第85話 白紙の未来
「因縁? サラスティアとかならともかく、ここの長の私が知らないのに、そんな事あるの?」
「話すと長いし、私もまだ詳しくは知らないから話せないけど、因縁はずっと昔からあった。そして……そう考えると自ずとアーニスを殺した犯人も見えてくる」
最初私はあの事件はサラスティアで反乱を起こしたあの騎士が犯人だと思っていた。向こうの狙いは元は私にあったのだろうけど、あの場所にサラスティアの王女が居たのだから、とても都合が良かったのかもしれない。
あくまで可能性ではあるけれど、アーニスを殺した犯人はもしかしたらユドリシアにいる可能性がある。
「もしかしてユニは犯人の目星が付いてるの?」
「特定はできてない。でももしかしたら、あの事件は単純に見えてかなり複雑な可能性がある」
それはあくまで可能性ではあるけど。
「って、こんな話をするために女子会を開いたんじゃないわよ。もっと私達らしい話をしないと」
「私達らしい話ってなんですか?」
「ほ、ほら、ユニだけじゃなくて他の皆もユウをどう思っているかとか」
「私達が」
「ユウを?」
ラーヤが話題を変えるために出してきたのは、私への助け舟を出したのか、それともたまたまなのかやはりユウへの話題になった。
その話題について特に反応したのが、フリスとサシャル。私は当然として、昨日私だけに話してくれた奏は特に大きな反応はしていない。
「な、何で私がユウのことを話さなきゃ」
「だって特にサシャルはずっと好きだったんでしょ?」
「ば、馬鹿。何を言っているのよ! 私がそんなわけ」
顔を真っ赤にして反論するサシャル。周りから私もこんな風に見えているのかと考えると、少しだけ恥ずかしくなる。
(つまりサシャルも私も同類……)
「何かそれは、嫌」
「何よユニ! 自分に話題が向かなくなった途端に、調子に乗って」
「別にそうじゃない。ただ、サシャルと同類は嫌かなって」
「それが調子に乗ってるの! 私だって貴方と同類と思われるのは嫌に決まっているでしょ」
でもそれが私の本音なんだけど、それを言ったらサシャルも怒るから黙っていよう。
「あ、でも認めるんだ。サシャルもユウのことが好きだって。私と同類なのが嫌なんでしょ?」
「え、あ、ち、違う、そうじゃなくて。私は」
「へえ、サシャルもそうなんですか。ライバルが増えましたね、ユニ」
「そこでどうして私が出てくるの?」
「ユニも認めたじゃないですか」
「み、認めてない」
結局ユウの話になると必ず私に飛び火してしまった。そもそも女子会というものは、こう一方的に話を聞かれるものではないはず。あと話題がこれだけというのもどうかと思う。
かと言って、他に話すことがあるのかと言われれば、私からは何も浮かばない。
「ねえユニ、女子会ってこんなものだったっけ?」
「絶対に違うと思う」
結局二度目の女子会は、何のために開いたのか分からないまま終わりを告げることになった。
■□■□■□
そんな女子会を経て改めて自分の中の想いに向き合った私は、ようやく恋について理解し始めていた。だけど、
「お主のその気持ちが無駄とは言わぬ。じゃが、その未来に必ず彼女がいるとは限らぬ。だから、我はまだ彼奴に協力するつもりはない」
アジールの言葉を聞いて、私のこの気持ちを叶えてよいのか疑問が生まれてしまう。
ユウは人間、私は一冊の本
「確かに私達とユウは違うかもしれない。それでも、この想いは叶えてはいけないものなの?」
「お主は何故そこまでユウを想う。彼奴は既に死人じゃぞ」
「ユウは……私の命の恩人だから」
「命の恩人? 預言書であるお主の?」
「ずっと忘れていたことがあった。私は……今のユウ、龍之介に助けてもらったことがあった」
「それじゃあお主は、その時から彼を好きだと言うのか?」
「分からない。その時は本当に自分の気持ちなんて考えたことなかったから」
「ずっと好きだから、今も想っておると。なら、その想いは早くに捨てた方が良い」
「だからどうして」
「今お主がしている事の未来が、既に預言されておるからじゃ」
「……え? でも私がこうなったのはつい最近で、そんなすぐに預言される事なんて」
「信じられぬなら見るがよい。我がここまで警告している理由を」
そう言ってアジールが渡してきたのは、彼女自身である三冊目の預言書。私はそれを開いて内容を目を通す。
「これって」
「三冊目である我が一番遠くの未来を示しておる。それが故に、そこに何も書かれなくなったと言うことは」
「この世界に未来がない」
「そういうことじゃ。預言が更新されてもされずとも、その未来は既に決められておる。つまり、今お主達がしようとしておる事は、文字通り未来を白紙にする事じゃ」
「そんな事って……」
今まで三冊目の預言書まで目を通すことがなかった。それ故にこの先の未来がどう変化しているかも理解していなかった。
だからまさか、今この世界がこんな事になっているなんて考えてもいなかった。
(これが私達が歩もうとしている未来……)
白紙の未来は、私に大きな衝撃を与え、翌日の救出作戦はに大きな影響を与える事になるのだった。




