16.一点突破で貫く武器それは・・・
無事鳥型UMAを討伐して飛空戦で帰還する。
船内では、立花さんが三神隊長と清乃女さんと九十九さんの簡易治療をする。
そして
「山方小隊長。あなたは軽度の一酸化炭素中毒の症状が出ているから、数日間は安静安静にしてくださいよ!」
「うるさく言わなくてもわかってらぁ」
立花さんが怒りを我慢している顔が見て取れた。
負傷したメンバーの治療を終えて簡易治療室から立花さんが出てくる。
「如月さんと一ノ瀬君は大丈夫そうね」
「はい。遠くで狙撃してただけなんで、無事ですよー」
「はい、俺もほとんど接敵しなかったんで全然大丈夫です」
(今回は連携もうまくいったしかなり被害を抑えられたんじゃないかな。俺は前回の長月さんの戦いしか知らないけど・・・。ん?如月さん話し方戻ってるな)
「如月さん、今回は戦闘中めちゃくちゃ落ち着いた話し方してましたね」
「あははー、あれねー。集中しちゃうとどうしてもねー」
(普段はこんな感じだけど、集中すると普通の人になるのかこの人)
治療が終わると、三神隊長が山方小隊長の前に立った。
「山方、あまり無茶はするな。火の海に飛び込むなんてこと」
「・・・あれが最善だ」
山方小隊長は悪びれる様子もなく言い放った。被害を最小限に抑えたい三神隊長と、最速討伐のために多少の犠牲は厭わない山方小隊長。
二人の間に、少し重たい沈黙が流れる
「あの山方さんの行動がなかったら、俺と如月さんのあの作戦間に合わなかったかもしれないし。どっちが正しかったかなんてわからないんじゃないですか?」
(思ったことを言ったが余計なことを言ってしまっただろうか)
三神隊長は一瞬驚いたように俺を見たが、すぐにふっと表情を緩めた。
「そうだな。今回は軽傷で済んでよかった。」
三神は少し安どした様子で席に着いた。
俺も安どしてか実践の緊張から解放されてか、しばらく飛空船にやられる間に気づいたら飛空船の中で眠りに落ちていた。
「お~い、タクマくーん。起きてー着いたよー。」
俺は如月の声で目を覚ました。
「ぐっすりだったねー。よく眠れたかなっ?」
「あはは、すみません。眠っちゃいました。」
「まぁ、仕方ないよ。実際初めての実践だったわけだし。UMAが目の前まで迫ってきたわけだしねー。ビル脱出の時はハラハラしたねー」
(なんかハラハラしたとは思えない言い方だ)
「今日はご飯食べてシャワー浴びてゆっくり休みなよっ、バ~イ」
(あんな戦いをした後なのにすごいな如月さんは。さて、俺も戻ろう)
広間に行くとそこには真二くんの姿があった。
「お疲れさん、タクマ!」
「真二!」
真二が俺の帰還を待っていてくれたようで、笑顔で迎えてくれた。
「どうだ?ちゃんと活躍したか~?」
「うん!少しだけど俺役に立ったよ!敵を罠にはめて脱出して、ちゃんと如月さんを守りきれたぜ。」
「そうか。まぁ、まずは身軽な格好に着替えてこいっ。そのあと飯でも食いながら詳しく話聞かせろよ!」
ひとまず装備を片付けて着替えた後、真二とともに食堂で飯を食いながら今日起きた出来事を詳しく話した。
「次は戦闘での活躍だな。もう武器も決めたみたいだし、あとは完成を待つだけだな。」
「うん、完成が楽しみだよ」
「俺も、どんな武器をタクマが選んだのか楽しみだ。今日はゆっくり休めよタクマ。また明日から訓練だぞ!」
真二は笑顔でそう言いながら自室へと戻っていった。
(そうだ。次は護衛じゃなくて敵との戦闘で活躍して見せる。そのためには武器が完成したら武器に慣れるまで猛特訓だ!)
戦闘の疲れを洗い流すようにシャワーを浴びた後、俺はそのまま流されるように自室へと足を運び眠った。
翌日
実際に戦ったわけじゃないのに体はなぜか疲労している。ただ見ているのとは違う、守るという役目を負って戦場に立っただけでここまで疲労するとは。
俺はくたびれた体を引きずって食堂へと向かった。すると、会いたくない人にばったり会ってしまった。
真一さんだった
「あっ、おはようございます。真一さん」
(弟想いのいいひとなのは分かったけど、あたり強いし口悪いし怖いから苦手なんだよなー。)
「お前、昨日出撃したらしいな」
「は、はい。如月さんの護衛で」
「ガキが戦場に立つな、そんなに死にてーのか。」
突き刺すような言葉に、一瞬だけ気圧されそうになる。
だけど
「俺は、もう守られるだけは、嫌なんです。今度は俺が守れる存在にーー」
「何のためにそこまでする。他人を守ることがそんなに大事か?」
「・・・はい!」
俺はまっすぐ真一さんの目を見て答えた。
(両親に守られて助かったこの命を、ただ生きることだけに使いたくない。俺も二人のように誰かを守れる存在になりたい!)
しばらく真一さんが鋭い目つきで俺の目を見る。
「だったら一人前になれ。それまでは守るなんて軽々しく言うな。」
それだけ言い残して真一さんは立ち去って行った。
(こ、こわかったー。怒られるかと思った。でも、真一さんの言う通り。誰かを守るんだったら、最低限自分の身は自分で守れるようにならないと。朝食を食べたら今日からまた真二と訓練開始だ!)
覚悟を再確認したからか、俺の足取りは少し軽くなっていた。食堂で朝食を済ませて真二のもとへ訪れた。今日からまた特訓の日々の始まりだ。
武器が完成するまでの一か月ほど真二と基本の訓練を行った。もうだいぶ板についてきた。間合いの詰め方や取り方、体重移動や受け身の取り方、回避練習や攻撃の受け流しなど、基本的なことだけをずっとやってきた。あとはこれを実践でもできるくらい自然にできるようになることだ。
そして、待ちに待ったその日はやってきた。
コン、コン
自室の扉をたたく音が聞こえた。
「はい、今出ます」
(誰だろう、こんな朝早くに。訓練にはまだ早いし、真二じゃなさそうだ。)
扉を開けるとそこには三神隊長がいた。
「タクマ、影浦さんから言伝だ。頼まれていた武器ができたそうだ。なんでも相当な重量だからスーツ着て取りに来いとさ」
穏やかな顔でそう言った。
(きた!ついに来た俺の武器!これで今日から俺も専用武器での特訓をして本格的な訓練の始まりだ!)
「わかりました!すぐに受け取りに行ってきます」
俺は意気揚々とスーツに着替えて影浦さんのもとへと急ぐ。すると広間で真二くんに出会った。
「おっ、タクマ早いな。スーツ着て、もう特訓か?」
「聞いてくれよ真二。俺の武器が遂に完成したんだ!」
「マジか!よし今から受け取りに行こうぜ!」
そして俺たち二人は厳重なセキュリティゲートを通り、死体処理部隊の区画へと足を踏み入れた。
(ここに来ると、普段入らないところだからなんかワクワクするんだよなー)
武器の完成もあってか、俺の心は落ち着きをどこかに落としてきてしまったらしい。
「着いた.....」
ついに目的地である影浦さんのいる、装備開発の受付へとたどり着いた。
まるでRPGの冒険でもしているかのようなワクワクだった。
「すみませーん!影浦さんいますかー」
するといつものように奥の部屋から影浦さんがゆっくりと出てきた。
「タクマくん、お待ちしていましたよ。さぁ、どうぞ中へ。約50キロと重いので気を付けてくださいね」
そう言われて案内された装備開発室の中へ入る。そこには四角く長い何かが布に覆われていた。
(もしかして、あれが……俺の武器?)
影浦さんがその布をゆっくりとめくると、そこには右腕全体を包み込むような巨大な外骨格フレームがあった。
「タクマくんの要望からはだいぶサイズアップしていますが、機能は変わりませんよ。使用回数は3回までです。まぁ、3回当てられれば決着着く威力だと思うので、大丈夫だと思いますが、もし実践で使ってみて3回では足りないと思ったら、また来て下さい。では、使う上での注意点についてです...」
そう含みを持たせて影浦さんが言う。
「戦闘中に肘を曲げることは可能ですが、火薬の発火による推進力を得るときは腕を一直線にしなければ、君の腕が壊れてしまいます。なので、君がこれを使うときはシステムで強制的に肘が曲がらないよう、フレームが一直線になるロックがかかります。君が何かする必要はありませんが、使用上の注意です」
「腕をまっすぐに伸ばしてから使えば、問題ないってことですね」
「えぇ、そういうことです。仮に肘が曲がっていてもロックがかかり強制的に一直線になります。加えて、上腕と前腕のフレームが接続されなければ、発火しないシステムになっているので、事故は起こりませんよ」
「うわぁ、ありがとうございます影浦さん!」
「いえいえ。それと一番大事な使い方についてです。このシステムにはUMA細胞を用いているので、使用者である君が念じることでシステムが起動します。使っていくうちに体でわかるようになると思いますが、なぁに、簡単なことです。『くらえ!』と思ったら自動でシステムが起動します。あと、これはついでにできそうだったのやっておきました。フレームの外装は耐酸耐熱に優れた装甲になっているので盾にもなっていますよ」
想像以上の出来栄えに興奮があらわになる。
「ありがとうございました!失礼します!」
俺と真二くんはさっそく武器の性能を試しに個人訓練場へと向かった。
到着後、さっそく俺は外骨格フレームを装着する。
50キロの重さと聞いて、本当に片腕で使えるような武器なのかと心配したが、スーツで肉体が強化されているためほとんど重さを感じないくらいだった。
「すごいよこれ!着けてみたけど全然重くない。しかもフレーム自体は装甲で覆われていて頑丈だなんて」
自分専用の武器の完成に完全に酔いしれる。
「で、タクマ。それどんな武器なんだ?火薬使うみたいだけど、見たところ盾みたいに頑丈なただの外骨格フレームのようだけど」
真二がハルバードを傍らに置き、不思議そうに覗き込んでくる。
「危ないから離れて見ててよ真二」
俺は右腕をまっすぐ前に伸ばして前傾姿勢で踏ん張る。
そして、『いっけぇ!』と念じてシステムを作動させた。
影浦さんが言った通りロックがかかり、さっきまで自由に肘を曲げ伸ばしできていた関節部分が動かなくなった。
そして、上腕と前腕のフレームが接続され発火した。
ドグアァァァァンッッッ!!!!
すさまじい爆発音と同時に、フレームの先端からまっすぐ前に、凄まじい勢いで杭が飛び出した!
ガシャアァァァンッッッ!!
さらに、外骨格フレームが前後に揺れ、反動の衝撃がスーツ全体に伝わり俺の体が震えた。
ズズズッッッ........
踏ん張った足が数センチ後ろに滑る。
フシュゥゥゥーーー!!
バシュゥゥッ!
その後、凄まじい高音の蒸気を吹き出しながら、突き出したパイルはすぐに引っ込んだ
シュブブブブ……カシャン!
そしてゆっくりフレームの中に収まっていった。
ガシャッ
カートリッジを仕込んであるリボルバーが回転して、次弾の火薬が装填される。
(うおっ……! 思った以上の反動だ!)
「パイルバンカーか!」
「どう!?かっこいいでしょ!ちゃんと威力あるし、腕と連動して動くから直観的で使いやすいし、リーチは短い分取り回しの心配もなし。外骨格フレームはでかいけど盾にもなってるから被弾のリスクもだいぶ抑えてくれる。重さも全然感じないし、俺にピッタリじゃない!?」
「そうだな!リーチが短すぎるから、どう間合いを詰めて敵に打ち込むか、問題はそこだな」
(早くみんなの役に立つんだ!次に戦場へ立つ時は、この武器で仲間を守る。)
ロングソードからパイルバンカーに代わって、真二くんとの訓練が始まる。




