十二話 赤と金のジョブ診断
本日二話投稿です!
レイア達が儀式の間の前で待っていると扉が開き、中から二人の神官が出てきた。
「それでは次の方はお入りください。お二人同時にできるようになりましたので、お二人、中にお入りください」
「二人同時となると、私とレイアさんですね」
「そうなるね、じゃあ行こうかリナ」
レイアとリナはカリオス達に見送られながら神官たちの後に続き、儀式の間へと入っていく。
儀式の間に入ると、中央の台座に二つの水晶が置いてあり、台座の向こう側にはハソンが立っていた。
レイア達を案内した神官の二人はハソンの両脇に立ち、レイアは緊張した足取りで台座へと向かい歩き出す。隣を見ると緊張して強張った表情をしたリナがおり、少しだけレイアの緊張が緩む。
台座に辿り着くと、ハソンは懐から本を取り出しつつ二人に声をかける。
「それではお二人とも、両手を水晶に置いて、少しずつ水晶に魔力を注いでください。」
レイアとリナはハソンの指示に従い、両手を水晶に置いて魔力を注いでいく。すると、レイアが魔力を注いでいた水晶は全ての闇を払うかのような光を出し始め、レイアは眩しそうに目を細める。
ハソンの両隣にいる神官は、レイアの凄まじい”光属性”の適正に驚くが、隣にいるリナの水晶を見てさらに驚くこととなる。
何と、リナの水晶は神官たちが文献でしか読んだことがない現象が起こっていたのだ。水晶の中に全てを焼き尽くす炎が出たと思えば、その炎を飲み込む水流が現れ、その水流を吹き飛ばす風が現れ、風が闇に覆われ姿を消したかと思えば、闇を払う光が現れ、果てには何もなかったかのような無の空間が広がる。
そう、リナの水晶には火、水、風、闇、光、無の全属性への適性を表していたのだ。因みに、本来無属性を表す現象が起きた場合、魔法に適性がないと判断されるのだが、リナの場合は全ての者に適性がある無属性でも他の者よりも優れた適性があることを示している。
リナは水晶が壊れたのかと慌て、レイアは徐々に強くなっていく光のせいで目が開けられなくなっていた。
そんな二人を見つめるハソンの口元は僅かに弧を描いていた。
「これはこれは…レイアさんは光属性への適性が素晴らしいですね。それにリナさんは全属性の適性があるとは…いやはや、今回のジョブ診断はなかなかに面白いですね」
「そんなこと言ってる場合ですかハソン様!?全属性の適性者ですよ!?」
「これはジョブの方も期待できそうですね…。あっお二人とも、もう魔力を止めてもいいですよ」
ハソンの緊張感のない言葉に男性の神官が食いつく。全属性の適性者は確認されているだけでも数人、それもこの国のトップレベルの人物たちしかいないため、男性の神官は興奮と驚愕で少々冷静さを失っているようだ。それに対し、女性の神官は冷静に受け止め、二人に魔力の解除の許可を出す。
リナは何処か呆然とした表情で自分の手のひらを見つめ、レイアはリナのことを褒めたたえている。
「私が全属性の適性者…!?」
「すごいじゃないかリナ!それに比べてボクは光属性か~。ボクも複数属性が良かったな~」
「ははっレイアさんの光属性への適性は他を卓越していますよ?私はあれ程の光を見たことがありません」
他の神官たちもハソンの言葉に同意するように頷く。それを見たレイアは照れるように顔を緩ませる。隣にいるリナは「全属性…?全属性…!全属性…!?」っと先ほどから緩み切った顔で呪文のように呟いている。
「それではお二人とも、奇跡の方へと参りましょうか。では、水晶に魔力を注ぎ続けながら礼拝の姿勢をとってください。水晶の中の魔力と自分が魔力を通して繋がっていることを意識してください」
現実に戻って来たリナとレイアはハソンの指示通りに行動する。片膝をつき、目を瞑って天に祈るように手を組む。リナにいたっては余程嬉しかったのか、まだ口元が僅かに緩んでいた。
ハソンは本のページをめくり、アルカの時と同じようによく通る声で読みだす。
「第九章第三節。我らが神は、その太陽の如き大いなる力の一部を我ら”人類”に与えてくださった。その力は我らが生き抜くために、家族、恋人、友を守るために与えられたものである。決して驕り、自惚れ、神聖なる力を悪事に使ってはならない。この力は善行の為に使うものであり悪行の為に使うものでは非ず。力に溺れてはならない。この大いなる力は忠誠の証、汚してはならない。神が与えてくださったこの力は平等に受け取ることができる。何故なら、我らは神に愛された種族なのだから。」
ハソンは本を懐にしまい、ゆっくりと両手をレイア達に向ける。
「レイア・ユスティシー、リナ・ミラージ。汝等は力に溺れることなく、その大きな力を正しく使い、正しき道を歩むことを誓うか」
「「太陽神ラース様の名において誓います」」
「…宜しい。では受け取りなさい。」
ハソンの両手に魔力が集まり、水晶も呼応するように輝きだす。アルカの時との違いと言えば、集まる魔力の膨大さであろう。ハソンは自身の両手に水晶からあふれる魔力を感じ取るとゆっくり瞼を閉じる。
(これ程暖かな魔力を感じるのは何時ぶりでしょうか…。嗚呼、我らが神よ、この子たちを御守り下さい…)
ハソンの両手に集まる魔力の輝きが直視できない程になると同時に、ハソンは詠唱する。
『大いなる我らが神よ、弱小なる御身等にこの世界を生き抜く力をお与えください──【奇跡:祝福の喝采】』
眩しい程の光がレイア達を包み込む。レイアとリナは体の奥底から感じる力に驚き、祈りの体勢を辞め、自身の体を見る。すると未だに体に光が纏わり付いており、ハソンの両脇にいる神官達が驚きに表情を浮かべていた。
「すごい…力がどんどん溢れていく…!」
「今ならどんな魔法でも扱えそうです…!!」
レイアとリナは自身の力に喜ぶ。レイアは愛する人を守る力を手に入れたため、リナは憧れていた魔法をさらに使えるようになったために。
ハソンはそんな二人を微笑ましげに見つめながら、女性の神官からレイアとリナが預けていた『清書』を受け取る。
清書を受け取ったハソンは水晶に清書をかざす。するとアルカの時と同じように、水晶に残っていた魔力が文字を模っていく。
リナとレイアは少し落ち着いたのか、声を上げるのをやめ、ハソンの動作を目で追う。
水晶の魔力が無くなるとともに清書は”ステータスカード”となり、ハソンは他の神官たちとともにステータスカードを確認する。
すると、男性神官と女性神官は驚きの表情をし、叫ぶ。
「けけけっ賢者!?」
「ゆっ、勇者!?」
二人の大声を気にせず、ポカンとした表情をするレイアとリナにハソンはステータスカードを渡す。
神官二人は驚いた表情のまま時間が止まったかのように止まっている。
「お二人とも、これがステータスカードです。あなた達の名前や属性、ジョブに固有スキルが記されいる大切なものです。再発行は可能ですが失くさないように気を付けて下さい。それと、あなた達のジョブは少々問題があるので見終わった後、奥の部屋に来てください。」
ハソンはそう言い放ち、他の神官に後のことは任せ奥の部屋へと入っていく。リナとレイアは訝しげな表情をしながらも渡された自身のステータスカードを見る。
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レイア・ユスティシー
属性:光≪聖≫
第一ジョブ:勇者
第二ジョブ:聖騎士
固有スキル:勇者補正
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リナ・ミラージ
属性:火・水・風・光・闇・無
第一ジョブ:賢者
第二ジョブ:
固有スキル:追究者
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「……………え?」
「………ワァオ、夢かな?ボクのジョブが勇者に見えるんだけど…」
「…それなら私のジョブの欄にも可笑しなことが書いてありますよ…。賢者ですって…」
「夢かな?」
「夢ですよ…」
リナとカノアは自身のステータスカードを確認した後、乾いた笑い声をあげながらお互いの頬を引っ張り合う。
「いひゃいでひゅレイアひゃん」
「ボクもいひゃいよ」
「夢じゃなさそうですね…」
「そうだね…」
二人はそういうと息をすべて吐き出した後、大きく息を吸い込み叫ぶ。
「「えええええええええええーーーーーー!!!????」」
その大声で我に返った神官二人は、騒ぐ二人に声をかける。
「あっあの、レイアさん?リナさん?」
「どうしようどうしようどうしよう!?勇者って如何すればいいの!?確かに常日頃からアルカの勇者になりたいと思ってたけど実際どうすればいいか分からないよ!?」
「賢者ですって賢者!?この世に一人しかいない伝説のジョブですよ!?私が二人目!?これ如何すればいいんですか!?兄さんは何処ですか!?」
大慌てする二人を何とか神官たちは宥めようとするが効果はない。それもそのはずだ。いきなり「貴方は勇者に選ばれました!オメデトウ!」と言われて「分かりました!有難うございます!」なんて言える者はいないだろう。必ず混乱するはずだ。
しかし、神官たちも諦めずに二人を宥め続ける。幾分かしてようやく落ち着いた二人は、神官たちの言われるがままに奥の部屋へと入っていった。
レイア達を奥の部屋に押し込めた、もとい案内した神官の二人は重労働が終わったのかのように汗を拭うふりをする。
「まさかこの目で勇者誕生の瞬間を見れるとは思いませんでしたよ…」
「私もですよ。それに賢者誕生の瞬間まで見れるとは思ってもいなかったですよ…」
神官達は互いに苦笑いしながら奥の部屋の扉を見つめる。
男性の神官は扉に顔を向けたまま女性の神官に話しかける。
「…やはりハソン様はお二人に魔王討伐へ行くよう、お願いするのでしょうかね?」
「十中八九するでしょうね。ただでさえ五年前に終わった魔族との戦争のせいで戦力が落ちている今です、どのような手を使ってでも、戦力確保はするでしょうね。魔族討伐にすぐに行かせないとしても彼女たちの生活は大きく変わるでしょうね。…私たちがこのような話をしていても意味はありません。次の二人のジョブ診断を行いましょう」
「…そうですね」
二人の神官は奥の部屋の扉から視線を外し、次の診断者を呼ぶために儀式の間を出ていった。
「本当に良いんですね?」
「はい。ボクは魔王討伐に行きます」
「…私もついて行きます。」
儀式の間の奥の部屋で、驚くほどスムーズに事が運んでいるとも知らずに…
「ボクが勇者!?どうしようどうしよう!?」
「兄さんは何処ですか!?落ち着くためには兄さんを要求します!!」
「二人とも落ち着いて!」
「これが勇者様と賢者様…」
~奥の部屋にて~
ハソン「…中々来ませんね」(´・ω・`)




