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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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次の日

前半は短編と重複しています。

 二日酔いのまま出勤した俺は、上司に怒鳴られ、水をぶっかけられた。

 王都で華々しく活躍するはずだったのに、ケチがついたぞ。くそ。


 着替えるために寮に戻る途中、文官棟に寄り道をした。運良く廊下を歩く彼女を見つけたので、早足で追いついた。

「おい、なんで昨日来なかった?」


「なんのことでしょう?」

 彼女はこちらを見ずに、歩みも止めない。


「昨日! 俺は待ってたんだぞ」

「行くとお返事していませんが」

 すごく冷たい言い方をされた。何を怒っているんだ?


「それでも来るのが誠意のある人間ってもんじゃないのか!」

 俺はこんな扱いを受けたことなんてない。不誠実にも程がある。


 彼女は、心底うんざりという顔を見せ、ようやく立ち止まった。

「では、言います。あなたと個人的に出かけることなど、絶対にありません。

 あなたのお誘いは、すべて『罠』だと認識しています。仕事のこと以外で話しかけないでください」

 そう言い捨て、彼女は背中を向けた。


「え、なんでだよ……」

 広い廊下に、俺は取り残された。

 立ち尽くす俺に「廊下が濡れています。早く着替えた方がいいのでは……」と掃除夫が声をかけた。

「うるさい。掃除夫の分際で」


 怒鳴りつけた俺に、掃除夫はなぜかニタリと嫌な笑いを向けた。



 掃除夫は、男が去ってから濡れた床を拭いた。

 それから自分の担当の区域を順に掃除していく。渡り廊下を掃いているときに、弟を見かけた。

 目が合ったので、掃除夫は親指と人差し指をすり合わせて合図をする。

 弟は同僚に断りを入れて、掃除夫のところに走ってきた。

「何かネタが?」

「嬢ちゃんを傷つけた男、見つけましたよ。祭典の警護に招集された、地方所属の兵士です」

 弟はうなずくと、ポケットから銀貨を取り出して掃除夫に渡した。

「飲みに誘って断られて、逆上していました。要注意です」

「うわ、最悪。無駄に積極的な奴か」

 弟は首に手をやった。


「同僚にも嬢ちゃんの周辺に注意するよう言っておきますわ」

「それは助かる」

「嬢ちゃんは子どもの頃から行事の手伝いをしてましたからね。私らにとって、親戚の子みたいな存在なんです」

「姉貴は愛されてるな」

 弟は目を細めた。


「でも、ちょっと可哀想でしたよ」

 掃除夫は、箒を地面に丸を描くように動かした。

「何が?」

「他の子は試合したり遊んだりしているのに、ずっと働いていて。愛想笑いはしていましたけど、心からの笑顔じゃなかったと思います」

「……俺は試合に出ていたから、そんなの気がつかなかった」

 弟は衝撃を受けていた。


「それが普通の子どもですよ。嬢ちゃんは気がつきすぎた。……子どもらしくは、なかった」

 掃除夫は文官棟の方に視線を向けた。


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― 新着の感想 ―
短編で掃除夫のくだりが謎だったんですけどこういう裏があったんですね
見てくれている人は居るもんだな……
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