表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第三章 新しい場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/45

帰郷

 二年ぶりに王都に来た。兄の結婚式に出席するためだ。

 泊まる場所は実家ではなく、魔術師の子爵邸……。ご厚意に甘えっぱなしだ。

 両親には、結婚式の準備で忙しいところに、久々に娘が帰ってきたら大変だろうと説明した。母は納得しなかったが、父が同意してくれた。


「あなたは子爵令息とお付き合いしているの? 遊ばれているんじゃないでしょうね。

 いつ結婚するつもりなの。仕事だけしていればいい、というものじゃないでしょうに。

 子どもだって早く生まないと。ぐずぐずしていて、私が手伝いに行けなくなったらどうするの?」

「あの、今日は、私のことはいいので……」

「こんな日ですけど、あなたが顔も見せないせいじゃない。通信魔導具だってすぐに切ってしまうし」


「はいはい。お袋は親戚に挨拶した方がいいんじゃないの?」

 弟が助け船を出してくれた。

「あら、そうね。あなた、式が終わったら実家にいらっしゃいよ」

「それはしないと言って……もう、相変わらずこっちの話は聞こうともしないんだから」

 以前は口にできなかった愚痴が飛び出して、自分でも驚いた。


「披露パーティーが終わっても、親戚のおばちゃんたちとしゃべっているだろうから、その隙に帰っちゃえよ」

「いいの? 遠慮なく、そうさせてもらうわ」

 なんだか、弟の物わかりが良すぎて驚いた。働くようになって、人を見る目が変わってきたのだろうか。弟にフォローしてもらうなんて、こそばゆい。



 兄の結婚式は無事に終わった。花嫁と仲良さそうな姿に安堵する。


 披露パーティーの座席は、身内なので家族は同じテーブルだ。

「もう、こっちの助言をはねつけて、好き勝手やっているのよ。結婚式のお金を出してあげると言ってやったのに、断ってくるし。気の強い嫁なんて、これからが大変だわ」

「お前、お相手の親御さんもいるのだから、口を慎みなさい」

 父が母をたしなめた。


「嫁に来たら、夫の実家のやり方を習うものでしょ? 教えるのは私なのよ」

「母さん、もう、そういう時代じゃないのよ。結婚早々に、お義姉さんに逃げられちゃ……」

 さすがに駄目でしょう。求められていないのに押しつけたら、トラブルになる。


「そういう考えだから、いつまで経っても結婚できないのよ」

 母に睨まれた。「ひっ」と喉の奥でか細い音が鳴る。


「お前やめなさい。今日はめでたい結婚式なんだ」

「なんなの、あなたたち。いい機会だから、教えてあげてるんじゃない」

 母の声がヒステリックな色を帯び始めた。


「お袋、姉貴もいろいろ考えているんだろうから、そっとしておいてやりなよ」

 弟がにこやかに母に話しかけた。

「あ、これ美味しい。お袋も食べてみな」


「まあ、ほんとね。洒落てるわ。お母さんはこんなにきれいに盛り付けられないけど、味は負けてないでしょ?」

「そりゃあ、『お袋の味』だからね」

 弟の相槌に、まんざらでもない顔になる。

「ふう。『いろいろ考えてる』って何よ。またお母さんをのけ者にして。仕方のない子たちね。

 困ってから頼ってきても、知りませんからね」


「働いて自活しているんだから、好きにさせてやりなさい」

「違いますよ。働いてさえいれば一人前だなんて、思い上がるのがいけないんです。

 結婚して、子育てしてこそ……」

「ああ、これも旨いよ」


 相変わらず会話のスピードが速くて、ついていけない。

 まあ、矛先が私に向かないように祈りながら、お料理をいただきましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この親でスポイルされずに兄弟育ってるのは逆に凄いな
わざわざそれをやってやるほどの義理はないのが前提として。 娘氏に気がある魔術師殿か、今回結婚した兄嫁氏か、どちらかにしたたかに面子をぶん殴られるまで改善しないだろうな。 現状いちばん割を食っている主人…
兄嫁さん、毒母と同居なら結婚しないって言っていたはずなので兄は2年かけて別居を勝ち取って結婚と思われるのに、毒母はまだそんなこと言ってるのかー。 娘が家を出て八つ当たり先がなくなってから、ご近所?トラ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ