第78話 歩みたかった未来、今ここに
フリス、いや、美冬の言葉は最もだった。彼女からしてみれば、俺達には生きていてほしかったのだろう。だけど、
「苦しんでいたならどうして相談してくれなかった。どうしてもっと頼ってくれなかったの」
「それは……」
「辛かったなら一言でも言ってくれればよかった。そうすれば私達だって支えてあげられた、それなのに」
「……あの頃色々と噂が立っていたでしょ? だから私は二人には迷惑をかけたくなくて、それで我慢するしかなかったのよ。
でもそれが自分を苦しめて、ついには耐えられなくなった。だから私は、二人を守る為に」
「私達を……守る?」
当時俺達三人は、幼馴染という関係もあってか、色々周りから言われていたのは鮮明に覚えている。特に色恋沙汰の方の噂は、本当に耳にタコができるくらい多かった。
けどそれに拍車をかけてしまっまのが、美冬自身の事情だ。これは俺達も知らなかったのだが、美冬の両親がとある事情を抱えており、それによって彼女は酷い仕打ちを受けたという。直接の原因がそれなのかは定かではないが、今の言葉もそこから来ていたと思う。
「苦しむのは私だけでよかった。二人には何も知らないで、生きていてもらえればよかった。私がいなければ二人は……」
崩れ落ちるフリス。俺はそれをしっかりと受け止めててあげる。、こちらも小さな体なので、少しぐらつくがそこはしっかりと抱きとめてあげた。
「だからって死ぬ事なんてなかったよ。私も奏もそれを望んでいなかったんだから」
「なら何を望んで」
「三人でずっと一緒、それが私達の約束でしょ? 美冬」
「え?」
何の前触れもなく突然会話に割り込んでくる声。その優しさは先程の狂気とはまるで違う、とても優しくていたと聞いていた声。
(やっぱり付いて来ていたか)
予想して足を止めたのは正解だったかもしれない。
「かなちゃん、どうして?」
「折角三人が揃ったからね。姿は変わってしまったけど、ちゃんと話をしよう」
「話す事なんてないよ……。私は今全部話したから」
「なら一緒に行こうか」
「え?」
「龍ちゃん、ううん、ユウちゃんはこれから会うんでしょ? アジールちゃんに」
「え、あ、うん。今度こそ協力を得ようと思っているから」
「なら私も一緒に行く。いいでしょ?」
「どうして突然」
「言ったでしょ? 三人でずっと一緒だって」
「い、言ったけど」
それを今からするのか? いや、それが一番いい選択なのかもしれないが、俺は少しだけ彼女に対して不信感を抱いている。
それはユニも同じだったようで、
「ユウを殺しておいて、よく付いてくる気になれるね」
「それに関しては、何度謝っても許されることじゃない事は分かっているわよ。でももう事情は変わった」
「事情?」
「それはアジールちゃんに会ってから話す。ほら、だから行こう?」
と言って勝手に俺を引っ張りながら歩き出す奏。何とも怪しい行動にしか思えないが、奏が決して悪い人ではないのは俺も美冬も理解しているので、ここは大人しく付いて行くことに。
「ユウ、大丈夫?」
「心配な気持ちは私も分かるけど、奏も悪い人じゃないし、それに」
「それに?」
「ずっと三人で一緒にいようって約束したのは本当だから」
■□■□■□
色々あって俺達は四人でノアへと再びやって来た。今回も真っ直ぐに城へと向かったのだが、中へ入ると前回みたいな出迎えはなかった。
「誰もいない」
「アジールちゃんはどこへ行ったのでしょうか」
「あれ、いつもの口調に戻った」
「あ、気づいていましたか? 私があえてそうしていた事に」
「あえてなのかは分からないけど、それが奏らしくていいよ」
「二人とも呑気に話してないで、アジールを探すよ」
出迎えがなければ探すまでなので、俺達はここで一度二手に分かれて探す事に。で、一緒になったのは……。
「本当にあの二人とは知り合いなんだ」
「知り合いというか、幼馴染だよ」
奏でも美冬でもなくユニだった。本当はどちらかと話したかったのだけど、二人は二人で話したいだろうしここは我慢しよう。
「まさかこんな事になるなんて思ってなかった。ユドリシアに向かってたらこうはならなかったのかな」
「多分。でも預言されてなかったからこそ、奇跡は起きたと思う」
「奇跡、か」
俺がこうして生き返ったのも、奏と美冬と再会したのも全てが奇跡だったのなら、それはある意味では納得できる。でも逆に言えば、奏に殺されなければ、フリスが美冬だとは気づかなかったかもしれない。
(やっぱり可能性は沢山あるんだな、人生って)
それが決めつけられている預言書は、やはりこの世界には必要ないのかもしれない。この世界に本当に必要なのは、今起きたような無限の可能性を作れる世界だ。
「無限の可能性……確かに必要。でもそれだけではこの世界は作れない」
「他に何かあるの?」
「例えば……」
となにか言いかけたユニは、突然足を止める。何かを気づいた彼女に対して、俺も何かを感じ取った。
「私達の他に誰かいる。しかも複数」




