18.UMAの大群
UMAが現れた知らせを聞き緊張感が走る。
討伐部隊隊員は直ちにブリーフィングルームに集まってください
けたたましい音が鳴り止み、俺はパイルバンカーの改良中で、戦えない状態じゃなくて良かったのかもしれないと思った。
「おやおや、こんな大事な時にタイミングが悪いですね。タクマくん、改良はまた後日に改めましょうか。推進機構の開発は進めておきます。ひとまずは、今のパイルバンカーでこの危機を乗り越えてください。ご武運を。」
そう言って影浦さんは装備開発室に引っ込んだ。
(ついに、実戦で俺のパイルバンカーが火を吹くのか!だけど、改良をまだできていないこのパイルバンカーでどこまでできるだろうか)
緊張と不安と興奮が混ざった奇妙な感覚に包まれる中、俺は急いでブリーフィングルームへと向かった。
死体処理区画から向かったため、最後に到着したのどうやら俺だった。俺の到着を確認すると三神隊長が映像をモニタに映して口を開いた。
モニタに映し出された映像は信じがたい地獄絵図だった。
「今回のUMAだが、今までのように人らしい形ではなく、見ての通りアリ型だ。そして、この大量のアリ型が規則正しく群れをなして移動している。目撃地点は複数、目的地は不明。ただ、こいつらの進路予測地点で戦闘に適した地点を割り出した。各自その地点に向かって迎撃。その間に俺が殲滅作戦を立てる」
(めちゃくちゃ大量のUMAが発生してる、しかも複数箇所で!?こんなの対応し切れるはずない!)
「グループ分けと担当地点を発表する!山方、九十九、十条はA地点!如月、五十嵐、清乃女はB地点!真一、真二、一ノ瀬はC地点!俺と桜木で作戦を練る!以上!」
(今までの戦闘も強敵相手に連携して戦ってた本格的な戦闘だったけど、今回は規模が違う!)
大量UMA出現に俺は絶望しかけていた。こんな数相手にまともに戦えるはずがないと。
未だ治療中で戦えない長月さんを除き、全討伐メンバーが出撃する。
女性が肩に担いでいた巨大な鋸を軽々と持ち上げ、山方小隊長と九十九さんと共に出撃した。
(あの時見た、鋸持ってた女性は十条さんだったのか)
俺も出現に準備を始める。
今回は三神隊長の立てた作戦にかなりかかっていると感じた。
(三神隊長と共に作戦を考える桜木さんは、三神隊長みたいに知略に長けてる人なのかな?)
大量UMAの出現に俺は他人頼りになっていた。
「タクマ、同じグループだな。頑張ろうぜ!」
笑顔で真二が話しかけるが、なんだか表情が曇っている。その表情からは焦りを感じた。
「おい、ガキ。オメェは目の前のことに集中してりゃあいいんだ。他は何も考えるな」
真一さんから今回も辛辣な言葉が飛んでくる。
しかし、俺も役に立って見せると誓ったんだ、ここで立ち止まる訳にはいかない。自分のやれることを精一杯やるんだ!
「はい!やれることを全力でやります!」
真一さんがじっとこちらを睨む。
「いいか!俺が真ん中、真二は右、一ノ瀬は左を担当だ。奴らは隊を成して突っ込んでくる。俺が撃ち漏らした左右の敵をお前らがやれ!」
「OK、兄貴!」
「了解!」
ブリーフィングルームに集まった全員が出撃準備に移る。パイルバンカーは使用回数に制限があり、しかも三回と少ないため俺はロングソードを手に取り出撃することにした。
全員がそれぞれの目的地に向けた飛空船に乗り込む。C地点へ向かって俺と真二くんと真一さんが乗り込む。真一さんは大鎌を手に静かにたたずんでいた。真二くんもこんな大量のUMA出現は初めてのようだ、曇った表情がそれを物語っていた。
「今回は今までとだいぶ違う。こんな大量のUMAが一度に現れることは一度もなかった。それに今までのUMAは人の形をしていた。腕や足があり知性を持っていた。だが今回のは人のような腕や足はなく見た目はまんまアリだ。もしかしたら、人間のような知性はないかもしれねえ」
真一さんが真二くんの表情を見て、今回は数が多いけどその分知性がなくて弱い可能性を匂わせる。
それでも、あまりに数が多い。敵と戦うというより災害と立ち向かうような感覚に近い。こんなのどうやって止めるんだ。
重い空気のまま目標地点に到着した。
アリ型が通ると予測された地点に降下した。パイルバンカーは3回しか使えない。あのアリ型の大群相手に使っても3回じゃほぼ意味がない。ロングソードで対抗するしかない。
「気合い入れろ!誰かを守るっていうなら、まずは自分を守って見せろ!偉そうに誰かを守りてぇだなんだって言うなら強くなれ!」
真一さんが大きな声で言い放つ。今回は俺たち3人で戦わなきゃいけない、明らかに俺はまだ力不足の新人。喝をあららために言ったのだろうか。
(真一さんが声を張り上げてこんなことを言うとは思わなかった。でも、そうだよ。誰かを守るんなら、まずは自分を守らないとだ!)
真一さんのおかげで気合いが入った。あのモニタに映った大量のアリ型UMAを見る前までは、確かにあった覚悟を失っていた。
「はい!強くなって見せます!」
そんな俺を見てか、真二くんはニヤッと笑った後、ギュッと斧槍を握り、腰を落として構える。
地面から伝わってくる振動。ドドドドドという音が少しずつ大きくなって聞こえる。地面から伝わる振動もそれに合わせて徐々に大きくなる。
(来た!見えてきたぞ、アリ型UMA)
アリ型の姿が視界に映った。隊列を組んで乱すことなくまっすぐにこちらへ向かってくる。
『こちら山方、目標確認。もうじき接敵する』
『こちら如月、同じく確認。接敵します』
インカムから静かに二人の声が聞こえてきた。
「こちら十和田、目標確認。接敵する」
真一さんが報告する。
ついにあの大群と正面から衝突する。俺はロングソードをグッと強く握り、いつでも迎えてる体制をとる。アリ型の大群はもう目の前まで迫ってきた。
「いくぞ、お前ら!死ぬ気で戦えー!!」
真一さんが大声で鼓舞する。
ブンッ! ズバッ!!
真一さんが正面からアリ型を、あの大鎌で思いっきり切り裂いた。攻撃範囲が広く一気にアリ型が倒れていく。大きさもあって威力も凄まじい、ほぼ一撃でアリ型を行動不能にしていた。
(すごい、一撃でアリ型を倒していってる。真一さんの攻撃が届いてないアリ型を倒すだけで大丈夫そうだ)
アリ型の多さを感じさせないほど軽快な一振りで真一さんがアリ型UMAを一斉駆除していく。
俺は真一さんの攻撃が届かない範囲のアリ型をロングソードで倒していく。真一さんの正面のアリ型は、動けなくなった肉塊ばかりだった。
しかし、それでも後ろに続くアリ型の大群は仲間の死に見向きもせず一心不乱に前へ前へと歩を進めてくる。
ひたすら倒していくと、徐々にアリ型の死体となって転がっている肉塊が肉壁となり、後に続くアリ型に攻撃が届かなくなってきた。
「まずいです、真一さん。倒したアリ型の死体が邪魔で攻撃が届かないです。」
「遠くのやつは無視しろ!効率よく倒せる近くのアリをやれ!今回の俺たちの作戦は全滅させることじゃねぇ、なるべく多く討伐することだ!効率を重視しろ!」
真一さんは三神隊長が話していたことから、自分たちの役割がなんなのかをちゃんと理解して戦っている。
そして、それ以外のことは三神隊長がなんとかしてくれると信じている。俺は真一さんの言葉を聞いて、そう感じた。
「了解です!」
何分経ったのだろう?
アリ型を迎え撃ってからひたすら迎撃を続けている。アリ型の死体もすごいことになってきた。
徐々に倒しきれずに通してしまうアリ型が1匹2匹3匹4匹......とどんどん数が増えていく。アリ型の討伐のほとんどが、真一さん頼みになってきている。
(このままじゃまずい。もうほとんど討伐を真一さん任せにしてしまっている。アリ型の死体が高く積み重なって大量に転がっている。俺のロングソードじゃ大して倒せない)
アリ型が押し寄せてくる
その時
ドンッ!
進軍するアリ型UMAに衝突したアリ型の死体がこっちへ吹っ飛んできた。俺は対処しきれずに直撃してしまった。
その質量と勢いで俺の体勢が崩れた。さらに後ろに続くアリ型とぶつかる。1回2回3回と何度も連続でぶつかる。
「グッ、ウッ、ハッ、グハッ」
ぶつかる衝撃で後ろへ吹っ飛ばされていく。そしてぶつかるだけではなく、吹っ飛んだ後俺の体を踏みつけるようにして、アリ型UMAが歩みを止めることなく突き進む。
ドドドドドッッッ!!!
何度も踏みつけられながら立ちあがろうとするが、一度バランスを崩すと後ろに何体も並ぶアリ型UMAの衝突を避けられず体勢を立て直せない。
俺はどんどん後ろへ吹っ飛び転がって行った。
「タクマ!!」
真二くんが不安そうな声で俺の名前を呼ぶ。真二くんはリーチの長い斧槍で、アリ型の死体を切り払いながらアリ型を突き刺して次々と倒していた。
(クソッ、こんなところで俺は何やってるんだ、まったく!自分の役割も全うできないなんて...)
悔しさを感じながらも、今は自分のできることをしようと必死に立ち上がる。
しかし、押し寄せるアリ型の衝突を避けられず、なかなか立ち上がることができなかった。
咄嗟に俺は、アリ型UMAの足を掴んだ。おかげで続くアリ型の衝突を回避できた。
だが、真一さんと真二くんからどんどん離れていく。
(なんとかこの状況を抜け出さないと!)
それを見ていた真二くんが焦った声で叫ぶ。
「タクマ!!無事かタクマ!?どこにいる!?」
俺は真二くんの体に呼応するように名前を呼んだ。
「真二!ここだ!」
アリ型の進軍は止まることなく、俺と真二くんを離していった。
「俺、タクマを助けに行ってくる!兄貴はここを頼む!」
真二くんが持ち場を離れて俺の救出に向かった。進軍するアリ型の体の上に乗り、アリ型の背を飛び移るようにして、俺の名前を呼びながら俺の元へと近づいてくる。
「真二!?マジかよ!どうする、どうする、クソッ!」
真一さんは一人で持ち場を守り、何か叫んでいるようだった。
「チッ....!」
そして、少し経ってから更に大きな声で叫んだ。
「真二!お前だけに任せられねぇ、俺も行く!」
真一さんも自分の持ち場を離れ、真二くんを追って同様にアリ型の背を伝って、真二くんの元へと移動する。




