第79話 脱出と捕縛
ユニが感じ取った気配は、俺もすぐに感じた。ただその数は、かなりいると思われる。
「この国には今は私達ととアジール以外はいないはず。ならこの気配は」
「急ごう、ユウ」
俺とユニは足を早めて、城の奥へと進む。するとやがて、その気配の正体がはっきりしてきた。
「離せ、離さぬか!」
「これは王女様の命令だ。貴様には大人しく付いてきてもらう」
「命令など、我が聞くとでも」
「聞かないなら無理矢理でも」
「「待った!」」
俺達がたどり着いたのは、アジールの部屋と思わしき場所。そこでは腕を掴まれながらも抵抗するアジールと、無理矢理でも連れて行こうとする見覚えのない鎧をまとった女性と同じ鎧を纏った兵士達が、彼女を囲っていた。
俺とユニは、あえて大きな声を出して、こちらに注意を引かせる。
「何者だ貴様らは!」
「お主達は……何故この場所に」
「どういうつもりか知らないけど、アジールは連れて行かせない!」
俺は上手く兵士の間をくぐり抜けて、輪の中心へと到着する。
「何者かぎ侵入したとは聞いていたが、貴様らか。こんな場所に何用だ」
「何用も何も、今言った通り私達はアジールに会いにきた。ただそれだけ」
遅れてユニが隣にやって来る。それを見た兵士は、何かに気づいたらしく、ニヤリと笑った。
「なるほど、同じ預言書同士集まったというわけか。なら、探す手間も省けた、貴様も連れて行く」
「勘違いしないでほしい。私は既に預言書としての役目は終えてる」
「そんなのは関係ない。我々は預言書を集めるのが目的なのだから」
「させない!」
ユニに手を伸ばした兵士の手を私が振り払う。
「何故邪魔をする。お前は預言書とは関係ないだろ」
「関係ある。私はユニの仲間だから」
「仲間? なら尚の事分かるだろ。預言書がこの世界にもたらしているものを」
「知っているよ。知っているからこそ」
俺は一瞬だけアジールへの注意が逸れた隙に、ユニと彼女の腕を掴んで、走り出す。
「私は二人とも連れて行く」
「お主何故」
「詳しくは後で話す。今はここから脱出しよう」
上手いこと部屋から脱出し、城の廊下に出る。すると丁度そこで、フリス達とも合流する。
「ユウ、兵士達が私達を」
「分かっている。だから早く逃げよう!」
フリスと奏、そしてユニとアジールと共に城からへの脱出を試みる。
「入口はこの廊下を抜けた先じゃが、恐らく兵士が待ち構えておる。裏口を使うぞ」
「裏口?」
「こっちじゃ」
一番詳しくアジールの案内で俺達は入口とは別の裏口へ向けて移動する。しかしかなりの数を連れてきているのか、追っ手もいるうえに進む先々で、兵士に発見される。
それでも何とか俺達はアジールの言う裏口へと到着するが、
「そう簡単に逃げられるとでも思ったか」
出口についたところで兵士に追いつかれる。
「くっ、つくづく面倒くさい奴らじゃのう」
「王女様の命令は絶対。ここで貴様らを逃すわけには行かない」
「なら、私達にも私達の考えがあるから、貴方達にユニ達は渡せない」
「こちらの事情も聞かずに何を勝手な事を」
「無理矢理連れて行こうとする事に事情も何もない!」
「よし開いた! 皆ここから出るぞ」
アジールが扉を開け放ち、城の外へと出る。ユニ達も順番に脱出し、残されたのは俺だけになる。
「意地でも逃げるつもりなら、こちらも強行手段に」
「それはさせない!」
俺は彼女を城の外に出さない為に、裏口を閉じ、扉の前に立ちふさがる。
「何のつもりだ」
「ここで私も外に出たら、この後も追われることになる。なら私がここで貴方達を引き止める」
「引き止める……だと」
「そもそも貴方達は何者? どうしてこんな無理矢理な形で預言書を集めるの?」
「それは全て我が国のため、そして王女様の為だ。その為なら手段を選ばない」
「国の為って、預言者を使って何をするつもりなの?」
「そんなに知りたいか? なら連れて行ってやろう」
「え?」
俺が塞いでいた裏口が、反対側から開け放たれ背後を取られる。それに気づくとほぼ同時に、口に布のようなものが当てられる。
「しまっ」
まさに漫画みたいな方法で、俺は抵抗する間も無く一瞬のうちに眠らされてしまう。
「預言書は逃してしまったが、貴様だけでも来るがよい。我らの国、ユドリシアへ」
最後の最後にわずかに耳に届いた国の名前。俺はそれに驚くことすら許されず、ゆっくりと意識を闇の中へと落として行くのであった。
■□■□■□
「待って、ユウが来ていない!」
アジールの助けもあって何とか城から脱出した私達は、逃げる事に必死でユウの姿がない事に気がついた。
「ユウ、まさかまだ城の中に」
「兵が追ってこないと思ったら、あやつが足止めをしておったのか」
「なら急いで戻らないと」
「ならぬ。今戻ったら逃げて来た意味がない」
「でも龍ちゃんが!」
「龍ちゃん?」
「あ、えっと」
特にそれに慌てたのは奏だった。アジールの言葉に対して、冷静になれず、とにかく戻ろうとしている。
「奏、今はユウを信じよう」
「ゆ、ユニちゃん?! でも、もしもの事があったら」
「その時は私達が助ける、絶対に」
「う、うん」
奏を何とか説得しながらも、私達は再びその足でスービニアへと戻って行くのであった。
(ユウ、大丈夫……だよね)




