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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第二章 その後

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親切

 二日間の休日を、子爵家の客間で療養させてもらった。こんなに甘えていいのだろうかと心配になる。


 奥様が様子を見に来てくださって、少しお話をした。ベッドに横たわったままで、失礼してしまった。

「ご迷惑だなんて、言わないで。わたくし、あなたに感謝しているのよ」

 メイドが枕元に椅子を置き、奥様はそこに優雅に腰掛けている。

「何かございましたでしょうか?」

 感謝されるような心当たりはない。


「甥が武芸大会に出たときに、かすり傷をこさえたの。元々親に言われて嫌々やっていたものだから、カンシャクを起こしてしまって。

 あなたが傷口を洗って、ガーゼを当ててくれたのです」

 医師に診せるほどではない怪我は、そういうことをしていた。たくさんの人の手当てをしたので、実は、怪我人の顔は覚えていない。

「そのときに励ましてもらったのが嬉しかったらしくて。ふふふ。剣の習い事を今でも続けているのよ」

 奥様は楽しそうに微笑まれた。

「それは、光栄なことでございます」

 覚えていないと言わずに、それらしい返答で誤魔化してしまえ。


「だから、甥の婚約者があなたに嫉妬して、ひどいことを言わないといいのだけれど。余所のご令嬢に注意するのも難しくてね」

 奥様のおっしゃることが理解できなくなった。

 婚約者が嫉妬?


「あの、多少の悪口には免疫がありますので」

 ご心配なく、という気持ちでそう返事をした。

「……どんな悪口を言われたのかしら?」

「そうですね。『意外と地味』、『思ったより大したことない』、『いい気になるな』というのが多い気がします」

「あら……。それも嫉妬されたのだと思うわ」

「そうでしょうか。不思議ですね」

 体調がよくないせいか、奥様と会話が噛みあっていない気がする。


 メイドが「奥様。お嬢様の負担になりますので、そろそろ……」と声をかけてくれた。

「あら、そうね。わたくしとしたことが」

 奥様はそう言って、お立ちになった。



 二日目の夕方に、一人暮らしの部屋に戻ることにした。明日は出勤しなければ。

 奥様と息子の魔術師に丁寧にお礼を言って、子爵家の馬車で送ってもらった。


 御者は私が階段を上りきるまで見届けると言って、建物の入り口に立っている。途中で息切れして立ち止まったりしたら、心配されてしまう。気合いを入れて登らなければ。


 階段の手すりに手をかけたところで、管理人に声をかけられた。

「あなたのお母さんから、差し入れを預かっているわよ」

 心臓が飛び出るかと思った。

「体調が悪いと聞いて、消化にいいものを持ってきてくださったのよ。冷蔵魔導具に入れておいたから……」

 耳鳴りがして、膝から力が抜けた。

 御者が駆け寄って体を支えてくれる。


 親切をありがたいと思えない、悪い子でごめんなさい。


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― 新着の感想 ―
そういえば、固有名ないのか…
かすり傷を負ったのは甥?それともカンシャクを諌めようとした奥様? 「励ましてもらったのが嬉しくて」とあるから奥様のようにも思えるけど剣の習い事を続けているのなら甥かな? 嬉しく思ったのは奥様ではなくて…
 親の心理的支配の影響がもはや「呪い」レベル。  絶縁も視野に入れるべき。  荒療治で直接対決というのもあるが、主人公が相当変わって精神的に強く安定しないと逆にやり込められたり聞く耳持たれなかったりす…
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