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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第三章 新しい場所

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噂の的

 しばらくすると、私の悪口が広がっていた。

 一度だけデートした相手が、私に弄ばれたと言いふらしているらしい。嘘を吐いているわけではないが、かなり自分に都合のいいように解釈している。

 しかも、王都から来たエリートに浮気した、二股女だそうだ。


 何度もしつこく誘われて、一度デートというものをしてみたかったので承諾しただけなのに。

 それが、「私もかなり乗り気で、結婚式の相談をするつもりだった」という話になっている。加えて、一方的な婚約破棄だから慰謝料を請求できるはず、と言い出している。

 慰謝料が取れたらみんなに奢ると約束したからな、とすれ違いざまに言われた。

 怖い。すごく変な人だった。

 だから評判が悪いんだな、根拠もなく嫌われていたわけじゃないんだな、と理解できた。ちょっと……いや、かなり遅かったかもしれない。


 元から私にいい印象を持っていない人たちは、「ほら見たことか。王都から来た高飛車な女なんて」と思うらしい。

 別になんと言われてもいい。友達を作りに来たわけではなく、仕事をしに来ているのだから。


 ところが制服を汚されたり、筆記用具を隠されたりするようになった。これではまるで、小説の主人公いじめではないか。

 母から離れて、精神科で処方される薬が弱い物に変わったのに、また強い薬に戻ったら困る。

 緊張を緩和する作用があるので、悲しいという気持ちも薄いように感じる。果たして、それは「幸いにも」と言って良いことなのか……。


 食堂に行きたくないし、自分の机にもいたくない。中庭のベンチでモソモソとパンを食べていたら、魔術師に見つかってしまった。目ざとく制服の汚れを指摘され、仕方なくぽつりぽつりと説明する。


「許せないね」

 魔術師は静かにそう言った。

「きっと暇なんですよ、彼女たち」

 王都に比べたら、のんびりした職場だもの。おしゃべりする時間があるなら仕事をすればいいのに、というのは黙っていた。



 二日後の始業前に、魔術師からペンをもらった。

「これを職場で使ってほしいんだ。配給品を隠されたら、新しいペンをもらうときに叱られるだろう?」

「でも、私物を持ち込まないように言われてしまうわ」

「そう言われたら、魔術師の実験に協力していると答えればいいよ。落としたりするのはいいけど、踏み潰したりしないでね」

 魔術師はご機嫌で、口角を三日月のように上げた。

「いただいた物にそんなことしないわよ?」

「ああ、そうだよね。普通はね」

 そのやり取りを、睨むように見ている人たちがいた。



 その日、昼食から戻ってきたら、職場に異臭が漂っていた。

「なんですかこれ。どうしたんです?」

 すごい刺激で鼻にハンカチを当てないと、息をするのも苦しい。


「あんたのペンを踏みつけたらこうなったのよ!」

 パンプスの底を床にこすりつけながら、怒鳴られた。

「……最近、私の物を壊していたのはあなただったのですね」

 まあ、見当はついていたけれど。

 彼女たちの陰湿な行為が明らかになり、上司に厳重注意されたそうだ。

 不思議な偶然もあるもので、私の悪い噂を流した男性は、山奥の部署に飛ばされたらしい。私と同じような目に遭っていた女性たちは、「一生、山から下りてくるな」と喜んでいた。


 魔術師はというと、彼も「使えそうな発明品は、速やかに報告しろと言っているだろう」と注意されたとのこと。

 人混みに紛れようとする容疑者に目印を付けるとか、いろいろな使い道が考えられるらしい。


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― 新着の感想 ―
こいつらほんとに社会人か? やってる事が中高生レベルなんだけど……。
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