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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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男たちの動向

 次の年に、弟が軍部に入ってきた。


 弟は雑談の中で犯人捜しを始めたらしい。

「うちの姉貴に子どもの頃『好かれるはずがない』って言った男がいるらしいんだ。なんか聞いたことない?」


「ああ、事務の眼鏡の人?」

「女の子にわざわざそんなこと言うか?」

「もしかしたら、あれか。好きな子に意地悪しちゃうやつ」

「華やかな美人じゃないけど、『おかえりなさい』とか言ってほしいかも」

「それな。癒やされそう」

 無責任な評価が積み重なっていく。


「でも、なんで今ごろ子どもの頃の話をしてるんだ?」

 盛り上がる中でも、冷静な人が問いかける。


「や、なんかさ。それで自信なくして、結婚できないとか言っててさ」

「え~、そんな、昔のことだろ?」

「姉貴は繊細なんだよ。まあ、何か思い出すことがあったら教えてくれよ」


「そういえば、大会の時に笑ってたやつがいたかも。『すました顔が歪んで、泣きそうだった』とか」

「それ、いつのことだ?」

 弟は勢い込んで問いただす。

「武芸大会だったかな。準決勝にも残れない奴らって、すぐ暇になるじゃん。

 そういう奴らだから、いじめでもして憂さを晴らしてんのかなって……。

 雑魚の顔なんか覚えてないけどさ」


「全然手がかりがなかったから、それだけでもありがたいよ。武芸大会に出てたなら、軍部に入った可能性があるよな」

「普通に学校関係って可能性もあるんじゃね?」

「まあな。そうなったらお手上げだ。俺の活動範囲とかぶらないもん」

 弟も、真剣に探偵をするのは無理だとわかっていた。


「だったら、学校の友達にも訊けばいいじゃん」

「それがさ、姉貴は自分のことをあんまりしゃべらないから、交友関係がイマイチわからなくて」

「そんなことあるか?」

「うちはだいたいお袋がしゃべりまくって、兄貴と俺が話すくらいでさ。姉貴はひたすら相槌を打ってる感じ……あれ、なんか変だな」


「ああ、子どもの頃からそうなんだろ。だから、傷ついたことを家族に言えなかったんだ」

 同僚の言葉に、弟は愕然とした。

 姉の話を、誰も聞こうとしない家。就職してから、たまにしか帰らない娘――




 そして、元凶である嘘告の男が現れる。


 地方に配属された者たちが、祭典の警備のために王都に呼び寄せられたのだ。軍部の寮を割り当てられ、王都で数か月過ごすことになる。


 嘘告の男は、手柄を立てて正式に王都に異動することを夢見ていた。それと同時に、「幼なじみの彼女」を口説いて結婚しようと考えていた。

 地方勤務のままなら何もするつもりはなかったが、せっかく巡ってきたチャンスだ。彼女と縁づけば、義父の引き立てで出世できるかもしれない。義兄の交友関係に加えてもらえれば、自分はもっと飛躍できる。

 そんな野心を抱いていた。


 それから、予想外にモテる女になった彼女をものにするのは、気分がいいだろうとも……。


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