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嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

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襲撃のあと

 公園での催し物は強制終了となった。

 その頃には、ほとんどの客が逃げて関係者しか残っていなかった。屋台の人たちには片付けを始めてもらい、終わった人から事情聴取に協力してもらうことになる。

「生徒会長と孤児院の子は、先に話を訊いて帰らせてあげて」

 後から駆けつけた文官に、そう頼んだ。

「ああ、そうだな」

 そんな会話をしてから、同僚とテントの方に向かった。荷物を運び出し、倒れている騎士や兵士を運び込むのだ。

 医療担当の人たちは、連絡を受けてこちらに向かっているはずだ。


「一仕事終えて祝杯、なんて無理みたいね」

 同僚が愚痴をこぼした。

「今日だけじゃなく、しばらく無理かもしれないわよ」

「おのれ、襲撃犯め」

 同僚の軽口には、いつものキレがない。結果的に無事だったが、危険な状態に陥ったのだ。


 日が傾いた頃、他の会場を片付けた人たちが駆けつけた。

「この公園担当の人は、簡単な事情聴取と医師の診断を受けたら帰宅していいですよ。明日、改めて詳しく訊きますので、今日は疲れを取ることを心がけてくださいね」

 そう言われてからは早かった。

 事件発生当時どの場所にいたか、気がついたことはなかったか……そんなことを訊かれた。


「指輪で鐘を鳴らした? あれで異常があったことに気づけたんだから、あなたのお手柄ですね。

 ――ちょっと見せてもらっていいですか?」

 特殊技術とは聞いていないし、職務的に協力を拒むのは難しい。やましいことがなければ、渡した方がいいだろう。聴取担当の人に指輪を抜き取って渡す。

 相手は指輪を摘まみ、角度を変えて観察している。誰にもらったかも調書に書き込んだ。

「はあ、こんなものをプレゼントねぇ。あの人、何やってんだ」

 一度、大きなため息を吐いてから、聴取を再開した。

 聴取が終わるときに、にこりと笑いながら言われた。

「これ、お預かりしても?」

 断れない圧を感じ、「どうぞ」と答えるしかなかった。


 医師には、目と喉のチェックをされた。

 飴を舐めていたおかげで、喉の状態は他の人に比べて良かったらしい。

 ……お礼を言わないと。顔も見たくないけれど、それはそれ、これはこれ。

 派遣された人たちが帰る前に、何か……贈り物用のキャンディーでも買っていこうか。


 同僚が医師の診察を終わるのを待って、一緒に帰ろうとしたときだった。

「姉貴、大丈夫だった?」

 弟が駆け寄ってきた。

「あなた、ちゃんと自分の仕事は終わったの?」

「当たり前だろ」

 弟は唇を尖らせた。だが、いつまでも子どもではないらしい。ちゃんと同僚に挨拶をした。

「姉がいつもお世話になってます」

「こちらこそお世話になっています。お姉さんは今日も活躍したんですよ」

 社交的な二人は、私をそっちのけでおしゃべりを始めてしまう。くたくたなので帰りたい。

「あ、ごめん。顔色が悪いな。姉貴、今日は実家に帰ってきなよ。それで、迎えに来たんだ」

 そういうことだったのね。気を使ってもらって申し訳ないが……。

「この状態で母さんの相手はしたくないわ」

 とりつくろう言葉すら浮かばず、本音が出てしまった。

「そっか。わかった。じゃあ、家の前まで送るよ」

 案外あっさりと引き下がってくれた。弟も社会人になって、考え方が変わったのかもしれない。

「私はいいから、彼女を送ってあげてよ」

 同僚を弟に託した。途中まで同じ道を歩き、分かれ道で二人を見送る。


 一人になって、肩の力が抜けた。誰かといるだけで疲れるなんて、また母に「嫌な子」と言われてしまう。

「この時間なら、いつものお店が開いているわね」

 休憩時間に買い食いしようと目を付けていた屋台があった。その料理を思い出しながら、いつもの道を歩いて行く。こんな時でも心細さより気楽さが勝る。

「無事に帰れてよかった」と思いながら、自分のペースで歩く。人には理解されないが、私はこれで幸せなのだ。


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― 新着の感想 ―
 お一人様が全く苦にならない、素で居られて楽ってなると中々他人をパーソナルスペースに入れたがらなくなりますよw  でも彼女にとっては必要なことか。  精神をひたすら削ってくるような人間と多くの時間接し…
「ヤツ」のような○チガイに餌をやっちゃダメだよ! 飴一つで 「やっぱ俺に惚れてんじゃーん、しゃぁねぇな結婚してやんよ!」 とかなっちゃう!
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