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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第二章 その後

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避難

 次の日は休日だったので、時間を気にせず寝ていることができた。

 差し入れの果物をほんの少し食べ、ベッドに戻る。

 休みが終わったら普通に出勤できるのだろうか。そんな不安が胸をよぎる。


 控えめなノックが聞こえ、弟の声が聞こえた。カーディガンを寝間着の上に羽織って出る。

「具合はどう?」

「……果物を食べたわ。美味しかった」

「あのさ、ここにいるとお袋が心配して来るかもしれないんだけど。大丈夫そう?」

 こちらの様子をうかがうように、慎重に問いかけてくる。

 気を遣ってもらっているのはわかるが、ざっと血の気が引いた。

「大丈夫じゃない……かも。放っておいてほしい」

「――だよなぁ」

 弟はこんなに物わかりのよい子だったろうか?

 要領のいい弟は、「母親の好きなようにさせつつ、利用する」というスタンスだった。たまに「考えすぎ」と言われることもあったのに――?


「あー、一つの提案というだけで、勧めるわけじゃないんだけど」

 歯切れが悪く、長い前置きだ。

「あの魔術師の彼の実家、子爵家なんだけど、そこに避難する? さすがに貴族の家まで押しかけたりできないと思うから」

 勧めているのか、いないのか、よくわからない言い草だった。




「あら~、よくいらしてくださったわね。お部屋の用意もできていますの。ゆっくりお休みになって」

 魔術師の母は、朗らかに迎え入れてくれた。

 あまりの歓迎ぶりが、体調不良の身には重たく感じられる。

「あの、はじめまして。お世話になります」

 身を小さくして、ご挨拶を返した。



 先ほど弟を廊下で待たせて、寝間着から簡素な普段着に着替えた。弟に支えられながら建物の外に出ると、子爵家の馬車が入り口で待っていた。

 家紋はついていないが、辻馬車や貸し馬車とは明らかに違う。ご近所さんに顔を見られないようにうつむきながら馬車に乗り込むと、魔術師が中に座っていた。

「ひえっ」

 ぼーっとしていて気がつかなかったため、とっさに変な声が出た。弟がそれを聞いて「姉貴、それはないよ」とくすくす笑う。

 もう、もう。具合が悪いんだから、意地悪しないで。少し涙目になりながら、馬車の背もたれにぐったり寄りかかってしまう。

 弟が寄りかかっていいと言ってくれたから、それに甘えて目を閉じた。



 そうして、今、ここにいるのだけれど。

「母上、あまり賑やかにしないでください」

 魔術師が自分の母をたしなめた。弟から侍女に私の身柄が引き渡された。

「あ、あの……ありがと」

 弟の機転で、難を逃れることができた。

「体を回復させるのが最優先事項だから」

 そんなことを言われたら、泣きそうになってしまうではないか。


 侍女について階段を上ろうとしたが、途中で息が切れてしまった。立ち止まる私に気付いた魔術師が、軽快に登ってきた。

「ちょっと失礼します。お身体に触れますね」

 そう声をかけたと思ったら、少し屈んで、お姫様だっこされた。

「え? きゃっ、ええ?」

 ど、どういうこと?


「あなた、お部屋に案内したらすぐに戻ってきなさいよ」

 奥様は厳しい口調で魔術師に釘を刺し、侍女が「私が目を光らせておきますので」と請け負った。


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― 新着の感想 ―
メンタルからの体調不良が不登校児の典型パターンで胸が痛い。 頭で理解する前に身体がシグナル出してる状態で家族が原因だとなかなか社会復帰できなくなるんだよね。
あー、これは魔術師エンドかな? しっかし、主人公視点でさして親しくもない魔術師の家の世話になるの絶対気が進まないだろうに……よっぽど弱ってる今母親と会いたくないんですね!
弟くんナイス! やっぱりお兄ちゃんの恋人からの指摘が効いたのかな? 第三者だからこそ見える物ってあるよね 魔術師さんもそこでお姫様抱っこ!(*/ω\*)キャー!! ってなっちゃいました
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