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千と一物語  作者: Co27
第一章 ジョブを貰おう!
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九話 運命の前日

流石に25日まで更新しないのはどうかと思い、何とか出来ました!

 そろそろ昼になるといったあたりの時間に、アルヒ村の畑沿いの道をこの国では珍しい、黒髪黒目を持った少年が鼻歌を歌いながら歩いていた。


「~♪明日から俺の英雄人生ライフが始まると思うと、楽しみだぜ~♪」


 俺の名前は、ソーレン・シンシア。アルカの親友であり、今年、ジョブ診断を受ける六人のうちの一人だ。

 頭脳明細であり、容姿端麗、運動神経抜群のアルヒ村を代表する完璧人間!おまけに性格もよく、正義感あふれる頼りになる男!言っておくがナルシストではない。大事なことだから二回言うが、ナルシストでは断じてない。そんな俺は今日も村のために働こうと、こうして村長の家へと向かって歩いているのだ。


「今日は、明日の準備のために村長の家に村中の女の人が集まっている。ここで、手伝いに行く俺っ!絶対に好感度がうなぎ上りになっちまうぜ!しかも、明日のジョブ診断でいいジョブになったらどうしようか!?お姉さんたちに言い寄られる未来しか浮かばないぜーっ!」


 ソーレンはグヘへと聞こえてきそうな笑い声をあげながら歩いて行く。こんな朝早くから救いようのないアホなことを考えていて、何処が頭脳明細の頼りになる男なのだろうか…。しかも、彼の下心満載の行動は村では有名なことなので、彼の好感度が上がること決してない。南無三。


「おっあれ、アルカとカリオスじゃん。何してんだ?」


 道を歩いていると、遠目に二人の親友の姿が見える。青髪の親友は決めポーズをしており、白髪の親友はそれを尊敬の眼差しで見ながら、称えるように拍手をしている。本当に何をしているのか…。


「あいつらまた馬鹿なことしてんな…近づかないようにしよう…──ってん?」


 ソーレンが二人に見つからないように過ぎ去ろう思い、素早く走り抜けようとした時。

 二人はバカなことをやめ、近くにあったベンチに座った。そして、カリオスは今までに見たことが無い程の真剣な表情になってアルカに何かを話し始めた。


「…あんな真剣に何話してんだ?スクープの臭いがするし、ちょっと探りますかねっ!」


 ソーレンは体制を低くし、アルカ達に見つからないようにしながら走り、ベンチから少し離れた場所にある木に隠れると、”魔法”を使う。


『彼の者らの声を届けよ【盗聞イーズドロップ】』


盗聞イーズドロップ】とは、無属性の身体強化魔法に属し、五感の一つである「聴覚」を鋭くする下位の魔法である。誰でも扱うことができる無属性ということもあり、魔法を使えるものなら少し訓練すれば使えるようになる、下位の魔法である。因みに、上位の「聴覚」を鋭くする強化魔法であれば、目的の音だけを選別して聞くことができる。

 ソーレンがこの魔法を使うと、周囲の音がよりクリアになり、風の音、動物の鳴き声、そしてカリオスとカノアの声が聞こえてくる。


「やっぱ魔法は良いな、覚えておいてよかったぜ。トンスさんに感謝しておかないとなっ」


 ソーレンの家は村で唯一の農家兼医者であるため、ソーレンの両親は医療魔法に精通しており、他の村人よりも多くの魔力を保持している。その為、ソーレンも遺伝的なもので同年代のものよりも魔力が多い。

 ソーレンはそのことに気が付いてから、村で唯一の現役冒険者である、Cランク冒険者トンス・ラテスに簡単な魔法をいくつか教えてもらっていたのだ。


「っと、聞こえてきた聞こえてきた。さてさて、何話してるんだ?」


 ソーレンは物音を立てないようにしながら木に隠れ、二人の会話を集中して聞いていく。



 ▽▽▽



「僕はっ!このアルヒ村を、自分の居場所をっ!親友が帰ってくる場所を守ってみせるよ!」


「ハハッこれは大きく出たなぁ!ならしっかりそれを貫けよアルカ!『一念通天』、お前ならきっとできるさ!」


 少し離れた場所から、アルカとカリオスの声が聞こえてくる中、ソーレンはひどく後悔と動揺をしていた。


(簡単な気持ちで聞くんじゃなかったぁぁあッッッ!!どういう事だ!?カリオスは村から出ていくつもりだし、アルカの問題は解決するし!?てか、なんだこの唐突な青春イベントは!?俺も参加させろよ!親友だろ!?まあ、アルカの問題は解決してくれてよかったな…。偶にはカリオスも役に立つもんだ。アルカが暗いせいで、レイアはうざいくらいアルカに構うし、リナちゃんとカノアちゃんもアルカにベッタリだったし。…よく考えたら昔からだった気もするが…まあいいか。)


 親友のモテ具合に少しげんなりするソーレンだったが気を取り直して、歩き出そうとしているアルカに声をかける。


「あっ買い物に行かなくちゃ!」


「おーい、アルカ!」


「んっ?ソーレンじゃないか!おはよう!」


「おはよう。アルカはこれから買い物に行くのか?(さっきの話については、触れないでおくか。)」


「うん!ソーレンも一緒に行かないかい?」


「うーん、そうだなっ!俺も村長の家に行こうと思ってたし一緒に行くか!」


「やった!じゃあ行こう!」


 ソーレンはアルカの誘いに乗り、アルカは嬉しそうに歩き出す。


「ちょっと待った、アルカ。こっち来い」


「ん?どうしたの?」


 アルカはそう問いながら、ソーレンに近づく。ソーレンはアルカの目元に手をかざし、魔法を使う。


「そんな泣き腫らした目だと俺が泣かしたように勘違いされるだろ?『彼の者を癒したまえ【治癒キュア】』っとこれで大丈夫だな。」


 ソーレンが下位の回復魔法である【治癒キュア】を使うと、赤く腫れていたアルカの目元が元通りになる。アルカは笑顔でソーレンに感謝する。


「ありがとうソーレン!魔法はやっぱりすごいね!」


「どういたしまして。まあ、俺の親は一応医者だからな、回復魔法を使えるのは当たり前みたいなもんなんだ。」


 ソーレンが自嘲しながら言うと、アルカは首をブンブンと横に振りながらソーレンを称える。


「けどやっぱりすごいよ!僕は魔法を使えないし、余計に憧れるよ!」


「ふふんっそうか?アルカも明日のジョブ診断が終わったら使えるようになるんだし、あと少しの我慢だな!簡単な魔法でいいなら俺が教えてやるよ!」


「ありがとうソーレン!でもいいのかい?ソーレンはジョブ診断の後、村を出ていこうとは思わないのかい…?」


 アルカは少し寂しそうな顔でソーレンに聞く。彼にとって、このことが今一番確認したいことであった。


「(やっぱり、さっきのこと引きずってんだな…。話さなくて正解だったかもな。)ああ、ジョブ診断が終われば俺村を出ていこうと思っている。王都で冒険者になるつもりなんだ。けど、ジョブ診断が終わってすぐに王都に行くつもりはない、それに非戦闘ジョブになれば親父たちの後を継いで、この村の医者になろうと思う。合法的にお姉さんたちを見(診)ることができるしな!」


「そっか、それじゃあ安心して魔法を教われるよ!もしも、村で医者になってもあんまり女の人達を困らせたらだめだよ!」


「ああ、出来るだけな?…まあ、非戦闘ジョブにはならないと思うがな。」


「ん?最後何か言ったかい?」


「いいや、何でもねえよ」


 ソーレンの呟きが聞き取れなかったアルカは彼に問うが、何でもないと言われ少し訝しげむが、元々人を疑えない性分なのですぐに納得する。

 話が途切れ、少しの間、二人は無言で歩き続けると、村の入り口で人だかりができているのを見つける。


「何かあったのかな?」


「どれどれ?あれ、教会の馬車じゃねぇか!?ってことは、神官様たちが到着したのか!見に行くぞアルカ!女性神官は美人揃いだって本に書いてあってんだ!やっと見れるぜ!」


「目当てはそれでいいのかいソーレン!?」


 村の入り口には、翼のマークがあしらわれた馬車が停まっており、その周りには村人たちが集まっていた。

 ソーレンは「ウヒョー!」と言いながら、人込みを分け、神官たちが見える位置まで移動する。アルカは必死にソーレンに追いつこうと走る。

 アルカがソーレンの傍に着いた時にはすでに、ソーレンは神官たちが見える位置を確保していた。


「はぁはぁ。は、速いよソーレン…」


「すまんすまん。それより見ろよあの神官様!すっげぇ美人!」


「本当に好きだねソーレンは…」


 アルカはため息を吐きつつもソーレンが言う、美人の神官を見ようと、神官たちに目を向ける。神官たちは三人おり、一人はソーレンが言っている若い美人の女性で、もう二人は男性であり、一人は若く、もう一人は穏やかな雰囲気の老年の男性であり、一番地位が高いのか、村長と話をしている。


(この人たちが神官様…。教会に仕え、神の代わりに恩恵を授ける『代行者』か…)


 アルカはいつか読んだ本に書いてあったことを思い出しながら、神官たちの方を見つめる。すると、村長と話をしていた温厚そうな老人の神官と目が合う。

 その瞬間、アルカの体にとてつもない嫌悪感、拒否感などの負の感情が沸き上がる。


(なんだ今の!?何をされた!?”無理やり目を合わさせられた”???)


 アルカがひどく混乱していると、老人の神官は村長と話をしながらもジッとアルカのことを見ている。


「おいっアルカ!今、あの美人さんに微笑まれたぞ俺!って、どうしたんだアルカ?大丈夫か?」


 ソーレンがアルカの方を見ると、アルカは胸のあたりを抑えながら真っ青な顔をして震えていた。


「ソ、ソーレンっあ、あの人は駄目なんだ…なんだか怖いっ!」


「何言ってんだアルカ?確かに奇麗な花には棘があるって言うけどよ、心配しなくても、あの人を口説こうとする勇気は俺にはないから何も起きないぜ?」


「ちっ違う!女の人じゃないっ!あ、あのおじい──」


「こんにちは。君たちが今年、神の奇跡を受ける者たちだね?」


 気が付くとアルカの前に、村長と話をしていた老人の神官がいた。老人とは思えないほどの体つきに、温厚そうな雰囲気とは真逆の冷徹な金色の目を持っており、アルカとソーレンを射抜くように見ていた。

 アルカは、先ほどから感じている得体のしれない恐怖感で固まっており、ソーレンは咄嗟のことで反応ができなかった。


「おや、違ったかな村長?」


「いえ、おっしゃる通りです神官様。アルカ、ソーレン、緊張するのは分かるが挨拶は返しなさい。この方は今回ジョブ診断を行ってくださる、ハソン様だ。」


 村長に諭された二人は、ハソンの方を向き、自己紹介をする。


「この度、ジョブ診断を受けさせて頂く、ソーレン・シンシアです。よろしくお願いします。」


「お、同じくジョブ診断を受けさせて頂く、アルカ・ネフスです。よろしくお願いします…。」


「これはこれは、ご丁寧に有難う御座います。明日はリッラクスして受けれるよう今日は早めに寝るのですよ?では村長、今年奇跡を施される子達も全員ではないですが見れましたし、私たちは準備の方へ入らさせてもらいます。」


「分かりました。トンスっ!トンスはいるか!」


「何でしょうか、村長?」


「神官様たちを儀式の間にご案内してくれ。ワシも後で向かう。」


「分かりました。こちらです神官様方。」


 神官たちは全員、冒険者のトンスに連れられて、村の中央辺りに位置される儀式の間(外見的には、小さな教会)へと向かって歩いて行く。


「ああ~本当に美人だったなぁ」


「そ、そうだね」


 ソーレンは惚けながら、神官のことを名残惜しそうに見つめ、アルカは何処かほっとした表情をしていると、村長が話しかけてくる。


「アルカ、ソーレン。明日はジョブ診断じゃが、あまり気を張らずに楽にして臨むのじゃぞ。」


「ああ、分かってるぜ村長」


「分かりました、村長」


「ああ、それとすまんがアルカは後でワシの家に来て欲しいのじゃ。レイアがアルカが来ないと料理は手伝わないと言っておるのじゃ」


「分かりました、買い物が終わり次第行きますね。(レイアは料理が苦手だからなぁ…料理をしたくないから村長に無理なお願いをするなんて…)」


「あ、俺は今からでも行きますよ?寧ろ、今すぐ行きます!」


「お前は来んでええわ!士気が下がる!」


「何でですかっ!?」


 村長に申し出を、即座に却下されたソーレンはそれでもお構いなしに、胸の前で拳を握り決意する。


「何と言われようとも!俺は行きます!ではっ!じゃあなアルカ!」


「コラッ!待つのじゃあああ!!!」


 ソーレンは村長の家に向かって走って行き、それを老体を感じさせない走りで村長が追いかける。


「あはは…流石は元冒険者なだけあって村長は早いなぁ…。早く買い物に行こう。」


 アルカは村長がソーレンの背中にドロップキックを決めたのを見届けた後、八百屋へと向かい歩き出す。遠くから親友の叫び声が聞こえてくるが気にせずメモを見ながら歩いて行く。


「えーと、八百屋で人参とトマト、花屋でお墓に添える花の購入か…何だかあんまり買う物無いな…」


 久しぶりに買い物に行く兄を思ってのリナからの思いやりで、少なくなっているのだがアルカには物足りなかったらしい。


(さて、パパッと買い物を終わらして、村長さんの家に行きますか!)


 アルカは道中色々あったことを思い出しながら、歩いて行く。この後村人たちに行く先々で声をかけられたり、八百屋のベルジや花屋のラフルに心配をかけるなと怒られたりするが、しっかりお使いの任務は達成することができ、村長の家に行けたそうだ。

 その後の村長の家でもレイアが暴走したり、リナが嫉妬したり、カノアが苦労したり、ソーレンがボコボコにされたりと、いろいろあったが、それはまた別のお話。


 こうして、『ジョブ診断』の前日は過ぎていった。


レイア「まさかの『千と一物語せんといちものがたり』初の、魔法シーンが”盗み聞き”だなんて…しかも、術者はソーレンだし…」

ソーレン「俺だったら駄目なのかよ!?」

レイア「当たり前でしょ」キッパリ

ソーレン「…え?」

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