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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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上京

短編と重複している部分があります。

 祭典の警備の間だけ王都勤務になり、寮に入ることにした。

 少し遠い実家から通うこともできたが、短期決戦で仕事で目立つ活躍をしたい。それに、寮に入った方が、事務官との接点が増えるだろう。


 残念ながら、入寮の手続きや警備用の腕章の配布などで、「幼なじみの彼女」を見つけることはできなかった。


 休日に、王都勤務の悪友と飲むことにした。彼女の情報はこいつが教えてくれる。

 まず、乾杯をした。お互いの近況報告を……と思ったら、身を乗り出して小声で話し出す。

「お前、なんかヤバいことになってるぞ」

 俺は枝豆を口に入れながら、「なんのことだ?」と訊き返した。

「昔、告白するって嘘を吐いただろ。あれで、彼女が男性不信になったらしいぞ」

「へえ、だったら責任取って俺が結婚してやるよ」

 半分本気でそう答えたら、悪友が呆れたような顔をした。


「田舎者は呑気でいいな。お前は祭典が終わったら帰るんだから、気楽でいいよな。

 俺は王都で、彼女の親兄弟と同じ部署になるかもしれないんだ。あの場に俺もいたことがバレたらヤバイ。

 悪いけど、反省する気もないなら、今日でお前と縁を切らせてもらう」

「なにビビってんだよ」


「俺は後悔している。子どもの悪ふざけですむと思ってた。

 けど、彼女は告白されても、からかわれてると思うらしい。あのせいで……って知ったら、笑えないだろ。

 真面目に告白した男たちにも、どうやって謝ればいいかわからないよ」


「それはさ、ほら。他に本命がいるってことじゃねぇ?」

 たとえば、俺とか。

 悪友は俺の顔をじっと見た。

「お前には伝わらないんだな。

 他の奴らも、お前とは縁を切りたいって。今日はジャンケンで負けたから、俺が代表してきたんだ。バレたら彼女の弟に半殺しにされるぞ。

 あの一族は、軍の貴族にも平民にも顔が利く。何代も続けて騎士爵を授与されているから、男爵位の叙爵の噂もある。彼女の母親も、軍の婦人会で活躍している。

 はっきり言って、睨まれたくない」


「逆に言うと、彼女は優良物件ってことだろ?」

 俺は嬉しくなって、ニヤリと笑った。獲物に不足はなし。

「ほんっと馬鹿だな。つきあいきれないわ」

 悪友は大げさにため息を吐くと、金を置いて店を出て行った。

 三年ほど地方にいただけなのに、あんなに馬鹿にされるとは……縁切り上等。こっちから縁を切ってやるよ。



 さりげなく周囲を見渡したり、文官棟に寄り道したりして、出会えるように行動した。あっちは仕事として俺の情報を知っているだろうから、会いに来ればいいのに。照れ屋で臆病なままなのかな。


 そして、ついに幼なじみと出くわした。

 女だてらに眼鏡をかけ、茶色の髪を引っ詰めている。相変わらず地味だな。

 けど、働く女性の凜々しさが眩しい。冗談が通じないのがあれだけど、真面目でいい奥さんになりそうだ。


「よお、これから俺もここで働くから、よろしくな」

 握手のために手を差しだし、さりげなく左手の薬指をチェックする。

 ――ない。よし!


 ……久しぶりに会った幼なじみだというのに、反応が薄い。もっと、こう……嬉しそうな表情になるものじゃないか?


 恥ずかしがっているのか。ここは俺が積極的にいってやらないといけないのかもな。

「再会を祝して飲みに行こうぜ」

「……仕事中ですので、そのような発言はお控えください」


 気のせいか、うっすら軽蔑されたような……? いや、気のせいだろう。

「なんだよ。幼なじみに会って嬉しくないのかよ」

 緊張しないでいいのに。


「そのような認識はしておりません。忙しいので失礼します」

 機嫌が悪かったのか、俺の横を通り過ぎる。

 なんだよ。つれないな。


 ああ、ここは職場だから公私混同しないとか、そういうのか。

「じゃあ、仕事が終わったら『鉄鍋』って店で。待ってるからな」

 先日、歓迎会で連れて行ってもらった店だ。少しうるさい店だが、あの緩い雰囲気が緊張をほぐしてくれる。

 引退した兵士がやっている店だから、彼女も安心して飲めるだろう。


 彼女は立ち止まって振り返った。だが、鼻にしわを寄せて、睨んできた。

 なんだ、その顔?

「ふざけているんですか? 行きません」

 そう言うと、今度は振り返ることもなく、角を曲がっていった。


 俺が何かしたのかよ?

 まあ、いい。来ないと言っても義理堅いから、顔を見せるくらいはするはずだ。

 酒を酌み交わしながら、話を聞いてやろう。



 ところが、彼女は来なかった。

 つい飲んだくれてしまい、俺は二日酔いで出勤することになった。


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― 新着の感想 ―
会話のできない、言葉を発する動物ですねぇ… トラウマの原因が「俺が貰ってやる」とか何の罰ゲームだよ
勿論こいつはクズ中のクズなんだけど、連載版ここまで読むと諸悪の根源は母親(と他の家族)って感じがするんで、相対的にこいつへのヘイトが和らいでる……。
戸愚呂弟−100%「元既婚者の俺から見て、今のお前に足りないものがある」 「危機感だよ」
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