表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘告の功罪 ~「本当は好きだった」は免罪符にならない  作者: 紡里
第一章 嘘告

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/45

事件後の日常

 翌日、死者が一名という情報が流れた。王女のエスコートをしていた騎士だ。

 他にも重軽傷者が多数いた。重傷者の多くは、煙で視界が悪かったときにやられたそうだ。

「送風魔導具で煙を散らしたのはお手柄だった。表彰されるかもしれないぞ」

 上司にそんな言葉をかけられた。私一人ではなかったことは、改めて報告した。手柄を独り占めする気はない。


 数日後、襲撃犯から隣国の王弟の名前が出た。

 開戦派の旗頭とされ、王弟の妻の実家が後ろ盾となっている。王女を殺害して、その罪を我が国に被せて戦争をする。そんな計画だったという。

 王弟は今回の祭典には出席しないため、指示書が押収された。


 地方から派遣された兵士のうち、隣国との街道沿いの地域に所属するものたちは、早急に元の職場に戻ることになった。

 他の地方から来た兵士たちは、調査の手伝いということで派遣期間が延びた。あの日、公園内やその周辺にいた人たちを探して、聞き取りをするために飛び回っている。


 私たちは、花屋と飾り付けをした業者を順番に呼び出す手伝いをした。呼び出した後の聴取は、別の部署が担当する。

 顔見知りの例の花屋も対象となっている。だが、また何か言われても困るだろうと、他の人が担当してくれた。そんな配慮をしてもらうなんて、申し訳なくて情けなかった。


 当然、事件のことだけをやっていればいいわけではない。祭典の後片付けや報告に加えて、通常業務もこなさなければいけない。

 祭典前の緊張感が漂う状況よりはマシだが、なかなか忙しい日々となっていた。


 そんな中、お昼がいつもより貴重な時間となっている。


「王女殿下たちは帰国したんでしょ?」

 同僚がパスタをフォークに絡めながら、話題を振ってきた。

「翌日には、お二人とも……ね」

「自分を庇った騎士の葬儀にも出ないって、そういうもの? まあ、残られても警備が大変だからいいけど」

 率直な同僚の意見に同感と言えども、少々返答には困ってしまう。王族にとっては、騎士も使い捨ての駒なのかと気が滅入ってくる。

 本人たちがどう考えているかなど、畏れ多くて知る術もないが……。


 事情通の友人が、私たちを見かけて近づいてきた。

「相席していい?」

「もちろん」

 そう答えて、座ったまま片手で椅子を引いてやる。


 彼女からの情報はとても濃いものだった。

 隣国からは「王女を危険な目に遭わせたな」と苦情が来た。

 こちらの国は「そちらの国の権力争いに我が国を巻き込むな。将来有望な侯爵令息が犠牲になった」と応酬する。

 今回も仲介国が口をきき、落とし所を探った。

 そして、王弟を裁くのは隣国王家の威信を損なう。よって、王弟の最大の後ろ盾である、その妻の実家に全責任を被せた。妻の実家は侯爵家だったので、子爵に落とす。そして、莫大な慰謝料を犠牲になった騎士の家に支払うよう要求する。

 我が国はその騎士に名誉爵位を授与し、準国葬を行う。お姫様を救った英雄として大々的に讃える。街中で襲撃事件が起こったことから、人々の目を逸らせるためにも、盛大に――


「人の死を政治的なことに利用するのね。なんだか、釈然としないわ」

 政治の中枢にいる人たちの大変さはわからない。無責任な発言かもしれないが、すっきりしない。自信ありげに王女をエスコートしていたあの日の彼は、こんな急に人生が終わるなんて考えてもいなかっただろう。

「すごく言い方は悪いけれど、騎士が死んでくれたから我が国の面目が立ったって感じ」

 情報通が肩をすくめた。

「ギリギリの政治的な駆け引きなのでしょうけど、えげつないわね。私は平民で良かったわ」

 社会を知れば知るほど、貴族は大変だと思う。ただし、権力を振り回すだけの駄目な貴族は除く――なんて自分にツッコミを入れてしまった。


「でも、あなたの家は、そろそろ男爵になるんじゃないかって噂があるけど」

 同僚が別の話をしだした。よりにもよって、私の家の話ですか。

「ならないわよ。我が家では、自力で騎士爵を得るのがステータスなんだもの」

 その見込みがない私の地位は低い。女性でも騎士爵になれる人はいるから、尚更だ。


「そのために爵位を断っているの?」

 同僚は驚いたようで、フォークがお皿に当たって音を立てた。

「そのためだけってわけじゃないけど……」

 どこまで説明しようか考えていたら、後ろから声をかけられた。


 兄が、食事を終えてトレイを持って立っていた。

「赤バラの男が捕まったぞ」

 まず、わざわざ声をかけてきたことを不審に思った。

 次に、なぜ兄が赤いバラのことを知っているのか。一瞬、そちらが気になったが、それどころではない。

「捕まったって……何をやったの?」

 祭典の襲撃事件で忙しい、こんな時に――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
捕まったとな
 政治的なお話がまあ実際ありそうで良いですね。  現実的でとても嫌になるw  なんか二段階のサプライズが。  そもそも兄がこの場に居てわざわざ話しかけて来たことと「ヤツ」が捕まったこと。  そこまで…
自意識過剰男、襲撃中に突然やたらと都合いいタイミングで 助けに現れたなコイツ…と思ってたら、まさかの逮捕?! ①「ちょっとした王女へのサプライズ」と騙され細工 ②イヤゲモノ受取拒否され、クサクサしヤ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ