバンカーの課題


 パイルバンカーを実際に使って、真二くんと特訓しててわかったことがいくつかある。


 まず、スーツによる肉体強化で全然重さを感じないといっても力を入れる必要はある。敵の攻撃を回避したり、間合いを詰めるために動いたりすると、左右のバランスを崩しやすい。


 次に、3発使い終わった後は腕のロックがかかったまま排莢システムが作動して、しばらく肘を曲げられなくなること。

 3発で仕留め切れれば問題ないことだが、もしできなかったときは、戦闘中少しの間右腕が使えなくなるという隙を晒した上攻撃手段を失う。


 最後に、パイルバンカーを使用した後は、オーバーヒートしないように、しばらく待ってからじゃないと再使用できないということ。

 拳が届く距離まで間合いを詰めた後パイルを打ち込んだら、次の攻撃までしばらく何もできないため、間合いを取る必要がある。


(体のバランスが崩れないように気をつけて間合いを詰めた後、やっとの思いで1発パイルバンカーを撃ち込んでも、2発目をすぐに撃ち込むことはできないから、せっかく詰めたのに間合いを取る必要がある)


「はぁ〜、どうしたもんかな〜」


 課題が出てきてどう対処していくか、ため息をつきながら悩んでいた。


「何悩んでんだ?」


 特訓相手の真二が聞いてくれた。一人で悩んでてもなかなか答えが出ないから真二に相談してみた。





「ピーキーな武器だから仕方ないよなー。そこは仲間と連携して、相手の隙を作ったところで一気に間合いを詰めて、1発撃ち込んだらすぐ下がる。ヒット&アウェイ戦法でやるのはどうだ?」


「なるほど、連携すれば間合い詰める大変なとこは解決かー」


「一撃の重い武器だから何発も撃ち込む手数は必要ないし、撃ち込んだ威力が大きいから敵も喰らったらタダじゃ済まないはずだ。それなら、たとえ3発撃ち込んだ後のリロードの隙ができても、すぐに間合いを取れば問題ないだろう」


「そっか、相手も物凄いダメージを受けるからリロードの隙をつくのは難しいか!でも、3発しか撃てないのはやっぱり心配だな、外したら一気に追い詰められちゃう」


「そうだな、弾数が少ないのは少し心配だな。外した時にプレッシャーがかかるから、どんどん精神的に追い詰められちまう。それでスーツのUMA細胞の同化も進むかもしれないし。実践で使わないかもしれないが、メンタル維持のためにも予備のカートリッジを装填した、スピードローダーがあるといいかもな。」


「課題と感じたところをまとめて、影浦さんに相談してみるよ!」


「それがいい!それじゃあ特訓といくか!」


 俺はパイルバンカーを体に慣らしながら、実践形式で使い方を体に叩き込んでいった。







         一週間後






「よし!一通り見つけた課題はまとめたし、影浦さんに相談してこようかな。」


 この一週間、真二との特訓で感じた課題をまとめた俺は、その書類を手にウキウキで自室を後にして影浦さんの元へと向かおうとした。


 その時だった




コン、コン



 誰かが部屋へ訪れた


「はい、今出ます。」


 扉を開けるとそこには、またしても三神隊長が立っていた。


「やぁ、一ノ瀬。もう武器には慣れてきたか?」


「はい。この一週間パイルバンカーを使って特訓してきたんで、ある程度は。」


「そうか、それは何よりだ。実は明日からお前にも合同訓練に参加してもらおうと思ってな。」


「合同訓練って、あの大人数での連携ですか?」


「そうだ。いきなり全員と連携が取れる必要はまだないが、ゆくゆくはそうなってもらいたい。まずは同じ前衛組で連携を取れるようになるのは必須だ。カバーに入ったり追撃したりタイミングを合わせる必要がある。」


「そうですよね。わかりました!明日からよろしくお願いします!」


「うむ、期待しているぞ。」


 そうだけ言うと、三神隊長は静かに去っていった。


「隊に合同訓練かー!俺もみんなと連携して役に立てる時が来たんだな。足引っ張らないように頑張らないとなっ!・・・真一さんもいるのかな?ちょっと気乗りしないな...」


 張り切って意気込んだが、真一さんに足引っ張るなと厳しく怒鳴られそうだと想像したら、少し気が乗らなくなってきた。


「まぁ、明日のことは明日考えよう!今は武器の課題を影浦さんに相談しなくちゃ!」


 気を取り直して、武器の課題を影浦さんに相談しに今度こそ自室を後にする。






 死体処理区画へと来た





(装備開発で最近よくお世話になっているなー、本来死体処理部隊とは何も接点ないはずなのに、もう3回は訪れているよ。それにしても、一人で武器の開発修理をするなんて影浦さんは一体何者なんだろうか、すごい人だな。)


 初めは死体処理部隊の区画へ足を踏み入れることに緊張していたが、今ではすっかりどうでもいいことを考えながら来れる位には、来るのが当たり前の場所になっていた。


(だけど、やっぱり影浦さんと話すのは緊張するなー。真一さんとは違った意味で)


 期待と興奮を胸に緊張を吹き飛ばして、武器の相談へと歩を進める。



「すみませーん!影浦さんいますかー?」


 落ち着いた佇まいでゆっくりと現れる


「おや、タクマくん。パイルバンカーの件ですか?」


「はい。ここ一週間使ってみて感じた課題です。どうすれば改善できるのかと、どうするのが良いか影浦さんに相談に来ました。」


「君は実に勉強熱心ですね。自分の命を預ける武器だから、とても大事なことです。どれ、一つずつ一緒に課題を解決していきましょう。」


 とても優しく穏やかな声で協力してくれる。影浦さんは本当に頼りになる人だ。


「左右バランスの問題ですね。これを解決する方法は2つです。その内1つは根本的な解決方法ではなく、その問題が起きないように工夫して戦うものです」


 影浦さんが一つずつ丁寧に説明してくれた。


「まず問題をなくす方法ですが、バランスを悪くしている右腕を後ろにして、脇を締めて体の中心に寄せてバランスを安定させる。そして、拳は上へ向けて構えることでバランスを崩さないようにする方法です。バランスの悪さは残っていますが、バランスの悪さを発生させない闘い方です。」


 問題自体は解決していないが、問題にならない闘い方。これをマスターできればパイルバンカーはそのままに使うことができる。


「そして、問題を解決する方法ですが、同じくらいの重量を左腕にも課すことです。簡単な手段としては、左腕にもパイルバンカーを装着すれば、全く同じ重量が左腕にも乗るので、バランスの悪さは解消されます。」


「両腕につけても大丈夫なんですか!?」


「えぇ。あのスーツの肉体強化のおかげで重量は問題ではありません。反動も全てスーツ全体に分散させ、パイルバンカー単体で衝撃も抑え込んでいます。両腕に付けても何も問題ありませんよ」


「パイルバンカーの起動システムはUMA細胞なんですよね?両腕同時に起動しちゃったりしませんか?」


俺の意思でシステムが起動するなら、俺がパイルバンカーを使う意思で両方ともシステムが起動してしまうのではないかと懸念したが、要らぬ心配だったようだ。


「あはは、心配ありませんよ。UMA細胞は君の肉体に侵食することで体の一部となります。君の体とUMA細胞が繋がることで、このパイルバンカーは君の体の一部になります。君は歩く時に、右足左足と意識して足を動かしませんよね?体勢を崩して咄嗟に手をつく時や体でバランスを取ろうとする時、意識して動かしていませんよね?それと同じですよ。両方同時に使おうと思えば使えますし、片方だけ使おうと思えば片方だけ使えます」


(すごい!そんなことができるのか。それなら手数も増えるし、バランスをいちいち気にしなくて済むし、左腕にも付けたいな。)


 影浦さんは、俺の顔から何を考えているのかわかったかのように言葉を続けた。


「左腕用にもう一つパイルバンカーを作りますか?」


「本当ですか!?ぜひ、お願いします!」


 左腕にもあの外骨格フレームを取り付けて戦うと思うとワクワクが止まらない。


「あと、三発しかないと、外した時のプレッシャーがどうしても大きいです。」


「3発だけだと外した際のリスク、そして、プレッシャーになるということですね。拳銃のように小さく携帯できない為、腰に取り付ける形にしましょうか。激しい戦闘でも簡単には外れないように金属で固定。リロード時間=隙になるのでスピードローダーと固定金具は消耗品として、固定する為のベルトはより強固な金属のものを着けましょう。これなら力で強引にベルトから金具を引きちぎって、素早く装填できます」


 どんどん課題を解決していく影浦さんの姿が神々しく見えた。どんどん自分の理想の形へと導いてくれている。


「……でも、一番の課題は別にあって.....リーチが短くて間合いを詰めることなんです。」


「間合いを詰めるのが大変というものですね。まぁ、こればっかりは仕方ないものですが、それを補助するシステムなら作れますよ」


「本当ですか!?一体どうやって!?」


「実はそうなるだろうと予想して、あらかじめ考えておいたんですよ。ガス噴射による加速です。ロケットのようにガスを勢いよく出すことで、加速して一気に間合いを詰めるんです。これなら間合いを詰められる上に、その勢いのまま敵にパイルを撃ち込むことができます」


「めちゃくちゃいいですね!影浦さん、そのガス噴射する機能付けてもらえますか?」


 俺は子供のように、いや、子供ではあるが、幼い子供のように目をキラキラ輝かせて言った。


「良いですよ。あらかじめそのために外骨格フレームの空けておいた空間に、内部機構として落とし込みましょうか。」


「ありがとうございます!」


「カートリッジの携帯ベルトとスピードローダーは簡単に作れるのですぐに用意しますね。推進機構の追加も少しかかりますが、数日でできるでしょう。ただ、左腕用の作成はこの機能も追加して作るのでなかなか時間がかかりますよ」


「大丈夫です!」


「では、右腕の外骨格フレームに推進機構を追加するので、後で持ってきてください。」


(そうか!機能を追加するということは今使っているパイルバンカーをいじる必要があるから、完成するまでしばらく使えなくなるのか!!)


「は、はい。すぐ持ってきます。」


(訓練以外では基本スーツは着ない。五十キロもあるパイルバンカーも、当然装備保管室に置きっぱなしだ。影浦さんに預けるなら、あとでスーツを着て持ってこなきゃいけないな。しばらくお別れか......)


 泣く泣く俺はパイルバンカーの改良の為に、完成して間もない武器を預けることにした。


 しかし、そんな決意を固めた時だった







緊急事態発生 UMA出現 UMA出現


繰り返します


緊急事態発生 UMA出現 UMA出現



あの耳を叩くような音で悪夢の知らせが届く





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