十三話 ジョブ診断・終
二話目です!第一章もそろそろ終盤に突入です!
儀式の間では二つの水晶が輝いいていた。一つは全てを燃やし尽くすような炎によって、もう片方は全てを更地に還る風が反射する光によって。
そんな光景を見た神官の二人は呆れた顔をしながら感嘆のため息を漏らす。
「本当にこの村の子達は優秀ね…。こんな高い適性者がポンポン出てくるなんて…」
「こう日に何度も凄まじい光景を見ると目が肥えるんですかね…驚きがあまりないですよ…」
そんな言葉を向けられているのは、水晶に炎を生み出しているカノアと風を生み出しているカリオスである。カノアとカリオスは自分たちは真面目にやっているのにどうしてそんな表情をされるのかと、少し困惑気味だった。
「カノアさんは火属性、カリオス君は風属性に適性がありますね…それも驚くほどの…」
「何だか自分、またすごいことが起きそうで心配ですよ…。あっ二人とも魔力を止めてもいいですよ」
女性の神官は呆れを含ませた声で二人の適正属性を告げ、男性の神官はまた何か起きそうだと遠い目をしている。内心、「こんなことばっかり起こるなんて…もしかしてもうすぐ死ぬのかな…?」なんて思っている。
カリオスとカノアは戸惑った表情をしながら互いを見た後、神官たちを見る。儀式の間に呼ばれた時から神官の二人はどこか遠い目をしており、気になって仕方がないのだ。
「アルカやレイア達に何かあったんですか?」
「ん?実は、レイアさんとリナさんが少し問題があってね…。ああ、詳細は聞かないで欲しい。多分君たちも何かすごそうだから自分が言わなくとも、知ることになりそうですし。後、アルカ君は珍しいジョブになっただけですよ」
「そういう事なの。後、レイアさんとリナさんは奥の部屋でハソン様と話しているわ。場合によっては貴方達も呼ばれるかもね?」
男性神官と女性神官がまたよく分からないことを言ったため、余計カノアとカリオスは首を捻る。だが、意外にも常識的なこの二人は神官達にも話せない事情があるのだろうと納得し、追及するのをやめる。
これが某黒もやしさんだと根掘り葉掘り聞いた後、女性神官のプライベートまで質問するだろう。ジョブ診断を受ける順番がこれでよかった。
「少し話過ぎたわね…。そろそろ奇跡の方に参りましょうか。カリオス君、カノアさん、礼拝の姿勢をとり、水晶の魔力と自身が繋がっていることを意識しながら魔力を注いでください。」
カリオスとカノアは女性の指示通りに動く。この後はアルカ達と同様、女性神官が懐から出した本の一説を呼んだ後、誓いを立て、奇跡を受ける。
『──この世界を生き抜く力をお与えください【奇跡:祝福の喝采】』
祝福の喝采によってカノアとアリオスの体は光に包まれる。カノアたちは自身の中からあふれ出る力を感じると嬉しさと驚きを感じる。
そんな二人が自身の力に喜んでいるうちに、神官の二人はカノアたちから預かった『清書』を取り出し、水晶の魔力を文字へと変えて行き、清書が”ステータスカード”となった瞬間、急いで目を通す。
そんな神官二人の奇行とも呼べる行いを見たカノアとカリオスは、揃って頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
一方、カノア達にそんな目を向けられている二人の神官は揃ってため息を吐き出し、乾いた笑い声をあげる。
「はは…。本当にすごいことになりそうだと思っていましたが、本当になるとは…。自分夢でも見ているんですかね…?」
「これは紛れもない現実よ…。今日だけで王国は凄まじい戦力を手に入れたわね…。…二人とも待たせてしまってごめんなさいね?これが”ステータスカード”と呼ばれる、貴方達の属性やジョブが記されているものよ。大切に扱ったね」
女性の神官は苦笑いをしながらカノアとカリオスにステータスカードを渡す。ステータスカードを受け取った二人は自身のカードを見て、カリオスはガハガハと普段より嬉しそうに笑い、カノアは驚きの表情を浮かべた後、神官たちの会話を思い出し、アルカやリナ達も自身と同じようなことになったのだろうと推測する。
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カリオス・ボルドネス
属性:風
第一ジョブ:重戦士
第二ジョブ:グラップラー
固有スキル:獅子爆轟
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カノア・ミラージ
属性:火
第一ジョブ:拳士
第二ジョブ:ハンター
固有スキル:纏繞悪鬼
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「ねえカリオス、あたしのジョブに上位ジョブがあるんだけどアンタはどうなってる?」
「ハハハッ!奇遇だなカノアよ!俺様にも上位ジョブがあるぞ!」
「ははは…。ねえ神官様?アタシ達上位ジョブを授かったんだけど、何かしないといけないこととかあるの?」
「俺様達もレイア達がいる奥の部屋に行くべきなのか?」
カノアとカリオスは自身のジョブに上位ジョブ(カリオスは重戦士、カノアはハンター)があることを確認すると、神官たちに声をかける。男性神官を慰めていた女性神官は二人の方を向いた後、未だ話が行われている奥の部屋へと視線を移す。
「そうね。奥の部屋に行って欲しいわね。」
「良いんですか?ハソン様に確認も取らずにそんなこと言って?」
「ええ問題ないわ。カノアさん達なら話を聞く資格もあるし、ジョブも才能も高そうだからパーティに加わるかもしれないですしね」
「成程、勇者パーティーってことですか」
男性神官と女性神官の会話の中に『勇者』という単語が聞こえ、カノアとカリオスは顔を見合わせ、カノアは「面倒なことになりそうだ」とため息を吐き出し、カリオスはより一層愉快そうに笑う。
そんな二人を奥の部屋へと案内した神官の二人は水晶の整備を行った後、儀式の間の扉に手をかける。
「最後の一人がまともでありますように…!!」
「本当に贅沢なお願いね…」
この後、男性神官の願いは届かなかったことは容易に想像できるであろう。
▽▽▽
『──祝福の喝采』
静まり返った儀式の間の中で女性の美しい声が響き渡ると、女性の前で礼拝の姿勢をとっている黒髪の少年の体を光が包み込む。
(なんだか俺だけ色々飛ばされた気がするのはなぜだ…?…気のせいか?)
そんなことを思いながらも黒髪の少年、ソーレンは自身の体にあふれる力を確認し、こぶしを握り締める。
ソーレンは何故か礼拝の姿勢を辞めずに片膝をついたままでいる。そんなソーレンを訝しげむ神官の二人だが、力を手に入れた余韻に浸っているのだろうと思い、清書をステータスカードにする為の作業を行っている。
(これで魔法も詠唱しなくて済むのか、ジョブ診断様々だぜ!それにしても、神官様の胸でけーッ!礼拝の姿勢とってるとちょうどいいアングルなんだよな)
力の余韻ではなく、思春期の思考にどっぷり浸っているソーレンは神官たちのステータスカードを作る工程が終盤に入ると名残惜しそうにしながら、そっと礼拝の姿勢をやめ、立ち上がる。
「ソーレン君は今のところ特に目立った所はありませんね。属性の”水”を表す反応も一般的なものと同じでしたし」
「…確かに、今のところはそうね」
「どうしたんですか?そんな考え込むような顔をして?」
「いえ、水晶が水属性を表した時、何か違和感を感じたのよ…。貴方は感じなかった?」
「自分は特に何も感じなかったですよ?っとステータスカードができましたよ」
水晶に残っていた魔力が全てステータスカードの文字へと変わると、神官の二人はソーレンのステータスカードを確認する。
そして、ステータスカードを見た神官二人は驚きの表情を浮かべ、男性神官は目が釘付けになったように、自身の手の中にある紙を見つめ、女性神官は勢い良くソーレンの方を見る。その驚き様はレイア達の時よりも大きいように見える。
「ソーレン君、貴方は一体!?…いや、貴方様は一体何者なんですか!?」
「ただの”勇者パーティー候補”の村人ですよ…。今のところはですがね?」
女性神官の目線の先にはソーレンはおらず、ソーレン声が自身の”後ろ”から聞こえると振り返ろうとするが、
『玉響零氷』
儀式の間に再び静寂が訪れる。女性の神官は振り返ろうとする姿勢のまま固まっており、儀式の間だけでなく外からも生活音などの音が聞こえなくなり、アルヒ村そのものが止まった。
だが、そんな異様な空間の中で唯一人、ソーレンは動き出す。
「くそ、範囲間違えちまった…。殆ど魔力が残ってねえじゃねえか…。」
ソーレンは頭を軽く抑えつつ、そんなことを言いながら男性の神官に歩み取り、自身のステータスカードを手に取る。
「まだ知られる訳にはいかないんだよな~」
ソーレンは自身のステータスカードの一瞥した後、文字の部分に指を沿えると、魔力を込める。すると、紙上の文字が動き出し、先ほどとは”別の文字”を模っていく。
自身のステータスカードを見たソーレンは満足げに頷いた後、神官二人の頭に触れる。
「これ使ったら魔力枯渇になりそうだけど…ギリギリ行けるか?」
そんなことを呟くソーレンの手元は膨大な魔力が集まり、爛々と輝いていた。
「貴方方には申し訳ないけど、このことは忘れてもらいますね。これも”神の意志”ってやつですから文句は神様にお願いしますね。『消失』」
ソーレンの手元に集まっていた魔力が光り、神官たちを包み込む。光が収まるとソーレンは瞑っていた瞼を上げ、軽く息をついた後、男性神官の手にステータスカードを戻す。
「これで”アレ”に気づかれずに済むかな?それにしても、ハソン様の階級にびっくりだよ…この国の王には未来予知の能力があるって聞いたけど、そのせいなのかな」
ソーレンは独り言を呟きながら、神官たちと水晶を挟む位置、元の場所に戻る。そして、おもむろに指を鳴らす。
ソーレンが指を鳴らす音が儀式の間に響き渡るのと同時に、外からは村人の生活音が聞こえ、女性神官は勢いよく振り返る。男性神官はステータスカードから顔を上げ、首を傾げる女性神官の方を見る。
「ソーレン君もどうやら上位ジョブのようですね…。本当にこの村の子達は素晴らしい限りです…。どうかしましたか?」
「…ええ、少し頭に靄がかかっているというか、何だか違和感を感じるの…気のせいかしら?」
「少し疲れているのではないですか?自分たちの仕事はこれで終わりですし、少し休みましょう。ソーレン君これがステータスカードです。貴方の属性やジョブが書いてあるので、失くさないようにしてください」
「ありがとうございます」
ソーレンは男性神官から手渡された己のステータスカードを見るふりをして、男性神官に話しかけられている女性神官を見る。
(あのおっぱい神官さん、なかなか鋭いな…バレるかと思ってひやひやしたぜ。っと、ステータスカードは上手く弄れていて良かったぜ。
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ソーレン・シンシア
属性:水
第一ジョブ:魔法剣士
第二ジョブ:治癒術師
固有スキル:幸運者
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「ソーレン君少しいいかしら」
女性神官はステータスカードを見るソーレンに話しかけ、カノア達と同じように奥の部屋へ行くように言う。ソーレンは了承し、案内された部屋の前まで行き、扉を開く。扉を開いた先にいたのは、悩まし気な顔をするカノアと、それを見守るレイア達であった。
▽▽▽
「魔王討伐ですか?」
「ハソン様が枢機卿!?それに魔王討伐!?しかも国のトップ二人からの依頼!?」
レイアとリナが、神官たちに連れられて入った部屋に座って待っていたハソンは開口一番に「自身はこの国の宗教組織のトップである枢機卿であり、君たちに魔王討伐を依頼したい。このことは既に国王陛下に伝わっており、国王陛下からの依頼でもある。」と告げた。
レイアは”魔王討伐”という言葉に反応し、リナはいきなりのことに頭がパンクしそうになっている。
「どうですか、受けて貰えますか?」
「…一つ質問してもよろしいですか?ボクとリナは確かに伝説のジョブを授かりましたが、名ばかりで強くはありません。ボクたちを頼るよりも、この国にいるSランク冒険者や三武剣の方たちに依頼すればよろしいのではないですか?」
「Sランク冒険者や三武剣の者は既に魔族との戦いに身を投げ打っています。その延長線上で魔王を討伐できるかもしれませんが、可能性は低いでしょう。それに五年前に一時終結となった人魔戦争により、Sランク冒険者は許容しがたい被害を受け、三武剣の一人、剣聖も死にました。我らは何時、再び始まるかもしれない戦争のために優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいのです。それに安心して下さい、今すぐ戦場に連れ出すことなどしません。一先ずは王都に行き、最強の最高の指導者の下で修業を積んでもらいます。」
ハソンの言葉を聞いたリナは王国の戦力が低下していることに自身の両手を見つめながら考え込む。
レイアは自身の心の奥底から聞こえてくる言葉に意識を向ける。自身の奥底から「戦えっ!」「弱き者を救えっ!」「人々の希望となれっ!」と、叫びが聞こえる、それはレイアが持つ人並み以上の正義感のせいか、勇者というジョブがそう叫んでいるのか、将又別の何かなのか…。
理由がどうあれど、レイアの目には決意の炎が揺らいでいた。レイアの目を見たハソンは薄く笑い、心の中で感謝を送る。
「ボクは魔王討伐の依頼を受けようと思います」
「レイアさん!?」
殆ど即答と言えるように依頼を受けたレイアにリナは驚き、レイアの顔をまじまじと見るが、その瞳に決意の炎が宿っていることに気が付き、苦笑いをする。そして自身の拳を握り、ハソンを見る。
「…仕方ありません。レイアさんが行くなら私も行きましょう」
「いいのかいリナ?君は無理をしなくても良いんだよ?」
「大丈夫ですよレイアさん。何故か先ほどから体の奥底から『人々を守れ!』という声が聞こえてくるんです…。私にはそれが大切な声に聞こえてきて、この依頼を断ることができそうにないんです。それに、王都に行けば彼の有名な”魔法王”様にもお会いできるかもしれませんしね」
「…ありがとうリナ」
「レイアさんが感謝することではありませんよ。それに魔王を倒せば兄さんに褒められるかもしれませんしね」
リナの言葉にレイアが笑い、場の雰囲気が軽くなる。可憐な笑顔を見せるレイアとリナは、凡そ魔王討伐を決意した少女たちには思えない。そんな二人を見つめるハソンは、可憐な少女たちを戦場に向かわせることに辛さを感じるが、人類のために、世界の為にと思い、決して外面には出さず、二人に微笑みかける。
「有難うございます。レイアさん、リナさん。いえ、勇者様と賢者様。それでは、このことは国王陛下様に伝えます。」
ハソンが懐から魔道具を取り出そうとすると、扉が大きな音を立て開かれる。
「その話、俺様達も混ぜて貰ってもいいか?」
扉が開いた先にいたのは、獰猛な笑顔をしたカリオスと、ジッとリナを見つめるカノアだった。
『玉響零氷』
儀式の間には、ソーレンの息遣いだけが聞こえる。ソーレンは振り返ろうとする女性神官の一部分に手を伸ばす。
「ふふふ…この村に来た時から気になっていたこの果実を鷲掴みにできるチャンスを無駄にはせん!ソーレン行きます!」
「待てゴラァ」
ソーレンがたわわな果実に手を伸ばそうとすると、後ろからドスの効いた声がかけられ、ソーレンが振り向くとそこには鬼…カノアがいた。
「待ってカノアちゃん!?何で動けて!?」
「後書きだからだよ!死ね!」
「アァーーーーー!!!!」




